起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた

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森の獣 1章 稲生編

首が飛ぶ

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「グルルルルゥ」
獣は、標的がどこにいるのかわかっているのか、
悠然、歩いて街の中央に向かっている。

 ザルツは、中央広場の真ん中に陣取り、
その周りを兵で囲むようにして、奴を迎え撃つこととした。
 3m付近までお互いが近づいた瞬間、ザルツはその場へ残像を残して、
獣の左側面へ突然、現れた。
 最大最速の移動に身体が悲鳴をあげつつ、
剣一閃、獣の腹部あたりより大量の血が吹き上がった。
 周りを囲む兵士や魔術師は、在りえない状況に誰しもが動けなくなっていた。
ザルツの首がなかった。
 剣を持ったままの体は、ふらつくように二歩、三歩、動くと、その場へ倒れた。
ザルツと獣より吹き上がった血は、混ざりあり、広場に血だまりを作っていた。
 獣は、ザルツの体を踏みつけ、兵舎のほうを一瞥すると咆哮し、
ふらつきながら、森に向かい歩き出した。

 死ぬ、獣に攻撃したら、確実に死ぬ。この場を
支配するその思いに誰も動けなくなっていた。
 兵舎の一室より、この状況を眺めていた召喚者は、
自分に向けられた殺意に震えが止まらない。
 強そうな男が消えたと思った瞬間、頭が飛んでいた。
ザルツと獣の動きを何故か目で追えたが、そのことが更に恐怖を感じさせた。
獣は多分、避けきれないと判断し、半身をずらし、
前足で近づいてきたザルツの頭部を薙いだように見えた。
 頭部のないまま、長年の鍛錬により身体に刻まれた動作と
不思議な形をした剣のせいか、剣が一振りされ、獣に傷を与えた。

 召喚者は、気づかぬままに大量とあぶら汗と失禁をしていた。

 獣の姿が見えなくなり、魔獣や魔物がいなくなると、
紺のフードを着た女性が震える声で守備隊主任に言った。
「ザルツ様の遺体を棺にすぐに納めなさい。
それと、遺体が腐らぬように冷気をまとわせるように。
神象兵器は回収して、棺と一緒に置いておきなさい。
他は、被害の早期復旧に努めること」
 兵や魔術師たちは、極度の緊張から解かれたせいか、
ふらつきながらも作業を始めた。
「とんでもない事になったな。屑召喚貨者が生きて、
国の1柱たるザルツ様が死ぬとは」
兵舎の召喚者の部屋を見つつ、紺のフードを着た女性は、独り、そんな言葉を呟いた。

 召喚者は、ベッドの上で汗と失禁で濡れた衣類をなんとか脱ぎ、
素っ裸でどうしたものか途方に暮れていた。

「困った。服がない。トランクスのようなものがあれば、いいけど」
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