【R18】たまゆらの花篝り〜風雷の香〜

はーこ

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本編

喪失の記憶㈢ ※R18

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「……あっ、あ、あぁっ……」

 夜の静寂をふるわせるおのれの喘ぎ声で、穂花ほのかは意識を取り戻した。
 ぱちゅん、ぱちゅんと、あられもない水音が、下半身にまとわりついている。
 馬乗りになった青年が、中性的な顔立ちに見合わぬ逸物を穂花の胎内へ埋め、小刻みに律動しているためだ。

「んっ……姉様、またイッちゃったの? 厭らしくて、可愛い表情……もっと見たいな」
「ひぁあっ」

 過ぎた快感は、時として拷問である。
 しとねへ押し倒されてからというもの、寝間着を剥ぎとられ、あっという間に快楽へ突き落とされた穂花の記憶は、ところどころがぷつりと途切れていた。
 絶頂からおりてくることができないまま、ただただ、揺さぶられ続けるしかない。

「あっ、あっ……あお……だめ、あおぉっ……!」

 まただ。また、とてつもない〝波〟が押し寄せる。
 どうにも堪らなくなった穂花は、息も絶え絶えの中、余力を振り絞って身をよじる。
 だが、男と女、両者の力の差は歴然だ。
 それも、あおの真の姿はかつて葦原中津国あしはらのなかつくに最強と謳われた武神、建南方神タケミナカタノカミなのだ。
 タケミナカタは、怪力の水神としても知られている。

「おっと……だめなのは、姉様のほうでしょ? 僕と遊んでる途中なのに、逃げちゃだぁめ」

 穂花が健気にも逃げ出そうとするので、かえって蒼の愛欲が刺激された。これは愛ゆえの加虐心とも言い換えられるだろう。
 這這の体で布団から抜け出そうとする穂花の腰を、蒼はくすくすと笑い声をこぼしながら、しなやかな腕で絡め取ってしまう。
 いとも容易く引きずり戻された穂花の裸体は、うつ伏せの状態で布団へ沈められた。

「おしおき、だよ?」
「っひ……!」

 背後から、甘く危険なささやきが、耳朶へ吹き込まれる。
 直後、身を強ばらせた乙女のからだへ、ぱんっと腰が打ちつけられた。

「んぁああっ!」

 花唇を押しひらき、一瞬ではらの奥まで打ち込まれた熱杭に、穂花の視界は白く明滅した。

「んっ……姉様、僕が挿入はいると、膣内なかがキュッて締まるよね……きもちいい……」

 後ろから穂花を貫いた蒼は、吐息をもらし、折り重なるように穂花の背へ密着した。

「だめ、あお……うごいちゃ、だめ……」

 これから起こり得ることを、穂花は想像ができてしまった。だからこそ、懇願する。

「うん、わかってる。……姉様のお望みどおり、いーっぱい、動いてあげるね?」

 そんな切実な懇願も、蒼を興奮させる材料にしかならなかったのだが。

「っ、だめ、これ以上は、いやっ……んぁっ、やっ、あぁんっ!」

 必死の抵抗もむなしく、静止の言葉はおのれの嬌声に掻き消えた。
 ぐちゃっ、ぐちゃっと、泥濘を掻き混ぜるような律動が再開したのだ。

 人型をしてはいるものの、鋭い二本角と牙を持ち、水神たる蛇の面影が強く残る蒼との情事は、生半可なものではなかった。
 はちきれんばかりの陽根が、いぼのような無数の突起でびっしりと覆われている。その凹凸で、膣壁のひだを根こそぎ擦りあげられるのだ。

「ひぅっ、や、それ、だめ、あっ、あっ、あんっ」
「きもちい、きもちいね、姉様?」

 絶えず怒張を抜き差しされ、蜜壺を満たした愛液を掻き混ぜられる。そのたびに、しとどに濡れそぼった花唇が涎を垂らし、混ざり合った体液が布団に飛び散る。

「んぁっ、だめ、わたし、もうだめぇ、あんっ」
「っは……すごい、締まるっ……子袋の入り口が、僕に吸いついてくるよ、姉様っ……はぁっ、たまらないっ……」

 ぐちゅん、ぐちゅん、ぐちゅん。
 蒼も快感に声を上ずらせている。そして恍惚とした表情で、後ろから一心不乱に穂花の膣内を突き続けるのだ。

「ひゃあっ! あっあん、や、はげしっ、あんっ、あんっ」
「僕、もうっ……姉様、だすね? 姉様の子袋に、僕の子種、いっぱい……」
「だめだめっ、ナカはだめっ……あっ!」
「はぁっ……んっ……射精る……っ!」
「だめ、だめなの…………いやぁあああんっ!」
「姉様、姉様っ…………んくっ……!」

