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第三章『焔魔仙教編』
第百九十五話 嵐の前の昼下がり【後】
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油断も隙もないとは、よく言ったもので。
黒皇が手際よくおやつを用意してもどるまでの数分のあいだに、庭は様変わりしていた。
「わんわん!」
「おや、蓮虎おぼっちゃま、しっぽが気になりますか?」
「きゃっ、きゃっ!」
「ふふっ、くすぐったいです。日頃から念入りに毛並みをととのえていて、正解でしたねぇ」
一心、六夜、五音ら猫族の男衆に、晴風、暗珠。
すでに集まっていただけでも面倒な顔ぶれであるのに、黒皇がちょっと目をはなした隙に、なにやらまた人影が増えていた。
月明かりのようにまばゆい白の髪をそよ風になびかせ、熟れた柘榴のような瞳を細めてはにかむ美青年といえば、ひとりしかいない。
そして困ったことに、彼のことを、わなわなと震えながら見つめている早梅が、黒皇の目の前にいる。
「はわ……耳と、しっぽ……」
「お嬢さま」
「憂炎が、もふもふ……!」
「梅雪お嬢さま」
「あう」
おぼつかない足どりで歩みだす早梅の袖を引き、すかさず引きとめる黒皇。再三にわたって早梅を呼ぶ声音は、いつもより半音低い。
「もふもふ……さわりたい……!」
「ですからお嬢さま、それでは憂炎どのの思うつぼです」
「おっと。ばれてしまいましたか」
小花の咲く草むらに胡座をかいた憂炎が、一連のやりとりを耳ざとく拾い、悪びれもなくほほ笑む。
憂炎には髪とおなじ月白の大きな三角耳と、ふさふさのしっぽが生えていた。獣と人の中間、半獣のすがただ。
あり得ない。めったに人前に現れない狼族が、わざわざ半獣のすがたになって、みずからのしっぽで赤子を遊ばせているなど。
思慮深い黒皇は、そこになにかしらの陰謀が渦巻いていることを悟り、うっかり巻き込まれそうな早梅を引きとめた次第だ。
「蓮虎おぼっちゃまを攻略すれば、おのずと梅雪も手に入るという算段です。わたしってば天才」
「純粋無垢でいらした憂炎どのは、いずこに……」
嫌な予感は的中。ととのった顔であくどい笑みを浮かべる憂炎に、黒皇はため息をかくせない。
早梅と婚姻を望む男どもは早梅本人に言い寄りがちだが、憂炎に限っては外堀から埋めてきている。狡猾。そのひとことに尽きる。これは、難敵かもしれない。
「あの……教主さま」
ここで、救世主ともいえる人物からの発声がある。それまで息を殺してなりゆきを見守っていた、爽だ。
足音もなく憂炎たちのもとへ歩み寄っていく弟の背を、黒皇はわずかに丸くした黄金の隻眼で見つめた。
「うん? なんですか、爽」
「蓮虎おぼっちゃまのおやつの時間ですので。失礼いたします……」
「ふぁんふぁん!」
「すみません、俺は兄上ではないんです。ごめんなさい」
蓮虎は人見知りだが、大好きな黒皇とよく似ているからか、爽を警戒することはまったくなかった。
「お母さまがあちらでお待ちですので、俺といっしょに行きましょうね」
爽も爽で腰が低すぎるくらい謙虚だが、さすがは大兄弟の次男。黒皇同様、弟たちを育ててきた経験値が光る。幼い蓮虎を抱き上げ、あやすのも、手慣れたものだった。
「かぁかぁ!」
「ギュー」
「ギュッ!」
「きゃははっ!」
抱き上げられた蓮虎は、爽のふところからひょっこり顔をだした双子の子烏、暁、茜と対面する。
警戒心の強い双子の子烏も、屈託なく笑う蓮虎に気をゆるしたらしい。しきりに鳴いて、まるで蓮虎に話しかけているかのよう。
