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茜の蜜語㈠
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「紅がいないなんて、明日は雨?」
口を衝いた言葉に、三拍置いて勢いよくかぶりを振る。
茜に濡れる校舎裏にて、穂花は独り。昼休みに別れて以来、紅と顔を合わせていないのだ。
どんなときも傍を離れず、常人の眼に映らぬのを良いことに教室にさえ居座る付喪神が。
「別に、寂しいわけじゃないし……っ」
鬱陶しいほど傍にいるものだから、いないと調子が狂うだけだ。他意はない。
雑念をも一掃するように、足許の落ち葉を竹箒で掃く。
一瞬後には謎の疲労感に襲われて、盛大な嘆息をもらしたが。
「掃除したり落ち込んだり、忙しいなおまえ」
「ふぇっ!?」
完全なる不意討ちに、文字通り飛び上がってしまう。
淡々とした口調は相も変わらずで、好んで穂花に話しかけてくる人物といえば、ひとりしかいなかった。
「ま、まちくんじゃない……!」
「幽霊でも見るような眼はやめろ」
「ビックリしたんだもん……いま帰りなんだ」
野暮な話だとは内省した。学校指定の通学鞄を提げているのだから。
その辺の不良もどきならばひと睨みで退散させる風格を持つ真知であるが、動ではなく静のひとだ、と穂花は思う。
こう見えて頭脳明晰、定期テストでは不動の学年首位らしい。本人が言わずとも狭い鉄筋コンクリートの中、どこからともなく風の噂は吹き抜ける。
友人や教師から生徒会役員に打診されたこともあると聞くが、先頭を切ってなにかをおし進める性分ではないからと、辞退したとのこと。
「今日は早いんだね。図書室に寄らなかったの?」
これも意外や意外。穂花と話すとき以外は読書と言っても過言ではないほど、本の虫である真知だ。放課後は専ら図書室に入り浸っている。
おまえまで付き合うことはない、というか早く帰れ、とこのときばかりは口うるさくなるので、帰りを別にしたことは記憶に新しい。
口を衝いた言葉に、三拍置いて勢いよくかぶりを振る。
茜に濡れる校舎裏にて、穂花は独り。昼休みに別れて以来、紅と顔を合わせていないのだ。
どんなときも傍を離れず、常人の眼に映らぬのを良いことに教室にさえ居座る付喪神が。
「別に、寂しいわけじゃないし……っ」
鬱陶しいほど傍にいるものだから、いないと調子が狂うだけだ。他意はない。
雑念をも一掃するように、足許の落ち葉を竹箒で掃く。
一瞬後には謎の疲労感に襲われて、盛大な嘆息をもらしたが。
「掃除したり落ち込んだり、忙しいなおまえ」
「ふぇっ!?」
完全なる不意討ちに、文字通り飛び上がってしまう。
淡々とした口調は相も変わらずで、好んで穂花に話しかけてくる人物といえば、ひとりしかいなかった。
「ま、まちくんじゃない……!」
「幽霊でも見るような眼はやめろ」
「ビックリしたんだもん……いま帰りなんだ」
野暮な話だとは内省した。学校指定の通学鞄を提げているのだから。
その辺の不良もどきならばひと睨みで退散させる風格を持つ真知であるが、動ではなく静のひとだ、と穂花は思う。
こう見えて頭脳明晰、定期テストでは不動の学年首位らしい。本人が言わずとも狭い鉄筋コンクリートの中、どこからともなく風の噂は吹き抜ける。
友人や教師から生徒会役員に打診されたこともあると聞くが、先頭を切ってなにかをおし進める性分ではないからと、辞退したとのこと。
「今日は早いんだね。図書室に寄らなかったの?」
これも意外や意外。穂花と話すとき以外は読書と言っても過言ではないほど、本の虫である真知だ。放課後は専ら図書室に入り浸っている。
おまえまで付き合うことはない、というか早く帰れ、とこのときばかりは口うるさくなるので、帰りを別にしたことは記憶に新しい。
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