起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた

文字の大きさ
上 下
214 / 267
森の獣 1章 稲生編

街の探索

しおりを挟む
 「さてと、どうしようかな」
とぶらつく稲生であった。

 道に迷うことを避けるためにとりあえず、
宿舎の前の大通りらしき道で建物が連なっている方へ向かって歩いた。
 暫く歩くと、昨日、獣とザルツの戦った跡地に到着した。
昨日の戦いの血生臭さを思い出し、稲生は、吐き気に襲われた。
しばらく、収まるのを待つため、広場の隅に座り込む。
 昨日は恐怖への感情の高ぶりか、吐き気すら、感じる余裕がなかったのだろうか。
結局、吐かずに口の中が酸味で支配されるに留まり、
改めて周りを見渡すと、建物に文字と絵が描かれているのが目に入った。
建物の中には、食料らしきものや雑貨のようなものが陳列されていた。

 稲生は、独り言が多くなっていると感じるが、呟いていた。
「くっ文字と思わしきものが理解できない。
言葉のように召喚者特典のようなものはないな。
あの絵でなんとなくどんなお店か分かだけラッキーとするか。
お店らしきところに絵が描かれているということは、識字率は低いのかな」

「まあ、この町では、あまり文字が使える人が多いとは言えませんね」
突然、後ろから声をかけられて、稲生が振り向くと、
今はあまり会いたくない人物が立っていた。
「稲生さん、初日から、騒ぎを起こさないでくださいよ。
それに町で住民と話すのは禁止していたかと。
召喚者様とは言え、ルールは守ってもらいます」
ドリアムは語気を荒げて、そう言った。

「いえいえ、あれは私がからまれたほうですよ。
返り討ちは裁かれるんですか?
それに町に出るのは禁止されてなかったかと」
 冷静に返すと、ドリアムは、口臭のせいか
答えのせいかわからぬが、顔をしかめた。
「うっくっっくさっ。とっとにかくですね、
やりすぎはよくありません。
それに町に出れば、住民と話す機会あるでしょう。
今は、うろうろするは、やめてください。
私もそれなりに忙しい身なので、手間をかけさせないでください。
さっ、戻りましょう」

 教える情報に制限を掛けたいのか?と邪推をするも立場をこれ以上、
悪くする訳にもいかず、心のこもらぬ謝罪をして、宿舎に稲生は戻った。

「稲生さん、私個人としては、町をふらつくくらいは問題ないと思っています。
ただ、今は、やめてください。あなた、一部の事情を知っている人間たちから、
非常に評判が悪いです。今日の連中はまだ、ましな方です。
獣との最初の戦いの失態、次の戦いでは戦場にすら、
姿を現さず、ザルツ将軍を見殺し。下手すると、将軍の熱狂的な信奉者から、
命を狙われているかもしれませんよ」

 稲生は自分の知らぬところでの評判に驚いた。
自分の行動が勝手に解釈され、勝手に憎悪が広がっている。
出て行くにもどこに行けばいいのかもわからず、
どうしていいのかも分からず、頭が真っ白になっていた。

「まあ、宿舎にいるぶんには大丈夫かと思いますが。
くれぐれも行動にはきをつけてください」

 部屋に戻ると、どうしようもない気だるさに稲生は、
ベッドに横になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...