208 / 251
森の獣 1章 稲生編
昆虫食は、標準食か?
しおりを挟む
「ぐうぅぅーぶぅぅー」
お腹から盛大に音がなった。
しかし、目の前に置かれた木の皿に盛られた料理を口に運べない。
「んん?どうした?痛みで、手を動かすのが難しいのか?
まあ、今回は、私が食べさせてあげよう。なかなかに美味く出来上がってるぞ」
料理を運んできた先ほどの人物が木のスプーンらしきもので、すくって、口に運んできた。
覚悟を決めて、紫色の液体に含まれる米ぽいものと
大量の昆虫ぽいものと幼虫ぽいものを噛み込む。
「ぐっぐううう」
と唸ってしまったが、塩味が効いており、悪くない。
それどころか、あの幼虫のフォルムさえ気にならなければ美味い。
食に関しては、何とかなりそうと判断し、二口三口と食べさせて貰う。
ふと、紺のフードの人物のほうに向けると、その人物は、なかなかに美しい女性だった。
「ほっ、料理を振舞うのは、何年振りかだったので、
ちょっと、不安だったが、杞憂のようだったな。
今回は、体力回復のために貴重な昆虫類をふんだんに使ったが、
普段はあまり使えないから、あまり期待しないように。
後程、守備隊長殿が色々と話に来ると思う。睡眠をとるなら、それからにするように」
美味しく幼虫を食べているように感じたのか、
そんなことを言って、空になった皿を持って、部屋を出て行った。
「昆虫は高級食材なのか」
いくつかの疑問は、詳細は別として、なんとか答えを得られた気がした。
残りは、文字についてと森で見た獣。
より詳しく色々と知ることで、ここでの自分の立ち位置を確認できるはず。
守備隊長控室にて。
直立不動にて、紺のフードを着た女性が、
目の前の椅子に腰かけている壮年の男性に話しかける。
「報告。召喚者は動けませんが、現在、起きています。
意識の混濁や混乱はなく、意思の疎通は可能な状態にあります」
「よろしい!後程、君と俺で面会しよう。
ところで彼は、先ほど、君が作っていたなんというか魔術を
付与された料理を残らず食べ切ったのかな?」
不可解な質問であったが、
「質問の意図が解りかねますが。
先ほどの料理に魔術的要素はございません。
体力の回復を早めるよう栄養価の高い食材を使っただけです」
と答えた。
壮年の男性は何とも言えぬ表情をした。
そして、しばしの沈黙が二人の間を支配した。
「料理はさておき、まあ、研究所の所見は正しかったようだな。
あの獣は、召喚者を狙っているな。いつまでもここにいる訳にはいかぬ。
早々にあの召喚者を囮にして、獣を呼び寄せるとするか。
確実にあの召喚者に異能はないのだな?」
国柱たる将軍職に連なり、神の力を模すると
称される神象兵器の担い手の一人、ザルツは、更に続ける。
「傭兵と冒険者をできるだけ集めろ。奴らも獣の噂は聞いているはずだ。
報酬をはずめ。それで、街の守備兵の損耗を抑えられるなら、安いものだ。
次は、俺が最初から前面に出て、殺す。君は魔術攻撃せず、補助魔術を使用しろ」
「あの召喚者には特に異能はございません。
以前、申し上げた通り、失っても問題にはなることはございません。
傭兵はギルドより斡旋させて、人数を集めます。
あの獣の怪我の具合からすると、あと2、3日後には動けるようになっているかと」
ザルツは一瞬、その言葉に驚いたが、更に会話を続けた。
「その回復力だと、奴が逃げられぬように囲み、俺が仕留めるしかないな」
突然、ドアが凄まじい勢いで開けれ、一人の兵士が駆け込んできた。
「報告。正門から森より現れた妖魔、妖獣の類の侵入を許しました。
侵入した数は不明。現在、守備隊及び冒険者等が対応にあたっています」
ザルツは無言で立ち上がり、戦いの準備を始めた。
お腹から盛大に音がなった。
しかし、目の前に置かれた木の皿に盛られた料理を口に運べない。
「んん?どうした?痛みで、手を動かすのが難しいのか?
