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疲労

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森を抜けて、また、草原のエリアを
歩く加賀見と織多さん。
見渡す限り地平線が見えるほど遮蔽物がないが、
不時着した船を見つける事はなかった。
歩き始めて、既に4日目となっていた。
そして、超広範囲探索器もまた、航路の軌跡を
示すだけで船の不時着した地点を示すことはなかった。

加賀見は表面上、取り繕っていたが、
内心、焦っていた。残りの食料と水は3日間。
4日目の18時頃であろう。天気・気温・明るさに
変化がない上に風景も全く同じ。
製造工場のクリーンルームでの
長時間作業のようだった。

「うーん、気温23℃で過ごしやすいはずなのに
この服のせいか暑いですね。
いい加減、着替えたいですよね」
と歩きながら、織多さんが言った。

「流石にここまで変化がないと、
気分が滅入ってきますね。織多さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですけど、ここに来て、
だいぶ慣れたつもりでしたが、
昼と夜が時計の時間だけでの判断って、
結構、疲れますね」
と織多さんが続けた。

「そろそろ、食事にして、休憩しますか?」
と加賀見が言うと、
「そですね。うーんうーん、
リュックもだいぶ軽くなってきましたね」
と食料を取り出して、心細そうに言った。

「味気ない味ですが、もう少しの辛抱ですよ。
帰投したら、Cセットをおごりますよ」
と太っ腹な加賀見であった。

見上げても灰色のくすんだ空が見えるだけだった。
どこにいてもこの世界では、自然に癒さることはなかった。
加賀見は四季に富んだ自分の住んでいた街が
無性に恋しくなった。

「加賀見さん、7時間後に起床でいいですか?
加賀見さん、聞いていますか?」
と織多さんが加賀見に話しかけていた。

「えっ、ええ、そうですね。
7時間後でお願いします」
と惚けて言うと、織多さんが心配そうに
「寝てもあまり疲れが取れませんか?」
と心配そうに織多さんが尋ねた。

「アウトドアはどうも苦手でしたので。
まあでも、害獣や雨といったことを
心配しなくていいのは助かります」
と加賀見は言って、中身の減ったリュックを
枕替わりにゆっくりと横になった。

「加賀見さん、おはようございます」
と織多さんが加賀見に声をかけた。

5日目が始まった。

「おはよう、織多さん」
と加賀見が身体を伸ばしながら、挨拶をした。
そして、物資のチェックを始めた。

加賀見は眉間に皺を寄せながら、
物資のチェックを行い、織多さんへ話かけた。

「織多さん、今後の排泄ですが、
小水はそのまましてください。
便はいままで通り、サバイバルスーツに
連結できる密閉式の簡易キットを使ってください。
残り5枚ですので」

「食料問題より先にそっちの問題が
ついにきましたか、、、今日、見つかれば、
セーフですよね」
と織多さんが努めて明るく言った。

加賀見は頷き、物資をしまい、歩き始めた。
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