【R18】御刀さまと花婿たち

はーこ

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本編

*4* 湯浴み ※R18

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 脱衣所の鏡に、艷やかな黒髪の少女が映り込む。
 ぱっちりと胡桃くるみのように大きい瞳は、紫水晶のよう。
 あらためて目にする、鼓御前つづみごぜん自身のすがただ。

「濡れるのがこわいなら、着たままでいいよ」

 鼓御前の帯をほどき、器用に着物を脱がせた葵葉あおばは、そういって肌襦袢はだじゅばんのみを残し、自身も肩から着物を落とした。

 かくして湯気の立ちこめる浴室に、葵葉とふたりきり。

「熱くないか?」
「へいきです」

 葵葉が手にした桶で湯船から湯をさらい、そっと鼓御前のからだにかける。
 そのたび、肌襦袢ごしにじんわりと熱がひろがる感覚を、鼓御前もしだいに受け入れるようになっていた。
 髪を濡らすときが一番こわかったけれど、葵葉が顔にかからないよう手のひらで覆ってくれたので、乗りきることができた。

「ふふっ」
「どうしたんだよ、いきなり」
「葵葉にふれられると、うれしくなってしまいます」

 それもこれも、長らく離ればなれだったからなのかもしれないが。

「もっと、ふれてくださいな」

 むかしのように、いっしょにいたい。
 陽だまりにつつまれたような心地の鼓御前の背後で、息を飲む気配がある。

「そうだな……ちゃんと、洗ってやらないと」

 ぼそりと独りごちた葵葉が、華奢なからだに腕を絡みつかせ、右の手のひらで、やわらなふくらみをつかんだ。

「ひゃあっ! あ、葵葉?」
「だいじょうぶだよ。リラックス……力を抜いて。緊張をほぐすだけだから」
「そうなの? ごめんなさい、変な声出しちゃって……」
「いいや?」

 なんだか恥ずかしくて居たたまれない鼓御前とは裏腹に、葵葉はどこか、たのしそうだ。

「俺はあねさまの声……もっと聞きたいな」

 その声が可笑しげに震えたかと思えば、やわやわと、胸のふくらみをほぐされる。

「……んっ」

 すると不思議なことに、葵葉の手の動きに合わせて、喉の奥からひとりでに吐息がもれるではないか。

「んんっ……あお、ば」
「どう? 姉さま」
「くすぐったいです……それに、じんじん、します……」
「よかった。それが気持ちいいってことだよ」
「きもち、いい……これが? そういえば、ひなさんも、お風呂は気持ちいいものだと言ってました」
「そう。だから、もっと気持ちよくなっていいんだよ、姉さま」
「……あぁっ!」

 葵葉の指先が、ふくらみの中心をたわむれに引っかく。

「ほら見て。ここ、硬くなってふくらんでる」
「やだ、はずかしい……」
「姉さま、真っ赤だ。かわいい……」
「やぁ、んっ」

 たまらなくなって俯くも、それは葵葉を高ぶらせる材料でしかなかった。

「もっと気持ちいいことしてあげる。俺の手でもっともっとかわいくなって、姉さま……」
「葵葉、待っ……んっ、んんっ、あっ」

 襦袢越しにふれていた手のひらが、いつしかあわせから侵入し、柔肌をじかに弄る。
 ふくらみを揉みしだきながら、芯をもった中心を、くにくにと執拗に捏ね回すのだ。

「そこ、だめ、あっ、あっ、やぁんっ」
「姉さまの肌、俺の手に吸いつく……やわらかくて気持ちいい……はぁっ」

 やがて葵葉の呼吸も荒くなり、牙をむき出した獣のごとく、桜に色づいた首筋へ噛みついた。
 同時にきゅうっと、胸の蕾を摘ままれて。

「んんん……っ!」

 ほのかな痛みと、深い熱。
 遅れて、脱力感。
 葵葉の手のひらが口を覆っていなければ、かん高い悲鳴が浴室に響きわたっていたことだろう。

「っはは……もしかして、胸だけでイッたの?」
「い……?」
「いっぱい気持ちよくなれたな」
「それは……上手にお風呂に入れた、ということでしょうか?」
「ふはっ!」

 純粋な疑問を投げかけただけなのに、吹き出されてしまった。

「そうそう、上手にできてえらいな、姉さま」

 それだけでなく、幼子よろしく頭をなでられるなんて。

(姉として、一生の不覚です……)

 とはいえ、反論する気力はなかった。
 心地よい疲労につつまれた鼓御前の脇へ手を差し入れ、からだを持ち上げた葵葉は、ひざの上に乗せ、うっとりと蕩けた顔を寄せる。

「姉さま、じっとして……」
「んっ……」

 かすれ声でささやいた唇が、桃色に染まる鼓御前のそれにかさなる。

「ふぁ、んっ……んっ」
「んっ、あねさま……」

 葵葉は気のすむまで姉の唇を吸うと、最後にちゅうっと音を立て、顔を離した。

「あの……?」
「口吸い。接吻。いまだとキスっていうな。人間の愛情表現だよ。とするんだ」
「だいすきな、かぞく……家族は、葵葉ひとりだけですから、葵葉とするものなんですね」
「そのとおりだ。俺以外のやつとしちゃだめだからな? 約束だぞ、姉さま」
「やくそく……はい、わたしはちゃんと約束を守ります。姉ですもの」

 ぼうっと熱に浮かされた鼓御前の言葉を受け、葵葉はわらう。

「かわいい、かわいいなぁ……俺の姉さま。俺だけの姉さま。大好きだ」

 うわ言のようにこぼされる声音が、姉に対するものではない熱と欲を孕んでいることを、まっさらな少女こそが、知らなかった。
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