起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた

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森の獣 1章 稲生編

防具は冒険の基本です

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「おはようございます、ドリアムさん。昨日は、ありがとうございました」
朝食後、宿舎でドリアムに会いに話しかける。
ドリアムは笑いながら、
「何のことでしょうか?今日からご自由にしてください。
リン様より、許可がおりています。何かを購入するのでしたら、
以前、あなたを見つけた中央広場に向かうといいでしょう」
と伝えてきた。

 稲生は、いくつかの店について、ドリアムに尋ね、宿舎を後にした。

 この革袋の中の金貨や銀貨は、偽物でなければ、
その重さ・量から相当な価値があることが、ここ数日で得た知識でわかった。
ただ、突然、何故、これほど貰えるのか、思い至らずに悩んでいた。

 稲生は、まず、目についた武具や防具を
取り揃えていそうな店に入ってみた。
いかがわしいお店でもないのに心臓の鼓動が
早くなっている稲生だった。

 獣の脅威は、防具ではふせげないだろう。
森林を進むときに身体を守る程度のもので十分だと判断し、
見栄えは悪いが、軽く柔軟性のありそうな革の鎧を手に取る。
「そいつは、本格仕様で値が張るぞ。
そこいらでの狩りなら、もっと安いので十分だ」
店員だろうか、奥の工房らしき所からぶっきらぼうに声をかけてきた。
「試しに着てみても?」
と奥に声をかけると、背の低いが、がたいのいい男は、
出てくるなり、「金貨5枚だ、払えるのか?」
と言った。

「ええ、5枚なら、大丈夫です。その価値があるならですが」
まだ、金銭感覚のない稲生は、それらしく答えた。

がたいのいい男は、「生意気な」と言い、試着を手伝った。
男は、試着中、最初の沈毅そうな雰囲気からは
考えられないほど、饒舌に鎧について説明をした。
稲生は、第一印象とのあまりの違いに驚きつつも
鎧について、色々と知ることができた。

 どうやら、この鎧は、魔獣と呼ばれるものたちの外皮を
何層にも張り合わせ、縫い合わせ、強度を持たせているようであった。
層を多くすると、柔軟性が失われるが、少ないと硬度が下がり、
その折り合いの見極めが職人の腕で、素材の選びとと
張り合わせの技術が職人の経験だそうだ。

「こいつは、見栄えを犠牲にして、使い勝手に特化したものだ。どうだ!」

 そもそも、稲生は、鎧を着たことがない。
そのため、違いなんぞわからないが、動きやすいので、これに決めた。
「金貨5枚、どうぞ」

「はっ、いやいやいや、値段の交渉しろよぉ。
特殊とは言え、魔術要素のない革の鎧を金貨5枚で売ったら、
店の評判が落ちるだろうが」
と言うが、物欲しそうに金貨を見ていた。

そこで、稲生は、一つの提案をした。
「金貨3枚で、森で狩りをするときに必要なものを
持ち運びできる袋に揃えて頂けませんか?
それと、こういったものを材料はなんでもいいので、
明日の昼くらいまでに作って貰えませんか?」

身振り手振りで説明し、なんとか理解してもらった。

「うーむ、数がなあ。まあ、明日、来いや。
俺は、ドワーフ族のノルドだ。おまえさんは?」
「稲生といいます。よろしくお願いします」

 稲生は、店を後にして、ノルドに教えてもらった薬屋に向かった。
「獣撃退作戦の要になるあれが、あればいいのだけど」
それに効果があるかどうか分からないが、
稲生は、少しでも生存率を上げることに努めていた。

 薬屋の前に着くと、先ほどの店とは違った意味で、ドキドキしていた。
「エルフだ。美人ぽいエルフがいる」
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