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第1章『リンゴンの街編』

第16話 えがおはじける!

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「じゃあ……僕たちは、ともだち? ともだちなら、シュシュって、呼んでもいい?」

「あ、あらためてそう言われると、なんか……」

「シュシュ」

「ひゃっ!」

「ねぇ、僕たちともだちなんだよね? シュシュ」

「そんなに呼ばれたら、は、恥ずかしい……!」

「ほんとだ、耳が真っ赤だ」

「言わなくていいですっ!」

「シュシュ、僕もね、きみにつたえたいことがあったんだ」

「う……」

「僕のこと見つけてくれて、ありがとう。怖がらないで、僕のことを見てくれて、ありがとう……こんどは、僕がシュシュの力になりたいよ。いっしょに行こう?」

「い、いまそれを言うんですかっ! うぅ……ソラくんが、そうしたいなら」

「ありがとうシュシュっ!」

「ひょえっ!?」

 思わず腕いっぱいにハグをしたら、ひっくり返ったような声がひびいた。

「く、くるし……です……」

「あぁっごめん! 鬼化したままだった! これだと力加減が難しくて……大丈夫!?」

 ひたいの角を引っ込めながら、あわてて力をゆるめる。
 でもこれって、ハグしてるっていうか、ただ腕でかこってるだけのような気が……もっとぎゅっとしたいんだけど、だめかなぁ……

 べちんっ!

「いたぁっ!」

「ウ! ウゥッ!」

「トッティ!? ごめん、離れるからちょっと待って、うわーっ!」

 いけない。じぶんの世界に入りすぎて、トッティの存在を忘れちゃってた。
 シュシュが苦しそうにしてたのもあって、すごく怒ってる……! おでこをツルではたくだけじゃなくて、ビュンビュン追撃が飛んでくるだけど!?

「ビー」

 そんな僕たちの攻防戦を、つぶらな瞳をもっと丸くして見つめていた子がいた。
 待って、いつもの定位置(シュシュの背中)にいるトッティはよしとして、枝にのってるのって……!

「──『パプル』!?」

 これはもしかしなくても、クリベリン邸からつれてきちゃったパターンかなっ?
 当の『パプル』も「ビヨン?」と瞳をぱちくりさせてて、なんで僕があわてているのか、わかってないんだろう。

「ねぇシュシュ、妖精って一般人がお世話しちゃいけないんだよね?」

「そこがちょっと複雑なところで。ふつうなら、元いた場所に放してあげるのが無難なんですけど」

「どこからきたのか、おぼえてる?」

「ビィ??」

「おぼえてないみたいです! 困ったな……このままこの子を放しても、また『スライム』と間違えられて、つれてかれたりしちゃわない?」

「つれてかれるかもですねぇ……精霊や妖精はモンスターの区分に入らないので、『モン・シッター』じゃどうにもできませんし、『テイマー』の対象範囲外でもあるんですが」

「ですが?」

「精霊や妖精といえば、『召喚士』の専門分野です。シュシュは『白召喚士コーラー』と『黒召喚士サモナー』の資格ももってるので、妖精を保護する権限があります。あ、これがギルド認定バッジです」

 なんでもないように言いながら、オーバーオールのポケットを指さすシュシュ。
 うん、あのね? 『お仕事募集中!』ってポップな広告だと思ってたけどね、まさかデコレーションしてた白と黒の星が、召喚士の認定バッジだとか思わないじゃない?

「『テイマー』だけじゃなかったんだ……」

「人外みんな守備範囲です」

「有能すぎだね! じゃあ『パプル』のことも、これで解決……」

「ストップ! たしかにシュシュは『どうにか』できますけど、『どうしたいか』を決めるのは、この子です!」

「そ、そっか! そうだよね」

 いけない、『パプル』の考えもきかないで、勝手に話をすすめちゃうところだった。
「僕の気持ちも考えてよ!」って、さっきムキになってたのはだれなの……はぁ、いたたまれない。
 一方で、やっぱりシュシュはすごいなって、尊敬する。

「ね、『パプル』」

「ビビ?」

 腰をかがめて、トッティの枝にのった『パプル』と目線を合わせる。
 まあるい瞳が、不思議そうに僕を見上げてきた。

「きみに嫌なことをしてくるヒトは、もういないよ。きみは自由だ」

「好きなところに行っていいんです。キミが『やりたいこと』を教えてください。シュシュたちが、お手伝いします」 

「ウー!」

 シュシュ、トッティも、それぞれの言葉で話しかける。
 ぐるっと僕たちを見まわした『パプル』は、それから。

「ビヨヨンッ!」

 ぽむんっとはずんで、僕たちのほうへ飛び込んできた。
 さいっこうに、はじけた笑顔で!
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