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饒舌

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 加賀見はいい加減、うんざりしていた。
副船長の相変わらずの登場の仕方に!
「副船長、ひねりのない登場の仕方ですね」
と皮肉を言った。

「加賀見君、一々、君との接触にひねりを
加える必要があるのかな?
そんなことに時間を費やすのは無駄でしょう」
と苦笑交じりに答えた。

「それでは、今日はどんなご用件で?
これから、Cセットの食事なんですよ」
と皮肉を無視し得て、冷たく言い放つ、加賀見だった。
その加賀見の対応に織多さんは相変わらず、
ハラハラとしていた。

「これはこれは!これは奮発しましたね。
しかし、Cセットの二人分となると、
今後の予算が相当厳しくなるのでは?
まだまだ、調査で680日程度も
ここで過ごすことになるんですよ。
それとも20代で職を転々として、
予算の編成に疎いのですかね?」
とにやにやして、副船長が言った。

加賀見は努めて、冷静に
「どんな計画か知りませんが、680日も
ここにいるつもりはないでしょう、あなたは」
と言った。

「ほほう、面白いことと言いますね、加賀見君は!
出航前に各企業とあなた自身に説明があったかと、
探索の期間は2年と!どういうつもりの
発言が聞きたいものですねぇ」
とにやにやしていたが、冷たい目で
加賀見を見つめて、副船長が言った。

刺々しい二人のやり取りと
美味しそうな料理が冷めていくことに
織多さんは、更にハラハラした。
「えーと、副船長、そういったお話は、
また、別のミィーテイングのときにでも
しませんか?
そのう、加賀見さんも私も
お昼がまだ、お腹が空いていまして」
と伝えた。

「それはそれは、すみませんでした。
まあ、加賀見君、あまり調子にのらないことですね。
ここでは、地球のように嫌になったら、
退職して、逃げ出すことはできないのだからねぇ」
と言って、副船長は加賀見の耳元で、
「君には楽しませて貰っているが、
あんまり舐めた態度を取るようだったら、
放り出すぞ」
と口元を歪めて、囁いて、去っていった。

加賀見はため息をつくと、織多さんに向かって、
「せっかくの料理が冷めてしまいますね。頂きましょう」
と伝えた。

食後のコーヒーを飲みながら、
加賀見は先ほどの件をぼんやりと考えていた。
今回の航海の参加者の人数もだいぶ減り、
コントロールし易くなってきたのだろう。
そして、以前の航海で調査できなかった件を
進めはじめたのだろうな。加賀見はそう思った。
参加者の生死を問わず、新しいデータと
サンプルを集めることが多分、事務局の目的なのだろう。
探索者のコマが尽きれば、奴らは撤収するはずだ。
道化を演じることで、なるべく上手く立ち回り、
時間を稼いで、変化を待つことを
今後の方針として考えた。

「加賀見さん、加賀見さん、大丈夫ですか?」
と織多さんが心配そうに声をかけてきた。

「ん?どうしましたか?」と加賀見が返すと、

「なんというか、心ここにあらずというか、
コーヒーカップをずーっと見つめていたので。
どうしたのかと?」
織多さんが答えた。

「大丈夫ですよ。さて、織多さん、
部屋まで送りますよ。戻りましょうか」

「そのう、もし加賀見さんにお時間があるなら、
トレーニングルームに行きませんか?
全然、動いてないから、何か身体が重くって」
と織多さんが言った。

「では、そうしましょう。付き合いますよ」
と加賀見は了解し、二人はトレーニングルームに
向かった。

 同時刻、管理センターでロベリオとカーリンが
食堂での副船長と加賀見のやり取りをモニターしていた。

「あれって、副船長、ちょっとマジギレしてない?」
とロベリオが言うと、

「うーん、久しぶりにあの酷薄な表情をみました」
とカーリンが賛同した。

「かがみぃーには楽しませてもらったけど、
潮時なのかなぁ。残念」

「決めるのは副船長ですから、もし、そうなっても
仕方ありませんわ。それよりロベリオ、あなたも
仕事を始めなさい」
とカーリンが促した。
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