 ぐちゅん! と激しく腰を打ちつけられた次の瞬間だった。子宮口へとめり込んだきっさきがぜ、びゅるると熱飛沫を迸らせる。

「あぅ……なか、あつい、あついぃ……んぅう、んんっ」

 おのれの膣内なかをまたたく間に満たす精液に、穂花はとっさに枕へ顔を埋め、身を絶頂にわななかせながらも嬌声を押し殺した。

「……はーっ、はーっ……姉様、すごい、きもちい……んっ、あっ、あぁっ……」

 穂花の膣内で欲望を解き放ってもなお、蒼の絶頂は終わらなかった。吐精の量が、時間が、常人の比ではないのだ。
 穂花へぴたりと密着した蒼は、ビクビクと身をふるわせ、喘ぎ声をもらしながら、ゆるゆると腰を動かして、穂花の膣内で陽根を扱く。

「んっ……はぁあっ……!」

 最後にぶるりと身震いをし、ひときわ強い絶頂とともに吐精する蒼。おびただしい子種が、どぷりと穂花の子宮へ直接注ぎ込まれる。

「……は、は……ふふ、いっぱい、射精ちゃった……んん、姉様、好き……すきぃ」

 蒼は荒い呼吸をととのえると、甘えた声をもらした口で、やわく穂花の耳を食む。その腰は、子種を膣壁へこすりつけるかのごとく、ゆるゆると動き始める。
 そうした蒼のからだがどんっと突き飛ばされたのは、その直後のことだ。

 吐精の快感、最愛の者と肌を合わせる充足感。
 多幸感に包まれていた蒼は、頭から冷水をかぶったかのように現実へ引き戻された。

「……姉様? どうしたの?」

 なにが起きたのか、蒼はすぐに理解できなかった。
 まさか、突き飛ばされたなど。誰よりも愛しい穂花から、拒絶されたなど。

 幼い少年のごとくきょとんと首をかしげる蒼の目前で、布団に肘をつく穂花。どろりとした白濁液が花唇から垂れ、股をつたう感覚に唇を噛みしめながら、ぐっと下腹部に力を込め、上体を起こした。

「もう……やめようよ、蒼」
「やめる……? なんで? きもちよくなかった?」
「そうじゃなくて。こんなこと続けても、なんにもならないよ」
「ううん、続けなきゃ。いっぱいしなくちゃだめ。姉様を孕ませるには、もっともっと、僕の子種を注がないと……」
「やだ……私、生みたくない」
「なんでッ……!」
「きいて、蒼!」

 穂花に拒絶された。絶望にも似た心境で身を乗り出す蒼だけれども、力任せに穂花の手首をさらう寸前、名を叫ばれて思考停止する。

「蒼がなにをしようとしてるのか、いい加減、私だって、わかるよ……」

 穂花の脳裏をよぎるのは、学校で綺羅きらに抱かれたときのことだ。あのときも、すこし手酷いくらいに好き放題をされた。
 前後不覚になるほど穂花を快感の底に突き落とした後、綺羅がなにをしたか。それは。

「私を抱いて……私の神気に、蒼の神気を馴染ませてたんだよね。
「姉様……」

 何事か言いかけた蒼が、口をつぐむ。その沈黙は、肯定だ。
 蒼は、みずからも天孫の寵愛を巡る〝誓約うけい〟に身を投じようとしていたのだ。
 だがそれは、穂花にとって、大切な存在が命を投げうつ様を目の当たりにしたことと同義。

「私だって、蒼がだいすきだよ……危険なことはしてほしくないの。だからこそ、蒼の赤ちゃんは生んであげられない……ごめんね」

〝誓約〟への参加を乞う蒼の意思は、まだ天に認められてはいない。まだ間に合う。まだ。
 すがる思いで、穂花は蒼を突き放す。大事だから。
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