お菓子配りの魔女と落ちこぼれ悪魔〜転生薬術師、ノリでひろった美少年が純情インキュバスでいろいろ詰む〜

はーこ

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本編

*72* 展開がジェットコースター

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「ガウ、ガウ」

 絶句していると、なにやらおちびちゃんが、わたしの腕からもぞもぞ抜け出した。

 それから翼をパタパタと動かして地面に降り立った、次の瞬間だった。

「……グゥゥ」
 
 低いうなり声をあげたおちびちゃんを、光がつつみ込む。

「えっ……なにっ、何事!?」

 わたしよりちっちゃかったワイバーンのシルエットが、ぐぐ……と大きくなってゆく。

 それからはもう、あっという間で。

 光が消え去ると、わたしが見上げるほど──体長三メートルはくだらないクリムゾンレッドのワイバーンが、目の前にいた。

 おどろくべきことは、それだけじゃなくて。

『ふぅ……これで、やっとお話ができます』
「んっ? あれ?」

 女の子にしては低くて、男の子にしては高い、中性的な、聞き慣れない声がした。

『あ、こっちです、こっち。ユウヒが話してます』

 わたしたちのほかに、だれもいないよなぁなんてきょろきょろしてたら、視界に、ワイバーンの顔が入り込んでくる。

 ……ちょっと待ってよ。まさかとは思うけど。

「きみが……わたしに、話しかけてるの?」
『はいです』

 エメラルドの瞳を細めたワイバーンが、地面に伏せ、わたしの目の前で、長い首を垂れた。

『あらためて、はじめまして。ユウヒといいます』
「ユウヒ……? あれ、おちびちゃんは……?」
『ユウヒです。おしゃべりできて、うれしいです、あるじさま』

 クゥン……と鳴いたワイバーンが、甘えるように、わたしのほほに鼻先をこすりつけてくる。

「えっ? わたしが、あるじさま? なんで!?」
「なに? リオ、どうしたの?」
「だってこの子がおちびちゃんで、わたしのことあるじさまって……!」
「リオ。こちらのワイバーンさんが、そう言っているのですか?」
「そうなの? 俺には、だれの声も聞こえないけど」
「……うそ」

 ノアだけじゃない。「僕も聞こえません」と言って、エルも首を横にふった。

(この子の声が聞こえない? こんなにはっきり聞こえるのに?)

 信じられない気持ちで言葉をうしなっているとき、はっと気づいた。

 たしかに、目の前のワイバーンは、口を一切動かしていなかった。

 話しかけてくる『声』も、『契約』をするときに聞こえた、脳内に直接ひびくような不思議なものだった。

 わたしたち三人のやりとりを見ていたワイバーンが、なにかを思い出したように、ぴょこん、と頭を持ち上げる。

『そういえば! こっちのすがただと、あるじさまにしか、ユウヒの声きこえないんでした。えーっと、んーと……』

 ワイバーンが、うんうんと長い首をひねっていたと思ったら、またしても、そのからだを光がつつみ込む。こんどは朝の陽射しみたいに、淡い光だった。

「これで大丈夫かな? あー、あー。ユウヒの声、聞こえますかー?」
「…………はぇっ」

 変な声が出た。いやだって仕方ないじゃん。

 まばたきをしたら、なんか目の前に、赤い髪の美少年があらわれていたんだぞ。

 さすがのノアたちも、限界まで目を丸くして、おどろきを隠せないでいた。

「ちいさなワイバーンさんがいなくなったら、すこしおおきなワイバーンさんがあらわれて、お次はこちらの少年……」
「もしかして、おまえ……おちび?」

 状況的にそうとしか考えられないんですけどね。

 あざやかな赤い髪の美少年が、エメラルドの瞳をキラキラさせて、へにゃあっとほほをゆるめた。

「そうですよう! おちびはユウヒなのです!」
「ワイバーンって、人間に化けられるもんなの?」
「ちがいます、ユウヒはワイバーンじゃないです。れっきとした、ドラゴンです!」
「は?」

 むんっ! と胸をはってノアに反論したワイバーン……もといドラゴンのおちびちゃん、じゃなくてユウヒが、ぎゅむっとわたしに抱きついてきた。

「あるじさまがお世話してくれたちっちゃいのも、大怪我を治してくれたおっきいのも、ユウヒです!」
「……ふぁい?」

 なんか、すごく衝撃的なことをサラッと暴露された気がする。

「待って。…………ブルームに来る途中で会ったあの子も、きみなの?」
「はいです! ユウヒはあるじさまにお礼がしたくて、追いかけてきたのです!」
「……マジで?」

 おちびちゃんとあのワイバーン、なんか似てるなぁと思ったら、ご家族じゃなかった。ご本人様だった。

 しかも正しくはワイバーンではなくて、ドラゴンだったらしい。

「あるじさまがユウヒのあるじさまになってくれたので、これから、ずっといっしょですぅ~」

 一瞬女の子にも見間違えてしまう超絶美少年が、まばゆい笑顔でほっぺをすりすりしてくる。

 ……この美少年のあるじさまが、わたし?

「なっ、なっ……うそでしょーっ!?」

 展開がジェットコースターなんですが!?
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