【完結】たまゆらの花篝り

はーこ

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こころとからだ㈣

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 どちらともなく胸をふれ合わせ、相手の鼓動が素肌を叩く感触に感じ入る。言葉はなくとも、そこにはたしかな愛が在った。

「……わたしの本音を、いま一度お伝えしましょう」

 おもむろに離される身体。その熱を名残惜しく追って、桜色に色づいたかんばせ、潤んだ瞳を仰ぐ。

「永久など、嫌いです。独りはもう沢山じゃ。わたしは愛しいひとと生きて、共に果てたい……」

 永久を司る神の言葉。ともすれば、己の存在意義さえ否定するものだろう。
 生あることが幸福とは、限らないのだ。

「わたしはもう、ニニギ様の影を追うことは致しませぬ。わたしを愛してくださる方が、ほの様であるから……ほかならぬ貴女様を愛しても、よろしいだろうか……?」
「ふふ……穂花でいいってば。まちくんとさくも、そう喚んでるし」
「……わたしといるときに、ほかの男の話はなさらないで頂きたい」

 拗ねたように尖った唇を、ふに、と押しつけられる。
 失言を咎めているつもりなら、なんといじらしいことだろう。

「けれど……ありがとう。心が驚くほどに凪いでいる。貴女様のおかげです……穂花」
「うん……」
「……ひとつ、我儘を言ってもよろしいか」
「うん?」
「もう一度、貴女様を抱きたい。今度こそ優しく……こころもからだも、本当の意味で、穂花の夫となりたいのです」

 真摯なまなざしに、曇りなど微塵もありはしなかった。

「大丈夫、もう厭じゃないから。べにの好きなようにして?」
「あまり、煽られるな……乱暴こそしないが、手加減致しかねる」
「あっ……ん」

 する……と内腿を撫で上げられては、甘い吐息を抑えきれない。
 紅を知る身体は、ふれられた場所から熱が跳躍伝導し、思考をとろけさせる。

「べに……キスして?」
「っ……貴女様が、お望みならっ……!」

 口付けは、熱情の抱擁を伴って。
 情愛の五月雨は、静かに、あたたかく降り注ぐ。

「ずっと、お傍にいさせてください……心から愛しています……穂花」

 甘い痺れに支配される意識の中、穂花は返事の代わりにまぶたを下ろし、頬笑む。
 頬笑み返す紅の頬を伝った雫は、紅蓮の蕾へとこぼれ落ち、ふわりと、花開かせた。
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