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本編
*11* かわいいは世界を救う
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「今日はこれからどうする? またポーション作る?」
「うん? あ、今日はポーション作りお休みしようと思うの。ギルドに顔出して、薬草採取クエストを回ろうかなって」
「つれてって」
「いいとも~って、へっ?」
「俺もついてく。人手が多いほうがいい。手伝う」
うっかりうなずきそうになったけど、ふと我に返る。
いそいそと居住まいをただし、ベッド上で正座。
するとなにを思ったのか、ノアもおなじように正座して向き合った。
「……どうせ帰る場所もないし、リオについていきたい」
「あのね、ノア。真面目な話をすると、ポーションを卸す取引先を一からさがさなきゃいけない状況なの。定期的に買い取ってくれるところを見つけるまで、長旅になるかもしれない。ノアはそれでもいいの?」
「いい。迷惑にならないようにする。俺、リオの役に立ちたいんだ。だからつれてって。おねがい……」
伏せがちなサファイアの瞳は、いまにも泣き出してしまいそうだ。
「不安にさせちゃったね。大丈夫だよ」
「……えっ」
ふっと声をやわらげて笑いかけたら、呆けたようにノアがまばたきをした。ふふ、また瞳がこぼれちゃいそう。
「わたしもゴタゴタに巻き込んじゃったからね。ノアがやりたいこと、応援してあげたいって思ってたの」
「それじゃあ……!」
「うん、いっしょに行こうか」
「リオ、リオ……りぉお~……!」
「あらー!」
緊張の糸が途切れたんだろうか。またもや、ノアがボロボロと泣き出してしまった。
とっさに頭をなでちゃったんだけど、まって、これってまずいのでは?
「ごめんノア! 嫌だったよね!」
昨日はわたしにさわられて不機嫌そうにしてたし、馴れ馴れしすぎたかも。
「嫌じゃない!」
「へっ……」
でも、右手を引っ込めようとすると、引き戻される。
ぽん、とわたしの右手を頭に乗っけたノアが、へらりとほほをゆるめた。
「嫌じゃない……リオはやさしくしてくれる。俺は、リオにならさわられてもいい。リオはとくべつ……」
ノアはほほを紅潮させたまま、きゅっと目をつむって、わたしの手のひらに頭をこすりつけてくる。
なでて、なでてとねだる子犬みたいに。
「なんだこのかわいい生き物は。世界救えるな」
胸がキュンキュン通り越して、ギュンギュンするんだが。
それから、まんまとなでくり回させられたことは、言うまでもない。
「そうだ、いっしょにクエスト回るならさ、ひとつきいてもいい?」
「なんでもきいて」
「ノアってさ……冒険者登録、してる?」
ふと思い出したことを質問をしてみれば、ご満悦顔でなでられていたノアくんが、まじりけのない笑顔でにっこりと答えました。
「してない」
あはは! マジですか!
* * *
「というわけで昨日ぶりにやってきました、冒険者ギルドです!」
別名黒レンガ会。その名のとおり、どの街でも共通して黒いレンガ造りの建物だ。
ちなみに商団ギルドの別名は赤レンガ会。わかりやすくていいよね。
「クエストを回るのに、冒険者登録が必要なのか……知らなかった」
「ひよっこ冒険者が、上級モンスター討伐とか受注したら大変だからね。冒険者もクエストもランク管理して、ある程度ランクを上げないと高難度クエストを受けられないようになってるの」
「へぇ……ポーションの買い取りも冒険者ギルドでやってるんだったよね。商団ギルドじゃなくて?」
「日常生活に必要な流通ルートは商団ギルドが管理してるけど、ポーションとか医薬品に関しては、冒険者ギルド管理なの。需要の問題でね」
「言われてみれば。冒険者は怪我が絶えないもんな」
「そういうこと。さっ、行こっか」
ここは先輩として、たよれるところを見せなきゃね!