そんな蓮虎、暁、茜の様子をほほ笑ましく見守りながら、爽はひとりと二羽をしっかりと胸に抱き直した。
「お待たせいたしました。梅雪さま、皇兄上」
「おぼっちゃまをつれてきてくれて、ありがとう、黒俊」
正直、まわりの男どもを牽制しながら早梅を捕まえておくことで手一杯な黒皇だったため、爽はまさに救世主であった。
つい癖で頭をなでてしまい、「いえ、俺は大したことは……」と顔を赤らめて照れる爽に、いつもは表情変化のすくない黒皇にも笑みがもれる。
「ちぇ、いけると思ったんだけどなぁ」
唇を尖らせた憂炎が、ひざを立て、腰を上げる。その拍子に、狼の耳としっぽがすっと消え、早梅は瑠璃色の瞳をまんまるにして驚愕した。
「もふもふが……!」
「ふふ、ご心配なく。梅雪がお望みなら、いくらでもさわらせてさしあげますよ。ふたりきりのときに……ね?」
「ふざけるな。だれがあんたみたいな犬野郎とふたりきりにさせるか」
ここで忘れてはいけないのは、早梅ガチ勢最有力候補のひとり、暗珠だ。すかさず早梅を背にかばったかと思えば、こめかみに青筋を浮かべ、憂炎にガンを飛ばしている。
「わたしは犬ではなく狼です。そこは間違えないでいただけますでしょうか、おちびさん?」
「よしわかった、表に出ろ。俺が子犬の皮をかぶったケダモノの毒牙からハヤ……梅雪さんを守ってみせる!」
思わず、黒皇は眉間を押さえる。この場において一番厄介なふたりが、火花を散らしはじめたからだ。
「憂炎、クラ……じゃなかった殿下! 乱暴はだめだよ!?」
あわてて早梅が仲裁するも、この場において、それは逆効果でしかない。
「あんたがそれ言うのかよ。鈍感すぎて腹が立ってきたんですっこんでてください」
「えぇっ、喧嘩を止めようとしただけなのに!?」
「あぁ、一国の皇子殿下ともあろうお方が、女性になんたる言動……嘆かわしいことです。でも安心してくださいね、梅雪。わたしがこの頭でっかちな生意気ちび助をひと思いに噛み殺してさしあげますので、それで万事解決です」
「憂炎! 君が言うとシャレにならないから、やめてね!?」
たしかに、『氷花君子伝』という物語において、ふたりは闘う運命にあるが、いまはそんな展開は求めていない。
(……というか、あれ?)
そこまで考えて、ふと、早梅は根本的な疑問に行き着く。
(主人公、暗珠と、黒幕、憂炎。ふたりの決着の行方は? 物語は……どんな結末になったんだっけ……?)
思い返してみても、わからない。
おのれが憑依した梅雪がどのように生きてきて、どのような運命に巻き込まれていくはずだったのかは、手に取るようにわかる。
それなのに、肝心な物語の結末は、もやがかかったように思い出すことができないのだ。
「……早梅さま? いかがなされましたか」
思考停止してしまった早梅の異変に、いち早く気づく黒皇。早梅にしか聞こえないささやき声で、何事か問う。
「これが修羅場ってやつ!? ちょっとちょっと~、なんだか面白いことになってるじゃないの、男子ぃ~」
ところが、黒皇の右手が早梅の肩にふれるより先に、可笑しげな声が響きわたる。
「一心さまと父さんたちが、抜け駆けして梅雪さまと遊んでる……」
「ほんとだ。僕たちはちゃんとお仕事してたのに、ずるいー!」
声のほうをふり返ったとき、早梅の目前には、雲のように白い長髪を風になびかせる女性と、そろって薄緑色の瞳を不機嫌そうに細めた双子のすがたがあった。
「七鈴さま! それから、藍藍、詩詩!」
「梅雪さま、こんにちはー!」
「今日もお花みたいにきれい、かわいい! ぎゅ~ってしちゃお!」
