上 下
222 / 251
森の獣 1章 稲生編

会議が長い1

しおりを挟む
「おおっ、あれが将軍かー」
稲生は、始めて見る将軍の威圧官と鎧や武具の重厚感に感動する。

リンと将軍が挨拶を交わすと、直ぐにリンが会議室へ案内し、
その後に続く。慌ただしく、守備隊や事務員が動き、対応している。

会議室に入室すると、将軍や将軍に
同行している兵士がそこで、各々、鎧を脱ぎ始めた。
稲生は、一人で脱着できる鎧に驚いた。
昨日のノルドの説明によると重厚な鎧は
一人で脱着できないとのことであった。
一人の大柄な将軍が視線に気づいたのか、声をかけてきた。
「貴殿は、漢に興味があるのか?それともこの鎧かな?」

「はじめまして、稲生と言います。
はい、その手の鎧が一人で脱着が
出来ていることに驚いています」
稲生は、正直な感想を述べた。

その将軍は、大きな声で笑いながら、説明をしてくれた。
「ガハハハッ、その名は、お前が召喚者か!
妙なところに興味を持つな。漢よりはましだな。
俺は、ゲルト・ワイルドだ。まあ、将軍をやっている。
この鎧は特別だ。軽装用の鎧だからな。
まだ、作り始められたばかりだ。
提案者が死んじまって、今は、開発が止まっているがな」

もう一人の優男風の高官そうな人物が声をかけてきた。
「おい、ワイルドそのくらいにして、着席しろ。
会議を始めるぞ」

室内にいる全員が着席すると、その高官は、
まず稲生の方を向き、自己紹介をした。
「会議を始める。私は、シン・エイヤ。
現在、将軍職にある。さて、ヤンデルフォン卿、
獣の状況より、現状の輜重の状況について説明を伺おうか?
兵が餓えて、暴徒化されても困るからな」

「えっ、輜重ですか。ええっと、こちらの守備隊責任者の
ドリアムが鋭意準備中です。ドリアム、説明せよ」
話を振られたリンは、この質問に関して
あまり準備していなかったのか、どもりながら回答した。
「はっ、現在、食料は集めていますが、
十分ではございません。
この地域の中心都市のハルバーンに協力を
求める使者を送っているところでございます。
こちらへの軍の移動は少々、お待ちを」
ドリアムは、予想された質問であったため、
準備していた回答をした。

「ふん、まあ、仕方ないか。時間があまりなかったからな。
簡易の兵舎なども無理だろうな。
では、こちらの兵員の構成の詳細を
説明して貰おうか、ヤンデルフォン卿?」
またしてもリンは、あたふたしつつ、
ドリアムにふった。幾度がやり取りを交わし、
エイヤ将軍は、リンを冷たい目で睨み付け、
「ヤンデルフォン卿、貴公は、いったい先行で
こちらに戻ったにも関わらず、
こちらで何をしていたのか?」

リンは、好機と見て取ったのか、
練っていた策を披露する。
稲生は、最悪のタイミングでの
最悪のチョイスにある意味、リンに瞠目した。

先ほどとは、打って変わって、
自信に満ちたりているリンは流れるように
いかにこの策が優れており、いかに苦労して
生み出したかを説明をする。
エイヤは説明の途中で遮った。

「ヤンデルフォン卿、何か勘違いしていないか?
それは、貴公の仕事ではない。
そのようなことに時間を費やすとは、無駄にも等しい。
そもそも貴公は、ザルツ将軍と獣の戦闘で
何のサポートもしておらぬだろうが。
ザルツ将軍の遺体からは、何の魔術痕が出なかったぞ。
王都では、皇帝の眼前にて黙っていたが、説明して貰うぞ。
ザルツの死の際に一体何をしていた!
ザルツの一撃で深手を受けた獣をなぜ、逃がした!
老公の弟子であったとはいえ、事の次第では許さぬ」
最後は、激発しており、その怒りを一身に受けて、
リンは顔面蒼白で、いまにも卓に
うつ伏せになりそうに震えていた。

稲生は、あーこれは、会議の名を借りた上司の
つるし上げだと思い、昔を思い出し、嫌な思いに囚われた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました

mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。 ーーーーーーーーーーーーー エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。 そんなところにある老人が助け舟を出す。 そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。 努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。 エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

【破天荒注意】陰キャの俺、異世界の女神の力を借り俺を裏切った幼なじみと寝取った陽キャ男子に復讐する

花町ぴろん
ファンタジー
陰キャの俺にはアヤネという大切な幼なじみがいた。 俺たち二人は高校入学と同時に恋人同士となった。 だがしかし、そんな幸福な時間は長くは続かなかった。 アヤネはあっさりと俺を捨て、イケメンの陽キャ男子に寝取られてしまったのだ。 絶望に打ちひしがれる俺。夢も希望も無い毎日。 そんな俺に一筋の光明が差し込む。 夢の中で出会った女神エリステア。俺は女神の加護を受け辛く険しい修行に耐え抜き、他人を自由自在に操る力を手に入れる。 今こそ復讐のときだ!俺は俺を裏切った幼なじみと俺の心を踏みにじった陽キャイケメン野郎を絶対に許さない!! ★寝取られ→ざまぁのカタルシスをお楽しみください。 ※この小説は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

キャンピングカーで異世界の旅

モルモット
ファンタジー
主人公と天女の二人がキャンピングカーで異世界を旅する物語。 紹介文 夢のキャンピングカーを手に入れた主人公でしたが 目が覚めると異世界に飛ばされていました。戻れるのでしょうか?そんなとき主人公の前に自分を天女だと名乗る使者が現れるのです。 彼女は内気な性格ですが実は神様から命を受けた刺客だったのです。

処理中です...