はりきって木製のドアを押しひらくわたしは、このあと起こる事件のことなんて、知るよしもなかった──
「うん? あ、今日はポーション作りお休みしようと思うの。ギルドに顔出して、薬草採取クエストを回ろうかなって」
「つれてって」
「いいとも~って、へっ?」
「俺もついてく。人手が多いほうがいい。手伝う」
うっかりうなずきそうになったけど、ふと我に返る。
いそいそと居住まいをただし、ベッド上で正座。
するとなにを思ったのか、ノアもおなじように正座して向き合った。
「……どうせ帰る場所もないし、リオについていきたい」
「あのね、ノア。真面目な話をすると、ポーションを卸す取引先を一からさがさなきゃいけない状況なの。定期的に買い取ってくれるところを見つけるまで、長旅になるかもしれない。ノアはそれでもいいの?」
「いい。迷惑にならないようにする。俺、リオの役に立ちたいんだ。だからつれてって。おねがい……」
伏せがちなサファイアの瞳は、いまにも泣き出してしまいそうだ。
「不安にさせちゃったね。大丈夫だよ」
「……えっ」
ふっと声をやわらげて笑いかけたら、呆けたようにノアがまばたきをした。ふふ、また瞳がこぼれちゃいそう。
「わたしもゴタゴタに巻き込んじゃったからね。ノアがやりたいこと、応援してあげたいって思ってたの」
「それじゃあ……!」
「うん、いっしょに行こうか」
「リオ、リオ……りぉお~……!」
「あらー!」
緊張の糸が途切れたんだろうか。またもや、ノアがボロボロと泣き出してしまった。
とっさに頭をなでちゃったんだけど、まって、これってまずいのでは?
「ごめんノア! 嫌だったよね!」
昨日はわたしにさわられて不機嫌そうにしてたし、馴れ馴れしすぎたかも。
「嫌じゃない!」
「へっ……」
でも、右手を引っ込めようとすると、引き戻される。
ぽん、とわたしの右手を頭に乗っけたノアが、へらりとほほをゆるめた。
「嫌じゃない……リオはやさしくしてくれる。俺は、リオにならさわられてもいい。リオはとくべつ……」
ノアはほほを紅潮させたまま、きゅっと目をつむって、わたしの手のひらに頭をこすりつけてくる。
なでて、なでてとねだる子犬みたいに。
「なんだこのかわいい生き物は。世界救えるな」
胸がキュンキュン通り越して、ギュンギュンするんだが。
それから、まんまとなでくり回させられたことは、言うまでもない。
「そうだ、いっしょにクエスト回るならさ、ひとつきいてもいい?」
「なんでもきいて」
「ノアってさ……冒険者登録、してる?」
ふと思い出したことを質問をしてみれば、ご満悦顔でなでられていたノアくんが、まじりけのない笑顔でにっこりと答えました。
「してない」
あはは! マジですか!
* * *
「というわけで昨日ぶりにやってきました、冒険者ギルドです!」
別名黒レンガ会。その名のとおり、どの街でも共通して黒いレンガ造りの建物だ。
ちなみに商団ギルドの別名は赤レンガ会。わかりやすくていいよね。
「クエストを回るのに、冒険者登録が必要なのか……知らなかった」
「ひよっこ冒険者が、上級モンスター討伐とか受注したら大変だからね。冒険者もクエストもランク管理して、ある程度ランクを上げないと高難度クエストを受けられないようになってるの」
「へぇ……ポーションの買い取りも冒険者ギルドでやってるんだったよね。商団ギルドじゃなくて?」
「日常生活に必要な流通ルートは商団ギルドが管理してるけど、ポーションとか医薬品に関しては、冒険者ギルド管理なの。需要の問題でね」
「言われてみれば。冒険者は怪我が絶えないもんな」
「そういうこと。さっ、行こっか」
ここは先輩として、たよれるところを見せなきゃね!
はりきって木製のドアを押しひらくわたしは、このあと起こる事件のことなんて、知るよしもなかった──
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