「わわっ……!」
早梅に呼ばれた八藍、九詩がぱっと表情をほころばせ、軽快に駆け寄ってくる。
かと思えば、ふたりしてしなやかな腕で囲い込んでくるので、早梅は双子の猫にすっぽり包まれてしまった。
ここで、早梅の背後から絶対零度の冷えきった風が吹く。
「あぁ、あなたがたが梅雪の言っていた『藍藍』さんと『詩詩』さんですか。先日成人なされたばかりだとかいう」
「まったく次から次へとなんなんだよ、馴れ馴れしすぎるだろ!」
言わずもながな、憂炎と暗珠である。
「へへーんだ。慣れ慣れしくないもん、これがふつうだもん。だって俺、梅雪さまと結婚したもんねー」
「そうだそうだー! 梅雪さまは僕たちのお嫁さんだもん、独り身は黙ってろー!」
「うん、火に油を注ぐのはやめようか、藍藍、詩詩!」
とっさに声を張り上げる早梅だけれども、時すでに遅し。こめかみに青筋を浮かべる憂炎と暗珠を目にし、頭を抱える。
いよいよ収拾がつかなくなってきたことを察した黒皇は、爽に目配せをして、早梅と蓮虎をこの場から連れだす機会をうかがっていた。
「あら黒皇、悪いけど、梅雪ちゃんをつれてっちゃダメよ」
そして先手を取った七鈴の言葉に、さすがの黒皇も渋面をかくしきれない。
「お言葉ですが、七鈴さま」
「まぁまぁ、最後まで聞いてちょうだい。あたしたちは、梅雪ちゃんたちを呼びに来たのよ。準備がととのったからね」
「準備……七鈴さま、それじゃあ」
はっと声をあげる早梅へ、ぱちんと七鈴がウインクを寄越す。
「えぇ、桃英さまもお待ちかねよ。『作戦』の最終打ち合わせをしましょうか」
のどかな昼下がりに、緊張が走る。
嵐の前の静けさが、終わりを告げようとしていた。
黒皇が手際よくおやつを用意してもどるまでの数分のあいだに、庭は様変わりしていた。
「わんわん!」
「おや、蓮虎おぼっちゃま、しっぽが気になりますか?」
「きゃっ、きゃっ!」
「ふふっ、くすぐったいです。日頃から念入りに毛並みをととのえていて、正解でしたねぇ」
一心、六夜、五音ら猫族の男衆に、晴風、暗珠。
すでに集まっていただけでも面倒な顔ぶれであるのに、黒皇がちょっと目をはなした隙に、なにやらまた人影が増えていた。
月明かりのようにまばゆい白の髪をそよ風になびかせ、熟れた柘榴のような瞳を細めてはにかむ美青年といえば、ひとりしかいない。
そして困ったことに、彼のことを、わなわなと震えながら見つめている早梅が、黒皇の目の前にいる。
「はわ……耳と、しっぽ……」
「お嬢さま」
「憂炎が、もふもふ……!」
「梅雪お嬢さま」
「あう」
おぼつかない足どりで歩みだす早梅の袖を引き、すかさず引きとめる黒皇。再三にわたって早梅を呼ぶ声音は、いつもより半音低い。
「もふもふ……さわりたい……!」
「ですからお嬢さま、それでは憂炎どのの思うつぼです」
「おっと。ばれてしまいましたか」
小花の咲く草むらに胡座をかいた憂炎が、一連のやりとりを耳ざとく拾い、悪びれもなくほほ笑む。
憂炎には髪とおなじ月白の大きな三角耳と、ふさふさのしっぽが生えていた。獣と人の中間、半獣のすがただ。
あり得ない。めったに人前に現れない狼族が、わざわざ半獣のすがたになって、みずからのしっぽで赤子を遊ばせているなど。
思慮深い黒皇は、そこになにかしらの陰謀が渦巻いていることを悟り、うっかり巻き込まれそうな早梅を引きとめた次第だ。
「蓮虎おぼっちゃまを攻略すれば、おのずと梅雪も手に入るという算段です。わたしってば天才」
「純粋無垢でいらした憂炎どのは、いずこに……」
嫌な予感は的中。ととのった顔であくどい笑みを浮かべる憂炎に、黒皇はため息をかくせない。
