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急行

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早歩きで、独居房のある方へ
向かう加賀見と織多さんだった。
全力で走って、ばてたところを
返り討ちになるようなリスクを
避けることが目的であった。
悪態を突いたにも関わらず、
織多さんは、気が気でないのか、
走り出すのを必死に我慢しているようであった。
「加賀見さんっ。もう無理です。お先に行きます!」
と叫ぶと加賀見が止める間もなく、走り出してしまった。

織多さんは、腹を立てていた。
確かに体力を温存することは重要だと思ったが、
間に合わずにロベリオが深い傷を
身体にも心にも負ってしまっては、
元も子もないではないかと思っていた。
そして、あの恐怖を体験した織多さんにとって、
他人事ではなかった。
あのようなこと、絶対に起こしてはならないと
心に叫びながら、全速力で向かった。

独居房の前に着くと、二人の男は、
ロベリオを持ち上げ、室内に下ろした。
意識がまだ、戻らないのか、時節、
呻き声を出すロベリオだった。
それが二人の男の興奮を高めていた。

「はぁああぁ、くそっ。さっさと戻ろう」
「くふうっ、ふうふう、そうだな」
二人は、理性がぎりぎり保たれている状態であった。

「うううっ、ここは?ううっ、痛っ」
目を覚ましたロベリオが苦痛に呻き、
視線に男二人が入ると、必死に両足を組くんで、
下着を隠そうとした。
両腕は、出来る限り胸元に寄せ、
豊かな胸を隠そうとした。

しかし、その動きは、妙に色気があり、
二人の牡を刺激した。
二人の男の目が充血し、我慢の極致にあることを示していた。

「ううっ、なっ何よ。やだ、来ないで」
ロベリオが哀願するように言った。
彼女の普段とのギャップが更に二人の男を刺激した。

「おい、もういい、俺はここに残る。
さっさと行け。どうせ、こいつは副船長に
逆らった罪人として、裁かれるんだ。
最後に楽しませてやるよ」

「おいおい、それなら、たっぷりと
楽しませてやらないとな。
お前、一人じゃ足りないだろうよ」
下品な笑い声と共にロベリオに近づき、
まず、両腕を押さえつけ、彼女のブラを
もう一人の男が力任せに剥ぎ取った。

「やああっーやだやだ、やめて、ね、ね。お願いやめて」
必死に抗うロベリオ。
二人の男は前後から、ロベリオを組み伏せ、
各々、純白の肌を堪能し始めた。
ついに下着を同じように力任せに剥ぎ取り、
逸物を胸や尻に当ててその感触を楽しんでした。

「あーこの拘束、邪魔だっ」

「おい待て、まだ、早いだろ。
無理やりあれだ!咥えさせるんだよ」

「さっき、見たやつか。やれやれ!
気の強い生意気なこいつに分からせてやるか」
1人が背中から、羽交い絞めにすると、
もう一人がロベリオ口を強引に開き、
そそりたつ粗末なモノをねじり込んだ。

「ぎゃあああー」
ねじり込んだ男が絶叫をあげた。
歓喜と興奮の絶叫でなく、
痛みと恐怖からの絶叫であった。

男は痛みで気絶しそうであったが、
己の逸物があることを確認した。
血がだらだらと流れているが、
どうやら、繋がってはいるようだった。

ロベリオは、口から、ぺっと勢いよく、
血を吐き出し、床に落とした。

「おいおい、咥えさせるなら、
きちっと、綺麗に洗ってからにしろよ。
まあ、強烈な臭いのお陰で
意識がはっきりしたけどな」

激痛のせいで皮肉を言われた男は
それどころではないようだった。

ロベリオを羽交い絞めにしている男は、
状況の変化についていけず、
ロベリオの形の良い胸を無意識に揉み続けていた。

「おっさん、下手過ぎ。
かがみぃーにご教授願うんだな」
と言うや否や肘鉄を喰らわせた。
痛みに耐性など、全くない男は、
一撃で狂ったようにのたうち回り始めた。

ひょいっ立ち上がるロベリオ。
そして、それを見て、化け物でも
見たかのような表情で管理者たちは、
見つめていた。

「ねえ、この拘束を解いてくれたら、
悪いようにはしないよ。
一生、困らない程度は保証するけどね。
だけど、まあ、家族には会えないかな。
拘束した女性を襲う変態とは、
家族も会いたくないだろうけどねぇー。
でっ?どうするの?」
普段通りの表情で二人の管理者に言った。

「きっ貴様、副船長に殴られた癖に痛くないのか?」
「ぐぎゃ、ぐううぅ、頼む、見逃してくれ、
早く治療しないと」

各々、支離滅裂なことを叫んでいた。

「あーこれ?一応、派遣されているとはいえ、
他地区への潜入と同じだよ。
この程度の痛みをコントロールできない
諜報員なんて、いないでしょ。
それよりどうするの?
多少なりとも利用価値があるから、
生かしておいてあげると言っているんだけど?」
 にまにましながら、最終回答を迫るロベリオだった。

断れば、ロベリオを襲ったという名分で、
社会的にも肉体的にも抹殺されるだろう。
恐らくその証拠は、カーリンがきっちと
記録しているであろうと二人は想像した。
そして、選択肢は、副船長を裏切って、
ロベリオに従うしかなかった。

通路には足音と大きな呼吸をする音が通路に
こだましていた。

ロベリオはその音を聞き取ると
とっさに倒れ込んだ。
ロベリオの突然の行動に男二人は、
理解できずにぽかんとしていた。

織多さんは、拘束され、
裸で倒れているロベリオを見た。
破れた下着が部屋に落ちており、
更に血が飛散していた。
見たくもない下半身を晒して仁王立ちする男を一人、
ロベリオに向かって下半身を晒して屈む男を一人、確認した。

その瞬間、織多さんの脳を怒髪天が衝いた。
いまいち、よく理解のできないことをどなり散らし、
仁王立ちする男の股間を蹴り上げた。

ぐしゃり、嫌な音がした。

男は顔を歪めて、無言のまま、その場に倒れ込んだ。

「ひっ、ひひっ、私は、その男に言われて、
仕方なしに。違うんだ、副船長の派閥とは
違っていたから、どうしても。
かっ家族がいるんだ。頼むたのむたのむ」
織多さんは、似たようなことを
言っていた金重を思い出していた。
そして、怯える男を無理やり立たすと、
床に思いきり、叩きつけた。

「げぼうぅ」
吐瀉が止まらないのか、
背中をびくんびくんさせながら、
吐き続けていた。
酸味を帯びた臭いが部屋を満たしたが、
織多さんは気にせず、倒れているロベリオに近づき、
自分の着ている服を羽織らせた。
織多さんは、周囲を警戒しながら、
加賀見が到着をするのを待っていた。
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