起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた

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森の獣 1章 稲生編

街の探索

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 「さてと、どうしようかな」
とぶらつく稲生であった。

 道に迷うことを避けるためにとりあえず、
宿舎の前の大通りらしき道で建物が連なっている方へ向かって歩いた。
 暫く歩くと、昨日、獣とザルツの戦った跡地に到着した。
昨日の戦いの血生臭さを思い出し、稲生は、吐き気に襲われた。
しばらく、収まるのを待つため、広場の隅に座り込む。
 昨日は恐怖への感情の高ぶりか、吐き気すら、感じる余裕がなかったのだろうか。
結局、吐かずに口の中が酸味で支配されるに留まり、
改めて周りを見渡すと、建物に文字と絵が描かれているのが目に入った。
建物の中には、食料らしきものや雑貨のようなものが陳列されていた。

 稲生は、独り言が多くなっていると感じるが、呟いていた。
「くっ文字と思わしきものが理解できない。
言葉のように召喚者特典のようなものはないな。
あの絵でなんとなくどんなお店か分かだけラッキーとするか。
お店らしきところに絵が描かれているということは、識字率は低いのかな」

「まあ、この町では、あまり文字が使える人が多いとは言えませんね」
突然、後ろから声をかけられて、稲生が振り向くと、
今はあまり会いたくない人物が立っていた。
「稲生さん、初日から、騒ぎを起こさないでくださいよ。
それに町で住民と話すのは禁止していたかと。
召喚者様とは言え、ルールは守ってもらいます」
ドリアムは語気を荒げて、そう言った。

「いえいえ、あれは私がからまれたほうですよ。
返り討ちは裁かれるんですか?
それに町に出るのは禁止されてなかったかと」
 冷静に返すと、ドリアムは、口臭のせいか
答えのせいかわからぬが、顔をしかめた。
「うっくっっくさっ。とっとにかくですね、
やりすぎはよくありません。
それに町に出れば、住民と話す機会あるでしょう。
今は、うろうろするは、やめてください。
私もそれなりに忙しい身なので、手間をかけさせないでください。
さっ、戻りましょう」

 教える情報に制限を掛けたいのか?と邪推をするも立場をこれ以上、
悪くする訳にもいかず、心のこもらぬ謝罪をして、宿舎に稲生は戻った。

「稲生さん、私個人としては、町をふらつくくらいは問題ないと思っています。
ただ、今は、やめてください。あなた、一部の事情を知っている人間たちから、
非常に評判が悪いです。今日の連中はまだ、ましな方です。
獣との最初の戦いの失態、次の戦いでは戦場にすら、
姿を現さず、ザルツ将軍を見殺し。下手すると、将軍の熱狂的な信奉者から、
命を狙われているかもしれませんよ」

 稲生は自分の知らぬところでの評判に驚いた。
自分の行動が勝手に解釈され、勝手に憎悪が広がっている。
出て行くにもどこに行けばいいのかもわからず、
どうしていいのかも分からず、頭が真っ白になっていた。

「まあ、宿舎にいるぶんには大丈夫かと思いますが。
くれぐれも行動にはきをつけてください」

 部屋に戻ると、どうしようもない気だるさに稲生は、
ベッドに横になった。
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