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「加賀見さん、あれ、何でしょうか?
行きにはあんな黒いラインなかった気がしますが」
と織多さんが加賀見に話しかけた。

「すみません、織多さん、
元宮さん、車両停止してください。
それと念のため、尾賀さんを起こしてきます。
ここから、モニタしましょう。
確かにあのようなラインは見えませんでしたね。
地平線にしては妙に濃いというか
くすんだ感じですね」
と加賀見もそれを凝視して、尾賀を起こしにいった。

ベッドで睡眠を取っていた尾賀は、
サバイバルスーツを脱いで、下着姿であった。
汗や汚れは拭き取ったのであろうか、
身体はべとついていなかった。
そして、寝相が悪いのか薄い掛け布団は床に落ちていた。
加賀見は、その無防備に
さらけ出している尾賀の肢体を見てしまうと、
織多さんに頼むべきだったと後悔した。
疲れが溜まっているからだろうか、
股間の反応がやけに早かった。

加賀見は、色々と気をまわしている場合ではないと
判断し、尾賀を起こすために近づいて、声をかけた。
「尾賀さん、起きてください。問題が発生しました」
掛け布団を尾賀にかけながら、声をかけた。

「んんっ?どうしたの?
ってなぜ、加賀見が起こしに来ているのよ。
織多に頼めばよかったのでは?」

「はあ、すみません。
急ぎの件でしたので、そこまで気が
回りませんでした」
と加賀見が答えた。

「まったく、股間を張らせてから、
真面目に答えられても。
スーツを汚しても代替品は用意しませんよ」
と加賀見にくぎを刺した。

「そんなことは絶対にしませんよ。
それより、私は戻りますので、
スーツを着用したら、直ぐに来てください」
と言って、加賀見は戻った。

元宮はにやにやしながら、
織多さんは不満げな表情で加賀見を迎えた。
「加賀見さん、何かいいものが
見れたんじゃないですかぁ。
あの人、あまり寝相がよくないですからねぇ。
まあ、加賀見さん、サバイバルスーツですと、
あれの形がくっきりとでることは
前回の探索ではわかっていると思いましたがね」
と元宮が加賀見のあそこを指差して、
にやにやしていた。

「そもそも起こすなら、
私が行けばよかったのに、
女性を起こすのに加賀見さんが
行く必要があったんですか?」
仏頂面で鋭く指摘する織多さんだった。

「そんなことより、あれを確認するために元宮さん、
小型探索機をちかくまで飛ばして貰えませんか?
運転は私がします。尾賀さんと織多さんが
警戒にあたるということでどうでしょうか?」
と加賀見は、話を逸らしたかったのか、急ぎ提案した。
「そうですね、そうしましょう。
加賀見さんの意見でいきましょう。
状況が確認できるまで、
加賀見さん、探索車両を待機させて。
それと状況が確認できるまでには、
身体のほてりも落ち着かせなさい、
サルじゃあるまいし、状況を考えなさい」
と3人の後方から尾賀が話しかけてきた。

 元宮は小型探索機をそれに近づけた。
そして、小型探索機からの送られてきた画像は、
彼らを驚かすに十分なものであった。
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