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緊張のやり取り

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帰還から、3日ほど、加賀見は、
他のグループの報告書を精査していた。
どのグループもあまり、めぼしい発見は
ないようであった。
共通するのは生物がいないことと
脈絡なく植物の生態が変ることであった。

「どうしたものかな。各ブロック毎に
土壌と植物を採取して、比較検討をするかな。
しかし研究者じゃないから、そんなことしてもなぁ。
まあ、何か有益な物質が発見出来ればラッキーかな」
と加賀見は考えた。

「そうですねぇー。それを次にやりましょう!
近場のものを採取して帰還すれば、安全ですしね。
半日の探索でどうですか?」
突然、加賀見の独り言に割って入ってきた織多さん。

「同じことを考える人がいそうですね。
どこもどうやら、他グループの動きの
様子見のようですし、やってみましょうか。」
加賀見は、織多さんの提案に賛成した。

さほど難度の高い探索でもなく、
計画書はその日のうちに提出をすることができた。
しかし、探索の許可は、2日、経つも全く音沙汰がなかった。

「うーん、音沙汰なしですねー。
加賀見さんが喧嘩を吹っ掛けたからですかねー」
食堂で織多さんが茶化すように話した。

「その可能性もなくはありませんが、
多分、未知のウイルス等の船内への
持ち込みのリスクを検討しているのではないかと。
多分ですが、持ち込みの提案は
我々が最初のかと思います」
と加賀見は、思案を巡らす。

「そですねー確かに帰投時の過剰な
クリーニングからすると、その可能性が高いですね。
加賀見さん、一旦、計画書を撤回しますか?」

「いえ、それには及びませんよ。
確かに調査にはリスクがありますが、
探索がすすみませんので、
中型探索車両の貸し出しと事務局員2名付きで
打ち合わせになります」
と突然、副船長が話に割って入ってきた。

「これは、先日はすみませんでした。
副船長、いいのですか?
そのようなことを話しても」
加賀見が如才なく話しかけた。

「ええ、大丈夫ですよ。既に配信されているはずですから。
メールをご確認してみては?」
副船長が笑いながら、答えた。

「あっ本当だ。加賀見さん、届いていますよ。
明日の朝から打ち合わせみたいです」
とメールを確認した織多さんが答えた。

加賀見は先日の件から、どうも釈然としない
思いに囚われていた。
この程度の提案、大手企業あたりから、
出ていてもおかしくない気がしてならなかった。
自分たちが提出するのを待っていたのか?
それとも、、、色々な思考に囚われていると、

副船長が「大手さんは、どうも臆病で困ります。
スターテクノロジーズさんの惨状を
目の当たりすれば、探索に臆病になるのは
致し方ないのかもしれませんけどね」
と見透かしたように話した。
 
「いま、現在、探索計画書は
提出されていなのでしょうか?」
と加賀見は尋ねた。

「ええ、加賀見君の計画書以外は、
提出されていませんよ。
どうも手詰まり感があるようで。
まだ、到着して20日程度なのに困ったことです」
と言い残して、副船長はこの場を去った。

「なんだか、最近、加賀見さんと
副船長との会話を聞いてますと、
ううっ何だかはらはらするんですけど」
と織多さんがクレームを言ってきた。

「そんなつもりはないのですが、
それはすみません、少し気を付けます」
と加賀見は伝え、明日の打ち合わせの
準備をするために織多さんとセンタールームに向かった。
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