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艶色の朝㈡
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「朝っぱらからハレンチなぁああ!!」
「はは、そう焦るな。わたしは逃げも隠れもせん。ゆるりと、夫婦の契りを交わそうではないか……のう、我が細君……?」
「ぎぃいいやぁあああ!!」
乙女の矜持などあったものではない。
がむしゃらに拳を突き出して抵抗するも、跳ね起こした上体は満面の笑みとともに肩を押され、もといた場所へ沈み込む。
ばたつく脚に脚が絡み、両手首は布団に縫いとめられてしまう。
見上げるしかない先で蠱惑的な紅蓮の瞳に射抜かれ、ひやりと冷汗が背筋を伝った。
「我が愛しの君は夢散歩を続けられたいご様子。しからば時にわたしを伴われるのも、一興であろう?」
「いえ、すごく学校に行きたいです。今日の授業はなんだったかなぁ!」
「ふふ……我が細君は、ほんにいじらしいお方じゃ」
「私がいつきみの奥さんになったのか教えてもらいたいもんだねぇ紅さん!」
畳みかける穂花に、朝っぱらからいかがわしい発言を繰り返していた神――紅は意味深長な頬笑みのみを返し、束縛を解いた。
「朝餉の用意がととのっているぞ。そなたも身支度を済ませるように」
「普通に起こしてください……」
「ん? 着替えを手伝ってほしいとな。仕方ないのう……」
「起きます着替えますだから出てって私の部屋から!!」
羞恥に赤く、恐怖に青くめまぐるしく顔色を変えながら、部屋の外へ追いやろうとぐいぐい背を押す穂花に、紅はからころと心底愉快げな笑みを響かせた。
「では、いま一度だけ待とう。次に遅れたなら、その身体で赦しを乞うてもらうゆえ――よろしいな?」
まったくもってよろしくない。けれどそんな反論が許される空気でもない。
虎視眈々と獲物を狙う獰猛な紅蓮のまなざしを置き土産に、紅は退室した。
「……あと三分!」
息つく間もなく、穂花は夜着を脱ぎ捨てるやいなや箪笥へ飛びかかった。
すべては、己が純潔を守るため。
「はは、そう焦るな。わたしは逃げも隠れもせん。ゆるりと、夫婦の契りを交わそうではないか……のう、我が細君……?」
「ぎぃいいやぁあああ!!」
乙女の矜持などあったものではない。
がむしゃらに拳を突き出して抵抗するも、跳ね起こした上体は満面の笑みとともに肩を押され、もといた場所へ沈み込む。
ばたつく脚に脚が絡み、両手首は布団に縫いとめられてしまう。
見上げるしかない先で蠱惑的な紅蓮の瞳に射抜かれ、ひやりと冷汗が背筋を伝った。
「我が愛しの君は夢散歩を続けられたいご様子。しからば時にわたしを伴われるのも、一興であろう?」
「いえ、すごく学校に行きたいです。今日の授業はなんだったかなぁ!」
「ふふ……我が細君は、ほんにいじらしいお方じゃ」
「私がいつきみの奥さんになったのか教えてもらいたいもんだねぇ紅さん!」
畳みかける穂花に、朝っぱらからいかがわしい発言を繰り返していた神――紅は意味深長な頬笑みのみを返し、束縛を解いた。
「朝餉の用意がととのっているぞ。そなたも身支度を済ませるように」
「普通に起こしてください……」
「ん? 着替えを手伝ってほしいとな。仕方ないのう……」
「起きます着替えますだから出てって私の部屋から!!」
羞恥に赤く、恐怖に青くめまぐるしく顔色を変えながら、部屋の外へ追いやろうとぐいぐい背を押す穂花に、紅はからころと心底愉快げな笑みを響かせた。
「では、いま一度だけ待とう。次に遅れたなら、その身体で赦しを乞うてもらうゆえ――よろしいな?」
まったくもってよろしくない。けれどそんな反論が許される空気でもない。
虎視眈々と獲物を狙う獰猛な紅蓮のまなざしを置き土産に、紅は退室した。
「……あと三分!」
息つく間もなく、穂花は夜着を脱ぎ捨てるやいなや箪笥へ飛びかかった。
すべては、己が純潔を守るため。
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