6 / 40
本編
*2* ジュリ
しおりを挟む
社会の荒波に放り出されたばかりの小娘が、世界を救うマザー。
そういう作品かなと検索をかければ、圏外を表示するスマートフォン。
電源を切り、ため息と一緒にショルダーバッグへ仕舞うまで、大して時間はかからなかった。
「どこの高級ホテルのスイートルームですか?」
うちのワンルームなんて、すっぽり収まりそう。ここ寝室だよね?
ベッドを下り、すぐ脇の、これまた高そうな姿見をのぞき込む。
リネン生地のブラウス、ネイビーのパンツスタイルに、パンプス。
そしてカラーリング要らずの亜麻色のショートヘアは、見慣れたもの。
不慮の事故に遭った記憶もない。
ファンタジー小説とかで最近人気の転生モノだとか、成り代わりモノだとかではなく、あたしはあたし笹舟 星凛本人として、ここにいる──
「母さん、起きてる? 入ってもいい?」
ふいのノック音。ドアの向こうでくぐもる声は、唯一にして最大のキーパーソンである少年のものだ。
正直まだ半信半疑ではあるけど、これが夢でないなら、あたしがすべきことはひとつ。
「起きてるよ。どうぞ、ジュリ」
まずは、情報を集めなければ。
* * *
一夜明けてわかったのは、広い広いお屋敷にあたしとジュリしかいないこと。そして。
「オムレツは半熟。コーヒーには角砂糖をひとつ。一番好きなものは、ブドウ。そうだよね?」
あたしは何も知らないけど、ジュリは何でも知っている、ということだ。
名乗りもしていないあたしの名前から好物まで、何でも。
「オレたちは、目に見えない深いところで繋がってるんだ。その証拠に、母さんにはオレの名前がわかっただろ?」
「わかったっていうか、不思議と頭に浮かんできたというか……でもそれ以外は、なんにもわからないよ」
「そういうものだよ。だってオレは、生まれたばかりだから」
あたしの好物ばかりを厳選した朝食を作ってくれたのが、生後2日の坊っちゃんだという。
あの、あたしにはどうも、高校生くらいのイケメンにしか見えないんですけどね、ジュリくん?
「母さんがセフィロトに祈ったから、オレは生まれたんだ」
「うっ……!」
心当たりが、なくもない。
あの夜、あたしが拾った謎の黒い玉こそが生命の種『オーナメント』と呼ばれるもの。
そして突然現れた季節外れのクリスマスツリーが、かの世界樹なるものらしい。
──神様、あのね。
たしかに、お祈りはしました。したけどさ……
──子供ほしいなー、あ、旦那は要らないや!
とかいう、しょうもない酔っ払いのテンションだったはずだ。
つまり、『あたし』が『なんか黒い玉』を『ツリーもどき』に捧げた。
その結果、『ジュリ』が生まれたのだという。マジか。
「まだ信じられないって顔してる。ま、母さんは異世界の人だから、無理もないか」
「そうそう、新卒もいいところのひよっこOLで……はっ、えっ、ちょ、えっ!?」
「セフィロトって意思を持った神霊樹だから、気に入った人間をマザーにするためなら、異世界からでも連れて来るんだ。わりとありがち」
「ありがちなの!?」
サラッと爆弾を落とされた気がする。
待って、それじゃあ、この世界じゃ常識だろうマザーのことを詳しく教えてくれてたのって、あたしが異世界から連れてこられてるのを、ジュリは知ってたからってことになる。
「それほどあなたが、渇望されていたってこと」
頬杖をついてはにかむジュリ。むぅ……顔がいい。
居たたまれなくなって慌ただしくオムレツを口に運ぶあたしは、漆黒を宿した瞳がまぶしそうに見つめる意味なんて、知るよしもなかった。
* * *
とにもかくにも、アクションを起こさないと。