まあ、今回は、私が食べさせてあげよう。なかなかに美味く出来上がってるぞ」
料理を運んできた先ほどの人物が木のスプーンらしきもので、すくって、口に運んできた。
覚悟を決めて、紫色の液体に含まれる米ぽいものと
大量の昆虫ぽいものと幼虫ぽいものを噛み込む。
「ぐっぐううう」
と唸ってしまったが、塩味が効いており、悪くない。
それどころか、あの幼虫のフォルムさえ気にならなければ美味い。
食に関しては、何とかなりそうと判断し、二口三口と食べさせて貰う。
ふと、紺のフードの人物のほうに向けると、その人物は、なかなかに美しい女性だった。
「ほっ、料理を振舞うのは、何年振りかだったので、
ちょっと、不安だったが、杞憂のようだったな。
今回は、体力回復のために貴重な昆虫類をふんだんに使ったが、
普段はあまり使えないから、あまり期待しないように。
後程、守備隊長殿が色々と話に来ると思う。睡眠をとるなら、それからにするように」
美味しく幼虫を食べているように感じたのか、
そんなことを言って、空になった皿を持って、部屋を出て行った。
「昆虫は高級食材なのか」
いくつかの疑問は、詳細は別として、なんとか答えを得られた気がした。
残りは、文字についてと森で見た獣。
より詳しく色々と知ることで、ここでの自分の立ち位置を確認できるはず。
守備隊長控室にて。
直立不動にて、紺のフードを着た女性が、
目の前の椅子に腰かけている壮年の男性に話しかける。
「報告。召喚者は動けませんが、現在、起きています。
意識の混濁や混乱はなく、意思の疎通は可能な状態にあります」
「よろしい!後程、君と俺で面会しよう。
ところで彼は、先ほど、君が作っていたなんというか魔術を
付与された料理を残らず食べ切ったのかな?」
不可解な質問であったが、
「質問の意図が解りかねますが。
先ほどの料理に魔術的要素はございません。
体力の回復を早めるよう栄養価の高い食材を使っただけです」
と答えた。
壮年の男性は何とも言えぬ表情をした。
そして、しばしの沈黙が二人の間を支配した。
「料理はさておき、まあ、研究所の所見は正しかったようだな。
あの獣は、召喚者を狙っているな。いつまでもここにいる訳にはいかぬ。
早々にあの召喚者を囮にして、獣を呼び寄せるとするか。
確実にあの召喚者に異能はないのだな?」
国柱たる将軍職に連なり、神の力を模すると
称される神象兵器の担い手の一人、ザルツは、更に続ける。
「傭兵と冒険者をできるだけ集めろ。奴らも獣の噂は聞いているはずだ。
報酬をはずめ。それで、街の守備兵の損耗を抑えられるなら、安いものだ。
次は、俺が最初から前面に出て、殺す。君は魔術攻撃せず、補助魔術を使用しろ」
「あの召喚者には特に異能はございません。
以前、申し上げた通り、失っても問題にはなることはございません。
傭兵はギルドより斡旋させて、人数を集めます。
あの獣の怪我の具合からすると、あと2、3日後には動けるようになっているかと」
ザルツは一瞬、その言葉に驚いたが、更に会話を続けた。
「その回復力だと、奴が逃げられぬように囲み、俺が仕留めるしかないな」
突然、ドアが凄まじい勢いで開けれ、一人の兵士が駆け込んできた。
「報告。正門から森より現れた妖魔、妖獣の類の侵入を許しました。
侵入した数は不明。現在、守備隊及び冒険者等が対応にあたっています」
ザルツは無言で立ち上がり、戦いの準備を始めた。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。
途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。
さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。
魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる