お菓子配りの魔女と落ちこぼれ悪魔〜転生薬術師、ノリでひろった美少年が純情インキュバスでいろいろ詰む〜

はーこ

文字の大きさ
上 下
12 / 100
本編

*11* かわいいは世界を救う

しおりを挟む
「今日はこれからどうする? またポーション作る?」
「うん? あ、今日はポーション作りお休みしようと思うの。ギルドに顔出して、薬草採取クエストを回ろうかなって」
「つれてって」
「いいとも~って、へっ?」
「俺もついてく。人手が多いほうがいい。手伝う」

 うっかりうなずきそうになったけど、ふと我に返る。

 いそいそと居住まいをただし、ベッド上で正座。

 するとなにを思ったのか、ノアもおなじように正座して向き合った。

「……どうせ帰る場所もないし、リオについていきたい」
「あのね、ノア。真面目な話をすると、ポーションを卸す取引先を一からさがさなきゃいけない状況なの。定期的に買い取ってくれるところを見つけるまで、長旅になるかもしれない。ノアはそれでもいいの?」
「いい。迷惑にならないようにする。俺、リオの役に立ちたいんだ。だからつれてって。おねがい……」

 伏せがちなサファイアの瞳は、いまにも泣き出してしまいそうだ。

「不安にさせちゃったね。大丈夫だよ」
「……えっ」

 ふっと声をやわらげて笑いかけたら、呆けたようにノアがまばたきをした。ふふ、また瞳がこぼれちゃいそう。

「わたしもゴタゴタに巻き込んじゃったからね。ノアがやりたいこと、応援してあげたいって思ってたの」
「それじゃあ……!」
「うん、いっしょに行こうか」
「リオ、リオ……りぉお~……!」
「あらー!」

 緊張の糸が途切れたんだろうか。またもや、ノアがボロボロと泣き出してしまった。

 とっさに頭をなでちゃったんだけど、まって、これってまずいのでは?

「ごめんノア! 嫌だったよね!」

 昨日はわたしにさわられて不機嫌そうにしてたし、馴れ馴れしすぎたかも。

「嫌じゃない!」
「へっ……」

 でも、右手を引っ込めようとすると、引き戻される。

 ぽん、とわたしの右手を頭に乗っけたノアが、へらりとほほをゆるめた。

「嫌じゃない……リオはやさしくしてくれる。俺は、リオにならさわられてもいい。リオはとくべつ……」

 ノアはほほを紅潮させたまま、きゅっと目をつむって、わたしの手のひらに頭をこすりつけてくる。

 なでて、なでてとねだる子犬みたいに。

「なんだこのかわいい生き物は。世界救えるな」

 胸がキュンキュン通り越して、ギュンギュンするんだが。

 それから、まんまとなでくり回させられたことは、言うまでもない。

「そうだ、いっしょにクエスト回るならさ、ひとつきいてもいい?」
「なんでもきいて」
「ノアってさ……冒険者登録、してる?」

 ふと思い出したことを質問をしてみれば、ご満悦顔でなでられていたノアくんが、まじりけのない笑顔でにっこりと答えました。

「してない」

 あはは! マジですか!


  *  *  *


「というわけで昨日ぶりにやってきました、冒険者ギルドです!」

 別名黒レンガ会。その名のとおり、どの街でも共通して黒いレンガ造りの建物だ。

 ちなみに商団ギルドの別名は赤レンガ会。わかりやすくていいよね。

「クエストを回るのに、冒険者登録が必要なのか……知らなかった」
「ひよっこ冒険者が、上級モンスター討伐とか受注したら大変だからね。冒険者もクエストもランク管理して、ある程度ランクを上げないと高難度クエストを受けられないようになってるの」
「へぇ……ポーションの買い取りも冒険者ギルドでやってるんだったよね。商団ギルドじゃなくて?」
「日常生活に必要な流通ルートは商団ギルドが管理してるけど、ポーションとか医薬品に関しては、冒険者ギルド管理なの。需要の問題でね」
「言われてみれば。冒険者は怪我が絶えないもんな」
「そういうこと。さっ、行こっか」

 ここは先輩として、たよれるところを見せなきゃね!

 はりきって木製のドアを押しひらくわたしは、このあと起こる事件のことなんて、知るよしもなかった──
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...