228 / 267
森の獣 1章 稲生編
打ち合わせの途中で
しおりを挟む
「ううっ頭が痛い、痛すぎる」
毎度のことながら、お酒のせいで
翌朝が辛い、稲生であった。
頭が痛いなか、稲生は、リンが起こしに
来るのをベッドで待つべきかどうか迷っていた。
しばらくまよっていると、
ドアをノックする音が聞こえた。
稲生は、高鳴る鼓動を抑えつつ、
「どうぞ」と伝えた。
ドアが開くと、そこには、
何故かドリアムがいた。
稲生は、何とか平静を保ちつつ、
ドリアムに問いかけた。
「おはようございます、ドリアムさん。
何か用事でしょうか?」
ドリアムは、申し訳なさそうに
「リン様の代わりに本日の予定を伝えにきました。
本日、4刻半の時より、獣討伐についての
会議をはじめるとのことです。
ちなみにリン様は、よくわかりかねますが、
お顔を真っ赤にして、伝えてきてくれとのことでした」
にやにやしながら、事務内容を
伝えるドリアムであった。
稲生は、なんとなく残念な気持ちで、
「了解しました」とドリアムに伝えた。
ドリアムは、にこやかに一礼すると、
部屋を去っていった。
会議では、獣をおびき出すために
稲生を囮にすることを中心として、
細部を詰めていった。
稲生は、獣を討伐されないと、
故郷への帰還の方法も探せないと判断し、
大筋で協力することとした。
もちろん、できる限りの安全を
確保することを求めてであるが。
一刻ほど過ぎたころ、守備兵が報告に現れた。
「町に20名ほどの武装集団が来訪しています。
隣国バルザース帝国の者とのことです。
代表者のような者が、責任者に面会を
希望しています。いかがいたしますか?」
「ふん、大方、遠路遥々、やって来た獣討伐の
報酬目当ての傭兵集団だろう。まあいい、通せ」
とエイヤが指示を出した。
しばらくすると、3名ほどが入室して来た。
「代表者が3名とは、
まとまりのない集団だな」
開口一番、エイヤが冷笑する。
「名を名乗る前に皮肉ですか。
キリア王朝は随分と礼節亡き、
野蛮なお国なのですね」
白っぽいローブを来た女性が皮肉で返す。
何度か、口撃の応酬が続いたが、
とりあえず休戦し、お互いに名を交わす。
稲生は、事の成り行きにまかせつつ、
彼らの様子を観察する。
主に話していた女性はどうやら神官のようだ。
リン以上のプロポーションを持つ彼女を
どうしてもチラ見してしまう。
ワイルドは、遠慮なくガン見して、
眼福、眼福と言っている。
もう一人は、長身猫背で酷くやせており、
眼光が窪み、頬がこけていた。
あまりお近づきになりたくない雰囲気であった。
最後の一人は、常に憎しみの表情だ。
よくあんな顔をしていられるなと感心する稲生であった。
神官をチラ見していると、リンと目があった。
鬼の形相でこちらを睨み付けている。
隣国の面会者がいるのに、よくあんな顔を
していられるなと感心する稲生であった。
主にエイヤと神官が話し合いを
しているが、要約すると、獣の討伐を
先にどちらがするかと言うことらしい。
彼らは、本国の外交ルートから
討伐の許可状をキリア王朝から
得ているようだった。
最終的にエイヤは許可状に重きをおいて、
10日ほど彼らに討伐の時間を与えた。
それまでに討伐できねば、その後は、エイヤ・ワイルド
両雄の下で改めて、討伐に向かうことにした。
「ありがとうございます、シン将軍。
ところで、先ほどから、こちらを
チラチラと見ている男性が一名ほど
いらっしゃいますが、彼が今代の召喚者でしょうか?」
とくすくすと笑いながら、尋ねてきた。
エイヤは、頭をかかえ、ワイルドは
がははっと豪快に笑い、リンは憤怒の形相で、
ドリアムは、うつむいて笑いを堪えて、
各々、様々な表情をした。
突然、話を振られた当の稲生は、
なんと答えるべきかわからず、
生唾を飲み込み、自己紹介をした。
稲生といいます。以後、お見知りおきを。
周囲からは、召喚者の立ち位置にいる
説明を受けました」
それなりに綺麗な女性であるが、
容姿より稲生は、どうしても
目線が胸に向かってしまう。
「ふふっ、正直な方ですね。
後ほど、お食事を取りながら、お話でも?」
と神官職にあるその女性から
お誘いがあった。
「駄目です。彼には、そのような
余裕はありません。明日も明後日もです。
あなた方もわかっているでしょう」
余裕ない表情で何故かリンが代弁する。
「ふふっ、仕方ありませんね。
町で偶然、お会いできることを
楽しみにしています」
余裕を持って答える神官。
その後、いくつかの確認をして、
彼らは宿に戻っていった。
稲生は、リンの言葉を聞いて、
今日からそんなに忙しくなるのかと
暗澹たる気分になった。
毎度のことながら、お酒のせいで
翌朝が辛い、稲生であった。
