お菓子配りの魔女と落ちこぼれ悪魔〜転生薬術師、ノリでひろった美少年が純情インキュバスでいろいろ詰む〜

はーこ

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本編

*3* ノリで美少年をひろう

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「ふぅ……なんとか切り抜けた」

 こういうのは、うろたえたらおしまいだ。隙を見せた瞬間にヤられる。

 何事もスマートに。必要性のない供給はノーセンキュー。

「思わぬ道草食っちゃったけど……まだ間に合うでしょ」

 カチリと蓋をしめた懐中時計をローブにしまって、ひと息つく。

 あんなハプニングが、そうそう立て続くわけないしね。



 そんなふうに思っていたことが、わたしにもありました。



 ──ガッ。


「っとぉ!?」

 物思いにふけっていたら、なにかに足を取られて大きくよろめいた。

 とっさにふんばってきょろきょろ見わたすけど、目の前にはなにもなくて。

 でも、あった。いや、いた。

 視線を下ろした足もとに、うずくまった黒い物体が。

「…………人?」

『それ』は雨上がりの浅い水たまりに顔を突っ込んで、ぴくりとも動かない。

 かがみ込むついでに肩へ手をかけ、ごろりと仰向かせると、泥まみれの黒髪が地面に散らばった。

「ふわーお。生きてんの? これ」

 首すじに指を当ててみる。まだあたたかい。脈は正常。よし、生きてるな。

 推定種族、ヒト。
 身長、わたしより上背があるかどうか。
 性別、見たところ男子。
 年齢、十四~十五歳?
 なぜ行き倒れているのか、不明。

「きみ、こんなとこで寝てたら風邪引くぞ? 起きろー、おーい」

 ぺちぺちとほほを叩いて刺激を与えてみるけど、反応なし。気絶しているみたいだ。

「うーん……どうしよ」

 ここで、ふたつの選択肢があらわれる。

 ひとつ、少年を助けるか。
 もしくは、見捨てるか。

 ちなみに補足すると、現在は取引先の娼館に『商品』を届ける道中だ。約束の時間は間近だったりする。

 で、この取引を逃したら、しばらくパンを買えない生活とこんにちはする羽目になる。

「まぁ……今回は運が悪かったってことで」

 わはは、とひとしきり笑い飛ばしたわたしは、立ち上がって。

「──極貧上等! 行くぞ少年っ!」

 少年の足もとから頭のほうへ回り込むと、脱いだローブを適当に引っかけて、ついでに少年の腕も肩に引っかける。

「このまま見捨てたら薬術師やくじゅつしが廃るってもんよ! どっこいせー! あはっ、わたし人間ひろってるー! ウケるー! アハハハハッ!」

 担ぎきれてない少年をずりずりと引きずりながら、ケラケラと来た道をもどるわたしのすがたは、道行く人からしたらドン引きものだったろう。

 しょうがない。なんたって、嵐に自家栽培の薬草をめちゃめちゃにされ、モンスターの出没する森に泣く泣く薬草採取の遠征に行った帰り、五徹目の身だ。

 なにを血迷って、爆笑しながら見ず知らずの人間をひろったのか?

 その答えをここに示そう。

 ──早い話が、ナチュラルハイってやつ!
 
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