早梅と婚姻を望む男どもは早梅本人に言い寄りがちだが、憂炎に限っては外堀から埋めてきている。狡猾。そのひとことに尽きる。これは、難敵かもしれない。
「あの……教主さま」
ここで、救世主ともいえる人物からの発声がある。それまで息を殺してなりゆきを見守っていた、爽だ。
足音もなく憂炎たちのもとへ歩み寄っていく弟の背を、黒皇はわずかに丸くした黄金の隻眼で見つめた。
「うん? なんですか、爽」
「蓮虎おぼっちゃまのおやつの時間ですので。失礼いたします……」
「ふぁんふぁん!」
「すみません、俺は兄上ではないんです。ごめんなさい」
蓮虎は人見知りだが、大好きな黒皇とよく似ているからか、爽を警戒することはまったくなかった。
「お母さまがあちらでお待ちですので、俺といっしょに行きましょうね」
爽も爽で腰が低すぎるくらい謙虚だが、さすがは大兄弟の次男。黒皇同様、弟たちを育ててきた経験値が光る。幼い蓮虎を抱き上げ、あやすのも、手慣れたものだった。
「かぁかぁ!」
「ギュー」
「ギュッ!」
「きゃははっ!」
抱き上げられた蓮虎は、爽のふところからひょっこり顔をだした双子の子烏、暁、茜と対面する。
警戒心の強い双子の子烏も、屈託なく笑う蓮虎に気をゆるしたらしい。しきりに鳴いて、まるで蓮虎に話しかけているかのよう。
そんな蓮虎、暁、茜の様子をほほ笑ましく見守りながら、爽はひとりと二羽をしっかりと胸に抱き直した。
「お待たせいたしました。梅雪さま、皇兄上」
「おぼっちゃまをつれてきてくれて、ありがとう、黒俊」
正直、まわりの男どもを牽制しながら早梅を捕まえておくことで手一杯な黒皇だったため、爽はまさに救世主であった。
つい癖で頭をなでてしまい、「いえ、俺は大したことは……」と顔を赤らめて照れる爽に、いつもは表情変化のすくない黒皇にも笑みがもれる。
「ちぇ、いけると思ったんだけどなぁ」
唇を尖らせた憂炎が、ひざを立て、腰を上げる。その拍子に、狼の耳としっぽがすっと消え、早梅は瑠璃色の瞳をまんまるにして驚愕した。
「もふもふが……!」
「ふふ、ご心配なく。梅雪がお望みなら、いくらでもさわらせてさしあげますよ。ふたりきりのときに……ね?」
「ふざけるな。だれがあんたみたいな犬野郎とふたりきりにさせるか」
ここで忘れてはいけないのは、早梅ガチ勢最有力候補のひとり、暗珠だ。すかさず早梅を背にかばったかと思えば、こめかみに青筋を浮かべ、憂炎にガンを飛ばしている。
「わたしは犬ではなく狼です。そこは間違えないでいただけますでしょうか、おちびさん?」
「よしわかった、表に出ろ。俺が子犬の皮をかぶったケダモノの毒牙からハヤ……梅雪さんを守ってみせる!」
思わず、黒皇は眉間を押さえる。この場において一番厄介なふたりが、火花を散らしはじめたからだ。
「憂炎、クラ……じゃなかった殿下! 乱暴はだめだよ!?」
あわてて早梅が仲裁するも、この場において、それは逆効果でしかない。
「あんたがそれ言うのかよ。鈍感すぎて腹が立ってきたんですっこんでてください」
「えぇっ、喧嘩を止めようとしただけなのに!?」
「あぁ、一国の皇子殿下ともあろうお方が、女性になんたる言動……嘆かわしいことです。でも安心してくださいね、梅雪。わたしがこの頭でっかちな生意気ちび助をひと思いに噛み殺してさしあげますので、それで万事解決です」
「憂炎! 君が言うとシャレにならないから、やめてね!?」
たしかに、『氷花君子伝』という物語において、ふたりは闘う運命にあるが、いまはそんな展開は求めていない。
(……というか、あれ?)
