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森の獣 1章 稲生編
歓楽街は楽しい
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「おおっこの猥雑な雰囲気!夜の街だねー」
規模は、前世界でご厄介になっていた歓楽街とは
比較しようもないほど、少ないが、
稲生は、そこに確かな歓楽街の雰囲気を感じていた。
ぱっと見る限り4店舗ほどあるが、
女性がお酒を注いでいるような感じでなく、
どこもお酒や食事の提供だけのようだった。
とりあえず、暗黙のルールとかないことを祈りつつ、
久々のお酒にありつこうと、適当に入店した。
店内を見渡す稲生。空いている卓があったため、そこへ座ってみる。
若い店員さんが、近づいて来る。稲生は、焦った。
メニューが解らないし、そもそもメニューリストが
どこにも置いてない。
「ご注文は?」と店員。
「うむ、お酒とお勧めで」と稲生。
「ここははじめてですか?」と店員。
「すみません、始めてなので、
何がオーダーできるか教えて頂けませんか?」と稲生。
呆れ顔の店員が一瞬の間をおいて、
「では、当店の一押しのはちみつ酒と
適当なつまみを準備します」と言った。
稲生は、はちみつという言葉に驚き、
はちみつについて、店員に聞いてみた。
「はちみつとは、どのようなもので?
どのように採取すんでしょうか?」
「えっあの、詳しくは知りませんが、
昔の召喚者様が好んでいたそうで、
大量に採取できる方法を残したらしいです。
甘くて、おいしいですよね」
と説明し、厨房に向かった。
はちみつ酒が置かれ、それを一口、飲むと稲生は、
前世界への哀愁がこみあげてきた。
そして、静かに涙をこぼした。
過去の召喚者が残してくれた足跡が、
ここ数日の騒ぎで忘れかけていた望郷の念を
思い出させてくれた。
2杯ほど、飲み、店を後にした。
酒を飲む前は、エロエロを求めて、
探検する気満々であったが、酔いのせいか、
最早、そんな気にもならずに宿舎に帰った。
宿舎の待機室の前を通ると、
夜間警備の担当者たちと稲生は目があった。
「これはこれは、召喚者様、夜な夜な歓楽街へ
出向くとは、我々とはちがいますなぁ」
「流石は、獣と対峙して、生き残れる方は
違いますなぁ。
ヤンデルフォン卿にベッドの上で、
取り入っているだけはありますなぁ」
警備の者たちが、嘲笑した。
ココニオレノイバショハナイ。
そんな思いが心を支配し、酔いのせいか
感情の抑制ができず、無言で警備の者たちを威圧し、
近づいて行った。
彼らは、稲生の無言の圧力の気圧され、
静まり返っている。
「おまえらに言っておく、次はない、潰す。
俺は、獣の餌にはならない。絶対に元の世界に戻る」
それだけ言うと、稲生は、自室に戻った。
そして、そのまま、ベッドに倒れて、朝まで熟睡した。
同時刻、執務室にて。
「うむ、我ながら上出来な策だ。
これで、失態回復、面目躍如なりだ。
ドリアムもそう思うだろう」
ほくほく顔のリン。
「いえ、それより、輜重の準備のほうが当たり前ですが、
大幅に遅れています。計画の立案や人員の編成も
あってないような状況ですぞ。そのほうが問題になるかと」
ドリアムは、現状の最大の問題をリンに投げかけた。
「いやいや、そもそも日数的に無理なことだし、
努力したから大丈夫でしょ。そもそもそんな人数で
来る将軍が準備すべきことだし。
ドリアム、私はそろそろ、就寝に付くので、あとはよろしく。
まあ、君も早く寝るようにしなさい」
満足そうに執務室を後にするリンであった。
ドリアムは、明日以降に確実に指摘されるであろう
輜重の責任問題をどう逃れるかで頭がいっぱいであった。
規模は、前世界でご厄介になっていた歓楽街とは
比較しようもないほど、少ないが、
稲生は、そこに確かな歓楽街の雰囲気を感じていた。
ぱっと見る限り4店舗ほどあるが、
女性がお酒を注いでいるような感じでなく、
どこもお酒や食事の提供だけのようだった。
とりあえず、暗黙のルールとかないことを祈りつつ、
久々のお酒にありつこうと、適当に入店した。
店内を見渡す稲生。空いている卓があったため、そこへ座ってみる。
若い店員さんが、近づいて来る。稲生は、焦った。
メニューが解らないし、そもそもメニューリストが
どこにも置いてない。
「ご注文は?」と店員。
「うむ、お酒とお勧めで」と稲生。
「ここははじめてですか?」と店員。
「すみません、始めてなので、
何がオーダーできるか教えて頂けませんか?」と稲生。
呆れ顔の店員が一瞬の間をおいて、
「では、当店の一押しのはちみつ酒と
適当なつまみを準備します」と言った。
稲生は、はちみつという言葉に驚き、
はちみつについて、店員に聞いてみた。
「はちみつとは、どのようなもので?
どのように採取すんでしょうか?」
「えっあの、詳しくは知りませんが、
昔の召喚者様が好んでいたそうで、
大量に採取できる方法を残したらしいです。
甘くて、おいしいですよね」
と説明し、厨房に向かった。
はちみつ酒が置かれ、それを一口、飲むと稲生は、
前世界への哀愁がこみあげてきた。
そして、静かに涙をこぼした。
過去の召喚者が残してくれた足跡が、
ここ数日の騒ぎで忘れかけていた望郷の念を
思い出させてくれた。
2杯ほど、飲み、店を後にした。
酒を飲む前は、エロエロを求めて、
探検する気満々であったが、酔いのせいか、
最早、そんな気にもならずに宿舎に帰った。
宿舎の待機室の前を通ると、
夜間警備の担当者たちと稲生は目があった。
「これはこれは、召喚者様、夜な夜な歓楽街へ
出向くとは、我々とはちがいますなぁ」
「流石は、獣と対峙して、生き残れる方は
違いますなぁ。
ヤンデルフォン卿にベッドの上で、
取り入っているだけはありますなぁ」
警備の者たちが、嘲笑した。
ココニオレノイバショハナイ。
そんな思いが心を支配し、酔いのせいか
感情の抑制ができず、無言で警備の者たちを威圧し、
近づいて行った。
彼らは、稲生の無言の圧力の気圧され、
静まり返っている。
「おまえらに言っておく、次はない、潰す。
俺は、獣の餌にはならない。絶対に元の世界に戻る」
それだけ言うと、稲生は、自室に戻った。
そして、そのまま、ベッドに倒れて、朝まで熟睡した。
同時刻、執務室にて。
「うむ、我ながら上出来な策だ。
これで、失態回復、面目躍如なりだ。
ドリアムもそう思うだろう」
ほくほく顔のリン。
「いえ、それより、輜重の準備のほうが当たり前ですが、
大幅に遅れています。計画の立案や人員の編成も
あってないような状況ですぞ。そのほうが問題になるかと」
ドリアムは、現状の最大の問題をリンに投げかけた。
「いやいや、そもそも日数的に無理なことだし、
努力したから大丈夫でしょ。そもそもそんな人数で
来る将軍が準備すべきことだし。
ドリアム、私はそろそろ、就寝に付くので、あとはよろしく。
まあ、君も早く寝るようにしなさい」
満足そうに執務室を後にするリンであった。
ドリアムは、明日以降に確実に指摘されるであろう
輜重の責任問題をどう逃れるかで頭がいっぱいであった。
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