起きるとそこは、森の中。可愛いトラさんが涎を垂らして、こっちをチラ見!もふもふ生活開始の気配(原題.真説・森の獣

ゆうた

文字の大きさ
上 下
208 / 267
森の獣 1章 稲生編

昆虫食は、標準食か?

しおりを挟む
「ぐうぅぅーぶぅぅー」
お腹から盛大に音がなった。
しかし、目の前に置かれた木の皿に盛られた料理を口に運べない。
「んん?どうした?痛みで、手を動かすのが難しいのか?
まあ、今回は、私が食べさせてあげよう。なかなかに美味く出来上がってるぞ」
 料理を運んできた先ほどの人物が木のスプーンらしきもので、すくって、口に運んできた。

 覚悟を決めて、紫色の液体に含まれる米ぽいものと
大量の昆虫ぽいものと幼虫ぽいものを噛み込む。
「ぐっぐううう」
と唸ってしまったが、塩味が効いており、悪くない。
それどころか、あの幼虫のフォルムさえ気にならなければ美味い。
食に関しては、何とかなりそうと判断し、二口三口と食べさせて貰う。
ふと、紺のフードの人物のほうに向けると、その人物は、なかなかに美しい女性だった。
「ほっ、料理を振舞うのは、何年振りかだったので、
ちょっと、不安だったが、杞憂のようだったな。
今回は、体力回復のために貴重な昆虫類をふんだんに使ったが、
普段はあまり使えないから、あまり期待しないように。
後程、守備隊長殿が色々と話に来ると思う。睡眠をとるなら、それからにするように」

 美味しく幼虫を食べているように感じたのか、
そんなことを言って、空になった皿を持って、部屋を出て行った。

「昆虫は高級食材なのか」 
いくつかの疑問は、詳細は別として、なんとか答えを得られた気がした。
残りは、文字についてと森で見た獣。
 より詳しく色々と知ることで、ここでの自分の立ち位置を確認できるはず。

 守備隊長控室にて。
直立不動にて、紺のフードを着た女性が、
目の前の椅子に腰かけている壮年の男性に話しかける。
「報告。召喚者は動けませんが、現在、起きています。
意識の混濁や混乱はなく、意思の疎通は可能な状態にあります」

「よろしい!後程、君と俺で面会しよう。
ところで彼は、先ほど、君が作っていたなんというか魔術を
付与された料理を残らず食べ切ったのかな?」
不可解な質問であったが、
「質問の意図が解りかねますが。
先ほどの料理に魔術的要素はございません。
体力の回復を早めるよう栄養価の高い食材を使っただけです」
と答えた。
 壮年の男性は何とも言えぬ表情をした。
そして、しばしの沈黙が二人の間を支配した。
「料理はさておき、まあ、研究所の所見は正しかったようだな。
あの獣は、召喚者を狙っているな。いつまでもここにいる訳にはいかぬ。
早々にあの召喚者を囮にして、獣を呼び寄せるとするか。
確実にあの召喚者に異能はないのだな?」
国柱たる将軍職に連なり、神の力を模すると
称される神象兵器の担い手の一人、ザルツは、更に続ける。
「傭兵と冒険者をできるだけ集めろ。奴らも獣の噂は聞いているはずだ。
報酬をはずめ。それで、街の守備兵の損耗を抑えられるなら、安いものだ。
次は、俺が最初から前面に出て、殺す。君は魔術攻撃せず、補助魔術を使用しろ」

「あの召喚者には特に異能はございません。
以前、申し上げた通り、失っても問題にはなることはございません。
傭兵はギルドより斡旋させて、人数を集めます。
あの獣の怪我の具合からすると、あと2、3日後には動けるようになっているかと」
ザルツは一瞬、その言葉に驚いたが、更に会話を続けた。
「その回復力だと、奴が逃げられぬように囲み、俺が仕留めるしかないな」
突然、ドアが凄まじい勢いで開けれ、一人の兵士が駆け込んできた。
「報告。正門から森より現れた妖魔、妖獣の類の侵入を許しました。
侵入した数は不明。現在、守備隊及び冒険者等が対応にあたっています」

ザルツは無言で立ち上がり、戦いの準備を始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...