【完結】たまゆらの花篝り

はーこ

文字の大きさ
上 下
40 / 77

こころとからだ㈠ ※R15

しおりを挟む
 ――まるで、鈴にでもなったかのよう。

 肢体の柔らな線をくすぐるささいな刺激にも反応してしまう己の、なんと浅ましいこと。
 鼻にかかった甲高い声が自分のものだなんて、到底信じられない。

「かわいいひと……」

 女を、いやほのを知り尽くした指先であった。
 生娘であったはずの身体もまた、艶かしい草笛の音色を受けて熱を持つ。

「やだ……やだ」
「ふふ……〝もっと〟……ですね?」
「あッ……だめ、べにぃっ!」

 やめてくれという本気の訴えに、彼の神は聞く耳を持たなかった。
 ひときわ強い刺激で、津波のような熱が押し寄せる。
 悲鳴じみた嬌声に、べには秀麗なかんばせを歪めて耐え忍ぶ。苦悶ののちに胸を支配するのは、充足感や征服感といった、打ち震えるほどの快楽だ。

「嗚呼……漸く、わたしを喚んでくださいました。貴女様より頂いた名……わたしの宝物……もっと、わたしをお求めになれば良い……」
「んっ……」

 翠の絹髪が鎖骨をかすめる。
 寄せられた唇が、吸い付くように、甘噛むように、薄紅の花弁で胸許の蕾を無数に彩る。
 咲かせようとしているのか、散らそうとしているのか、もうわからない。

「べに、もうやめて……私、べにを嫌いになりたくない……」

 やっとの思いで紡いだ懇願に、胸許への愛撫がやむ。
 苦しいほどに密着していた裸体がわずかながら離されたことに淡い期待を抱いたのも、つかの間であった。

「なればいつ、愛して頂ける? わたしはいつまで待てばよろしいのか」

 甘やかな睦言は一変。無機質で鋭利な返答が突きつけられる。

「親愛など要りませぬ。寵愛、ただそれのみがわたしは欲しい!」
「ぁあっ……!」

 壊れ物を扱うような慈しみにあふれていた手が、細い手首をぎりぎりと締めつける。
 痛いと叫びたい弱音を噛み殺すほどに、生理的な涙が大粒の琥珀からこぼれる。
 褥を濡らす朝露は、紅へ朱の唇を噛みしめさせた。

「……また、泣かれるのですね。わたしのなにがいけないのですか? わたしは貴女様を傷つけたりしない……傷つけたくないのに……」

 にじむ世界に降る雨。
 ここで初めて、草笛の語尾が曖昧に消え入った。

「わたしは、貴女様が愛おしいだけなのです……涙よりも笑顔が見たい……今宵だって、本当はもっと優しく……抱きた、かった……」

 あぜんとして仰いだ先。穂花の涙をぬぐいながら、紅も涙を流していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18完結】エリートビジネスマンの裏の顔

白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます​─​──​。 私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。 同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが…… この生活に果たして救いはあるのか。 ※サムネにAI生成画像を使用しています

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】

階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、 屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話 _________________________________ 【登場人物】 ・アオイ 昨日初彼氏ができた。 初デートの後、そのまま監禁される。 面食い。 ・ヒナタ アオイの彼氏。 お金持ちでイケメン。 アオイを自身の屋敷に監禁する。 ・カイト 泥棒。 ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。 アオイに協力する。 _________________________________ 【あらすじ】 彼氏との初デートを楽しんだアオイ。 彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。 目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。 色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。 だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。 ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。 果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!? _________________________________ 7話くらいで終わらせます。 短いです。 途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

処理中です...