そこまで考えて、ふと、早梅は根本的な疑問に行き着く。
(主人公、暗珠と、黒幕、憂炎。ふたりの決着の行方は? 物語は……どんな結末になったんだっけ……?)
思い返してみても、わからない。
おのれが憑依した梅雪がどのように生きてきて、どのような運命に巻き込まれていくはずだったのかは、手に取るようにわかる。
それなのに、肝心な物語の結末は、もやがかかったように思い出すことができないのだ。
「……早梅さま? いかがなされましたか」
思考停止してしまった早梅の異変に、いち早く気づく黒皇。早梅にしか聞こえないささやき声で、何事か問う。
「これが修羅場ってやつ!? ちょっとちょっと~、なんだか面白いことになってるじゃないの、男子ぃ~」
ところが、黒皇の右手が早梅の肩にふれるより先に、可笑しげな声が響きわたる。
「一心さまと父さんたちが、抜け駆けして梅雪さまと遊んでる……」
「ほんとだ。僕たちはちゃんとお仕事してたのに、ずるいー!」
声のほうをふり返ったとき、早梅の目前には、雲のように白い長髪を風になびかせる女性と、そろって薄緑色の瞳を不機嫌そうに細めた双子のすがたがあった。
「七鈴さま! それから、藍藍、詩詩!」
「梅雪さま、こんにちはー!」
「今日もお花みたいにきれい、かわいい! ぎゅ~ってしちゃお!」
「わわっ……!」
早梅に呼ばれた八藍、九詩がぱっと表情をほころばせ、軽快に駆け寄ってくる。
かと思えば、ふたりしてしなやかな腕で囲い込んでくるので、早梅は双子の猫にすっぽり包まれてしまった。
ここで、早梅の背後から絶対零度の冷えきった風が吹く。
「あぁ、あなたがたが梅雪の言っていた『藍藍』さんと『詩詩』さんですか。先日成人なされたばかりだとかいう」
「まったく次から次へとなんなんだよ、馴れ馴れしすぎるだろ!」
言わずもながな、憂炎と暗珠である。
「へへーんだ。慣れ慣れしくないもん、これがふつうだもん。だって俺、梅雪さまと結婚したもんねー」
「そうだそうだー! 梅雪さまは僕たちのお嫁さんだもん、独り身は黙ってろー!」
「うん、火に油を注ぐのはやめようか、藍藍、詩詩!」
とっさに声を張り上げる早梅だけれども、時すでに遅し。こめかみに青筋を浮かべる憂炎と暗珠を目にし、頭を抱える。
いよいよ収拾がつかなくなってきたことを察した黒皇は、爽に目配せをして、早梅と蓮虎をこの場から連れだす機会をうかがっていた。
「あら黒皇、悪いけど、梅雪ちゃんをつれてっちゃダメよ」
そして先手を取った七鈴の言葉に、さすがの黒皇も渋面をかくしきれない。
「お言葉ですが、七鈴さま」
「まぁまぁ、最後まで聞いてちょうだい。あたしたちは、梅雪ちゃんたちを呼びに来たのよ。準備がととのったからね」
「準備……七鈴さま、それじゃあ」
はっと声をあげる早梅へ、ぱちんと七鈴がウインクを寄越す。
「えぇ、桃英さまもお待ちかねよ。『作戦』の最終打ち合わせをしましょうか」
のどかな昼下がりに、緊張が走る。
嵐の前の静けさが、終わりを告げようとしていた。
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