上 下
78 / 113

事情聴取

しおりを挟む
完全に鎮火した村の跡を歩く。
 廃材と化した材木を足でかき分けながら、役に立ちそうな物を探していく。
 駄目だ、どうしても心が落ち着かない。
 焼け落ちた民家を見る度に、元の穏やかな村の風景を思い出してしまう。
 落ち着かない心を持て余し、俺は手持ち無沙汰にステータスを開いた。
 

――――――――――――――――――――――――――
称号:孤独な者 群れの主 勇者喰い
ユニークスキル:天業合成てんごうごうせい 異界之瞳いかいのひとみ 飛躍推理メタすいり
スキル:竜魔術 爪牙技 剣術 魔工熟練 棒術 はめ込み 滅音 欲望の繭 腐食魔法 静電気 湿潤魔術 土耐性 属性魔法・火水風土 魔力操作 魔力返還 魔力吸収 無詠唱 狩猟術 俊足
――――――――――――――――――――――――――


 聖との戦闘で格段に成長した戦闘スキル。
 剣術、棒術。
 そしてフィアとの数日間で成長、獲得した狩猟のためのスキル。
 滅音、狩猟術、俊足。
 俺の旅のそもそもの目的であるスキル獲得は順調だ。
 これは喜ばしい事なんじゃないか?
 うん。
 いいぞ、いいぞ。
 こういう時だからこそ、楽しい事を見つけないとやってられないからな。

 少しテンションが上がった俺は、コルク村の残骸から食料とタイタンベアの死骸を、洞窟に持ち帰った。
 アルベルトが調理を始めると、匂いに釣られて穴の奥から村人達が溢れかえってくる。
 帰って来た俺を村人達は見ている。
 恨みの籠った眼で。
 
 なんだ?
 この惨劇が俺のせいだとでも言いたいのか?
 残虐な皇国兵が暴走して虐殺を始めただけなのに。
 いっそ声に出せば、お前達の気も楽になるのに。
 村人達の眼を眺めた俺は、集団の中にマリーを見つけた。

「マリー、ちょっと話がしたい。外せるか?」

「ええ……いいわよ」

 俺達は村人達の視線を背に、木々の間に入って行った。
 村人達の声や飯の匂いがしなくなる程に離れた所で、俺はマリーに向きなおった。

「聞かせてくれ。何があった。俺がいない間に。ソリティアは皇国兵が最初からこの村を襲うつもりだったと、そう言っていたが」

 マリーはため息をつき、木にもたれ掛かった。
 しばらく黙りこみ、そして覚悟を決めた顔をこちらに見せた。

「その前に。ここをぼかしておくと、お互いのためにならないから、最初に言っておくわ。村の人達、村長さん、そしてあの子……クリエちゃんが死んだのは、まぎれもなく私達のせいよ」

「……ああ、言われなくても分かってる。バランスを間違えたんだ」

「バランス?」

 繰り返された言葉に、頷いて言葉を、伝える相手を間違えた懺悔を続ける。

「目立つリスクと彼らの大切さ。……上手く言えないな。とにかく俺は天秤にかけるべきでないものを、かけたんだ。この結果は、そのせいだ」

「そう。貴方は自分の中の価値観を見誤った。比較してはいけなかった物を比較してしまった罪を犯したのよ」

「その通りだ。でも、まるで他人事みたいな口の利き方だ。お前だって同じなんだろ?」

 自業自得だが、マリーの態度に腹が立ち、半ば八つ当たりの様に睨み付けてしまう。
 俺が罪を犯したというのなら、マリーも同じはずだ。
 この言葉の中には、そんな望みがあったと思う。

「同じよ。でも私が犯した罪は1000年前だけどね」

 だがマリーは俺が思っていたよりも、ずっと大人だった。
 少なくとも、やっと今自分の罪について自覚した俺とは違った。
 俺はようやくマリーが何をしたのか思い出した。

「1000年前、親友のフラウを残して、私がどんな気持ちで迷宮に閉じこもったと思う?」

 以前、親友を無くした気持ちが分かると言った。
 でもそれは少しだけ、状況が違った。
 他人の命を諦めるのは、俺もマリーも慣れている。
 でもそれは俺が消極的な諦めだとすれば、マリーは積極的な諦めだ。
 俺が皇国兵を一掃しないと決めた時には、もうコルク村の人達の死を受け入れていた。

「……諦めていたんだな。今回も同じだったのか?」

「そうよ。それでも、できる限りの事はしたわ。万が一私がいなかった時の事を考えて、クリエちゃんには自衛用の魔法を教えていたわ。皇国兵に襲われて、精神を集中できずに使えなかったみたいだけど」

 マリーの言葉はどこか苦しそうだった。
 当たり前だ。
 諦めたからと言って心を捨てたわけじゃない。
 失った物について語るのは、誰だって辛い。

「分かった。もうこの話はやめよう。俺はなぜ皇国兵が村を襲ったのかを聞こうとしていたはずだ」

「話が逸れてたわね。それじゃあ説明しましょうか」

 そう言って、マリーは自分の髪を撫でて、数時間前の事を話し始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません

青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。 だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。 女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。 途方に暮れる主人公たち。 だが、たった一つの救いがあった。 三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。 右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。 圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。 双方の利害が一致した。 ※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

処理中です...