お腹が満たされて少しだけ勇気が出たあたしは、ジュリを引き連れて、駄々っ広いお屋敷を探索していた。
「ぶっちゃけここって、何なの?」
「先代のマザーが使っていた別邸だよ。ちょっと埃っぽかったから、掃除しといた」
「この大豪邸を、ひとりで!?」
「お、言ったなー? これでも体力には自信あるんだから」
料理も掃除も得意とは、なんてデキる新生児だろうか。
聞くところによれば、エデンに住む人間たちは、必ずしも赤ん坊の姿で生まれるわけではないらしい。
少年少女だったり、老人だったり、まさに老若男女さまざま。
そしてひとたび生まれ落ちた姿のまま、永遠を過ごすのだという。
「不老不死ってこと? すごいね……」
「いや、不老ではあるけど、不死じゃない。病にかかったり怪我をすれば、命を落としてしまうこともある。それは母さんも同じ。だからこうして、マザーの代替わりがあるんだよ」
「あ……」
先代のマザーの別邸を、あたしたちが使わせてもらっている理由。
ジュリの話を聞いて、ようやく理解した。
つまりは、そういうことだと。
こどもを生むことのできる唯一の存在。
マザーの不在は、種の断絶、この世の終焉を意味する。
「ねぇ、ジュリ」
「うん?」
それでも、あたしは。
「セフィロトって、どこにいるの?」
あたしのすべきことを、成さなければ。
* * *
ジュリのことは、手先の器用な子だなぁ、くらいにしか思っていなかったけど、とんでもない。
「大丈夫?」
「ヒュッてした……なんかおなかが、ヒュッてした……!」
ジュリは、とんでもなく優秀な子だった。
外に出たいと言えば、あたしを抱えて一瞬で街へ飛ぶ転移魔法を、軽々と扱うほどに。
いわくお屋敷がある森奥から街へは遠いので、あたしを思っての行動だったらしい。
けどごめん、あたし絶叫マシンダメなの。ヒュッてして、フワッとするやつ、ほんとダメなの……
「ごめん、母さん……次はもっと上手くやる」
「ええんやで……」
かくして、しょんぼりと落ち込むジュリを、虫の息ながら慰めるという構図が出来上がった。
そうね、向上心は大事ね。丁重にお断りした。
ならせめてと、潤んだ瞳で手を繋がれた。断れなかった。
ジュリに手を引かれてやってきたのは、RPGとかでよく見るような、レンガ造りの西洋風の街。
色んな人が行き交う往来を、くるりと見渡す。
そのうちに、出かけざまにジュリがおそろいの外套を持ってきて、フードをまぶかに被るよう言い含めてきた意味を、思い出すことができた。
あとは……あぁ、そうだ。
「ジュリ、お願いがあるんだけど」
「母さんのお願いなら、何でも叶えるよ」
「それ」
「えっ?」
「あたしのこと、『母さん』じゃなくて、名前で呼んでほしいの。街にいる間だけでもいいから」
気が利いて、賢いジュリのことだ。みなまで言わずともわかってくれるだろう。
「それもそうだね、セリ」
どうやらあたしの意図は、無事伝わったみたいだ。
「じゃあ行こうか。セフィロトは──」
目的地へと再び歩み出そうとした矢先のこと。
口をつぐんだジュリがおもむろに腕を上げたかと思えば、何やら外套の影で、あたしをすっぽりと覆うではないか。
「その前に、どこかへ入ったほうがよさそうだ」
ぽつり、ぽつり。
いつの間にかねずみ色をにじませた空が、愚図り始めていた。
そういう作品かなと検索をかければ、圏外を表示するスマートフォン。
電源を切り、ため息と一緒にショルダーバッグへ仕舞うまで、大して時間はかからなかった。
「どこの高級ホテルのスイートルームですか?」
うちのワンルームなんて、すっぽり収まりそう。ここ寝室だよね?
ベッドを下り、すぐ脇の、これまた高そうな姿見をのぞき込む。
リネン生地のブラウス、ネイビーのパンツスタイルに、パンプス。
そしてカラーリング要らずの亜麻色のショートヘアは、見慣れたもの。
不慮の事故に遭った記憶もない。
ファンタジー小説とかで最近人気の転生モノだとか、成り代わりモノだとかではなく、あたしはあたし笹舟 星凛本人として、ここにいる──
「母さん、起きてる? 入ってもいい?」
ふいのノック音。ドアの向こうでくぐもる声は、唯一にして最大のキーパーソンである少年のものだ。
正直まだ半信半疑ではあるけど、これが夢でないなら、あたしがすべきことはひとつ。
「起きてるよ。どうぞ、ジュリ」
まずは、情報を集めなければ。
* * *
一夜明けてわかったのは、広い広いお屋敷にあたしとジュリしかいないこと。そして。
「オムレツは半熟。コーヒーには角砂糖をひとつ。一番好きなものは、ブドウ。そうだよね?」
あたしは何も知らないけど、ジュリは何でも知っている、ということだ。
名乗りもしていないあたしの名前から好物まで、何でも。
「オレたちは、目に見えない深いところで繋がってるんだ。その証拠に、母さんにはオレの名前がわかっただろ?」
「わかったっていうか、不思議と頭に浮かんできたというか……でもそれ以外は、なんにもわからないよ」
「そういうものだよ。だってオレは、生まれたばかりだから」
あたしの好物ばかりを厳選した朝食を作ってくれたのが、生後2日の坊っちゃんだという。
あの、あたしにはどうも、高校生くらいのイケメンにしか見えないんですけどね、ジュリくん?
「母さんがセフィロトに祈ったから、オレは生まれたんだ」
「うっ……!」
心当たりが、なくもない。
あの夜、あたしが拾った謎の黒い玉こそが生命の種『オーナメント』と呼ばれるもの。
そして突然現れた季節外れのクリスマスツリーが、かの世界樹なるものらしい。
──神様、あのね。
たしかに、お祈りはしました。したけどさ……
──子供ほしいなー、あ、旦那は要らないや!
とかいう、しょうもない酔っ払いのテンションだったはずだ。
つまり、『あたし』が『なんか黒い玉』を『ツリーもどき』に捧げた。
その結果、『ジュリ』が生まれたのだという。マジか。
「まだ信じられないって顔してる。ま、母さんは異世界の人だから、無理もないか」
「そうそう、新卒もいいところのひよっこOLで……はっ、えっ、ちょ、えっ!?」
「セフィロトって意思を持った神霊樹だから、気に入った人間をマザーにするためなら、異世界からでも連れて来るんだ。わりとありがち」
「ありがちなの!?」
サラッと爆弾を落とされた気がする。
待って、それじゃあ、この世界じゃ常識だろうマザーのことを詳しく教えてくれてたのって、あたしが異世界から連れてこられてるのを、ジュリは知ってたからってことになる。
「それほどあなたが、渇望されていたってこと」
頬杖をついてはにかむジュリ。むぅ……顔がいい。
居たたまれなくなって慌ただしくオムレツを口に運ぶあたしは、漆黒を宿した瞳がまぶしそうに見つめる意味なんて、知るよしもなかった。
* * *
とにもかくにも、アクションを起こさないと。
お腹が満たされて少しだけ勇気が出たあたしは、ジュリを引き連れて、駄々っ広いお屋敷を探索していた。
「ぶっちゃけここって、何なの?」
「先代のマザーが使っていた別邸だよ。ちょっと埃っぽかったから、掃除しといた」
「この大豪邸を、ひとりで!?」
「お、言ったなー? これでも体力には自信あるんだから」
料理も掃除も得意とは、なんてデキる新生児だろうか。
聞くところによれば、エデンに住む人間たちは、必ずしも赤ん坊の姿で生まれるわけではないらしい。
少年少女だったり、老人だったり、まさに老若男女さまざま。
そしてひとたび生まれ落ちた姿のまま、永遠を過ごすのだという。
「不老不死ってこと? すごいね……」
「いや、不老ではあるけど、不死じゃない。病にかかったり怪我をすれば、命を落としてしまうこともある。それは母さんも同じ。だからこうして、マザーの代替わりがあるんだよ」
「あ……」
先代のマザーの別邸を、あたしたちが使わせてもらっている理由。
ジュリの話を聞いて、ようやく理解した。
つまりは、そういうことだと。
こどもを生むことのできる唯一の存在。
マザーの不在は、種の断絶、この世の終焉を意味する。
「ねぇ、ジュリ」
「うん?」
それでも、あたしは。
「セフィロトって、どこにいるの?」
あたしのすべきことを、成さなければ。
* * *
ジュリのことは、手先の器用な子だなぁ、くらいにしか思っていなかったけど、とんでもない。
「大丈夫?」
「ヒュッてした……なんかおなかが、ヒュッてした……!」
ジュリは、とんでもなく優秀な子だった。
外に出たいと言えば、あたしを抱えて一瞬で街へ飛ぶ転移魔法を、軽々と扱うほどに。
いわくお屋敷がある森奥から街へは遠いので、あたしを思っての行動だったらしい。
けどごめん、あたし絶叫マシンダメなの。ヒュッてして、フワッとするやつ、ほんとダメなの……
「ごめん、母さん……次はもっと上手くやる」
「ええんやで……」
かくして、しょんぼりと落ち込むジュリを、虫の息ながら慰めるという構図が出来上がった。
そうね、向上心は大事ね。丁重にお断りした。
ならせめてと、潤んだ瞳で手を繋がれた。断れなかった。
ジュリに手を引かれてやってきたのは、RPGとかでよく見るような、レンガ造りの西洋風の街。
色んな人が行き交う往来を、くるりと見渡す。
そのうちに、出かけざまにジュリがおそろいの外套を持ってきて、フードをまぶかに被るよう言い含めてきた意味を、思い出すことができた。
あとは……あぁ、そうだ。
「ジュリ、お願いがあるんだけど」
「母さんのお願いなら、何でも叶えるよ」
「それ」
「えっ?」
「あたしのこと、『母さん』じゃなくて、名前で呼んでほしいの。街にいる間だけでもいいから」
気が利いて、賢いジュリのことだ。みなまで言わずともわかってくれるだろう。
「それもそうだね、セリ」
どうやらあたしの意図は、無事伝わったみたいだ。
「じゃあ行こうか。セフィロトは──」
目的地へと再び歩み出そうとした矢先のこと。
口をつぐんだジュリがおもむろに腕を上げたかと思えば、何やら外套の影で、あたしをすっぽりと覆うではないか。
「その前に、どこかへ入ったほうがよさそうだ」
ぽつり、ぽつり。
いつの間にかねずみ色をにじませた空が、愚図り始めていた。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ご主人様は愛玩奴隷をわかっていない ~皆から恐れられてるご主人様が私にだけ甘すぎます!~
南田 此仁
恋愛
突然異世界へと転移し、状況もわからぬままに拐われ愛玩奴隷としてオークションにかけられたマヤ。
険しい顔つきをした大柄な男に落札され、訪れる未来を思って絶望しかけたものの……。
跪いて手足の枷を外してくれたかと思えば、膝に抱き上げられ、体調を気遣われ、美味しい食事をお腹いっぱい与えられて風呂に入れられる。
温かい腕に囲われ毎日ただひたすらに甘やかされて……あれ? 奴隷生活って、こういうものだっけ———??
奴隷感なし。悲壮感なし。悲しい気持ちにはなりませんので安心してお読みいただけます☆
シリアス風な出だしですが、中身はノーシリアス?のほのぼの溺愛ものです。
■R18シーンは ※ マーク付きです。
■一話500文字程度でサラッと読めます。
■第14回 アルファポリス恋愛小説大賞《17位》
■第3回 ジュリアンパブリッシング恋愛小説大賞《最終選考》
■小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にて30000ポイント突破
美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る
束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました
ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。
幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。
シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。
そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。
ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。
そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。
邪魔なのなら、いなくなろうと思った。
そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。
そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。
無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる