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白き月見草㈡
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「……まちくん?」
不思議に思った穂花が首だけ振り返れば、驚愕に見開かれた鼈甲の視線が、己の背の一点に注がれていることに気づく。
「……嘘、だろ」
声を震わせた真知が、頭を抱える。信じられないとでもいうように。
自分の背に在るもの。真知の心を掻き乱すそれは、ひとつしかない。
頼りなく揺らめく鼈甲に、戦慄した。
「あの、まちくん……」
「……く……」
「え……?」
「……きくだ」
――キクダ。
なにを言われたのかわからず、呆けることしかできない。
そんな穂花へ、なにかを堪えるような沈黙の後、真知は口を開く。
「菊だ。ここに在る花は――白菊だ」
「き、く……」
「あぁ、蕾じゃない……咲いてるんだ。俺の花が……っ!」
花が、咲いた。
脳内で繰り返し、やっと理解したとき、穂花の身体は反転させられるところで。
「穂花……っ!」
一瞬だけ仰ぎ見た真知は、涙を流していただろうか。
痛いくらいに抱きしめられ、確認する術はないけれど。
「ありがとう、ほのか……ありがとう」
否。これほどまでに声を震わせては、確認するまでもなかろう。
「あーもうふざけんな……好きだばか……」
予想外の展開に、訳がわからなくなっているようだ。語彙をどこかへ置いてきた真知がおかしくて、つい笑ってしまう。
「私も好きだよ……まちくん」
すぐ後悔することになるとは、つゆ知らず。
「夢じゃ、ないんだよな……」
「うん、好き」
「っ……俺のほうが好きだばか。結婚しよう」
「うんうん…………ん?」
「いや無理だ、待てない。まず襲う。そして俺の子孕んで結婚してくれ」
「順番おかしくないですか!?」
「穂花、愛してる……っ!」
「ぎゃ――――っ!!」
良かれと思ってかけた言葉が、まさか真知に火をつけてしまうだなんて。
頬を朱に染めた真知に押し倒されながら、ふと壁にかけられた時計を見やる。
色んな意味で泣きたくなった穂花は、半ば諦めに入りつつ、瞳を閉じた。
不思議に思った穂花が首だけ振り返れば、驚愕に見開かれた鼈甲の視線が、己の背の一点に注がれていることに気づく。
「……嘘、だろ」
声を震わせた真知が、頭を抱える。信じられないとでもいうように。
自分の背に在るもの。真知の心を掻き乱すそれは、ひとつしかない。
頼りなく揺らめく鼈甲に、戦慄した。
「あの、まちくん……」
「……く……」
「え……?」
「……きくだ」
――キクダ。
なにを言われたのかわからず、呆けることしかできない。
そんな穂花へ、なにかを堪えるような沈黙の後、真知は口を開く。
「菊だ。ここに在る花は――白菊だ」
「き、く……」
「あぁ、蕾じゃない……咲いてるんだ。俺の花が……っ!」
花が、咲いた。
脳内で繰り返し、やっと理解したとき、穂花の身体は反転させられるところで。
「穂花……っ!」
一瞬だけ仰ぎ見た真知は、涙を流していただろうか。
痛いくらいに抱きしめられ、確認する術はないけれど。
「ありがとう、ほのか……ありがとう」
否。これほどまでに声を震わせては、確認するまでもなかろう。
「あーもうふざけんな……好きだばか……」
予想外の展開に、訳がわからなくなっているようだ。語彙をどこかへ置いてきた真知がおかしくて、つい笑ってしまう。
「私も好きだよ……まちくん」
すぐ後悔することになるとは、つゆ知らず。
「夢じゃ、ないんだよな……」
「うん、好き」
「っ……俺のほうが好きだばか。結婚しよう」
「うんうん…………ん?」
「いや無理だ、待てない。まず襲う。そして俺の子孕んで結婚してくれ」
「順番おかしくないですか!?」
「穂花、愛してる……っ!」
「ぎゃ――――っ!!」
良かれと思ってかけた言葉が、まさか真知に火をつけてしまうだなんて。
頬を朱に染めた真知に押し倒されながら、ふと壁にかけられた時計を見やる。
色んな意味で泣きたくなった穂花は、半ば諦めに入りつつ、瞳を閉じた。
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