頭が痛いなか、稲生は、リンが起こしに
来るのをベッドで待つべきかどうか迷っていた。
しばらくまよっていると、
ドアをノックする音が聞こえた。
稲生は、高鳴る鼓動を抑えつつ、
「どうぞ」と伝えた。
ドアが開くと、そこには、
何故かドリアムがいた。
稲生は、何とか平静を保ちつつ、
ドリアムに問いかけた。
「おはようございます、ドリアムさん。
何か用事でしょうか?」
ドリアムは、申し訳なさそうに
「リン様の代わりに本日の予定を伝えにきました。
本日、4刻半の時より、獣討伐についての
会議をはじめるとのことです。
ちなみにリン様は、よくわかりかねますが、
お顔を真っ赤にして、伝えてきてくれとのことでした」
にやにやしながら、事務内容を
伝えるドリアムであった。
稲生は、なんとなく残念な気持ちで、
「了解しました」とドリアムに伝えた。
ドリアムは、にこやかに一礼すると、
部屋を去っていった。
会議では、獣をおびき出すために
稲生を囮にすることを中心として、
細部を詰めていった。
稲生は、獣を討伐されないと、
故郷への帰還の方法も探せないと判断し、
大筋で協力することとした。
もちろん、できる限りの安全を
確保することを求めてであるが。
一刻ほど過ぎたころ、守備兵が報告に現れた。
「町に20名ほどの武装集団が来訪しています。
隣国バルザース帝国の者とのことです。
代表者のような者が、責任者に面会を
希望しています。いかがいたしますか?」
「ふん、大方、遠路遥々、やって来た獣討伐の
報酬目当ての傭兵集団だろう。まあいい、通せ」
とエイヤが指示を出した。
しばらくすると、3名ほどが入室して来た。
「代表者が3名とは、
まとまりのない集団だな」
開口一番、エイヤが冷笑する。
「名を名乗る前に皮肉ですか。
キリア王朝は随分と礼節亡き、
野蛮なお国なのですね」
白っぽいローブを来た女性が皮肉で返す。
何度か、口撃の応酬が続いたが、
とりあえず休戦し、お互いに名を交わす。
稲生は、事の成り行きにまかせつつ、
彼らの様子を観察する。
主に話していた女性はどうやら神官のようだ。
リン以上のプロポーションを持つ彼女を
どうしてもチラ見してしまう。
ワイルドは、遠慮なくガン見して、
眼福、眼福と言っている。
もう一人は、長身猫背で酷くやせており、
眼光が窪み、頬がこけていた。
あまりお近づきになりたくない雰囲気であった。
最後の一人は、常に憎しみの表情だ。
よくあんな顔をしていられるなと感心する稲生であった。
神官をチラ見していると、リンと目があった。
鬼の形相でこちらを睨み付けている。
隣国の面会者がいるのに、よくあんな顔を
していられるなと感心する稲生であった。
主にエイヤと神官が話し合いを
しているが、要約すると、獣の討伐を
先にどちらがするかと言うことらしい。
彼らは、本国の外交ルートから
討伐の許可状をキリア王朝から
得ているようだった。
最終的にエイヤは許可状に重きをおいて、
10日ほど彼らに討伐の時間を与えた。
それまでに討伐できねば、その後は、エイヤ・ワイルド
両雄の下で改めて、討伐に向かうことにした。
「ありがとうございます、シン将軍。
ところで、先ほどから、こちらを
チラチラと見ている男性が一名ほど
いらっしゃいますが、彼が今代の召喚者でしょうか?」
とくすくすと笑いながら、尋ねてきた。
エイヤは、頭をかかえ、ワイルドは
がははっと豪快に笑い、リンは憤怒の形相で、
ドリアムは、うつむいて笑いを堪えて、
各々、様々な表情をした。
突然、話を振られた当の稲生は、
なんと答えるべきかわからず、
生唾を飲み込み、自己紹介をした。
稲生といいます。以後、お見知りおきを。
周囲からは、召喚者の立ち位置にいる
説明を受けました」
それなりに綺麗な女性であるが、
容姿より稲生は、どうしても
目線が胸に向かってしまう。
「ふふっ、正直な方ですね。
後ほど、お食事を取りながら、お話でも?」
と神官職にあるその女性から
お誘いがあった。
「駄目です。彼には、そのような
余裕はありません。明日も明後日もです。
あなた方もわかっているでしょう」
余裕ない表情で何故かリンが代弁する。
「ふふっ、仕方ありませんね。
町で偶然、お会いできることを
楽しみにしています」
余裕を持って答える神官。
その後、いくつかの確認をして、
彼らは宿に戻っていった。
稲生は、リンの言葉を聞いて、
今日からそんなに忙しくなるのかと
暗澹たる気分になった。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。


異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる