ドラゴンリベレーション~夢と自由を追い求めて一人旅に出たら、進化とスキル合成のおかげで世界最強になっていく元社畜の話~

山田康介

文字の大きさ
上 下
2 / 113

同年代のドラゴン達

しおりを挟む
 俺が前世の記憶を取り戻してから数日経った。
 俺が今いるのは天を衝く程高い天業竜山にあるドラゴンの里らしい。使命を果たしに行くドラゴン以外の天業竜はここに留まって、自分の出番が来るのを待つそうだ。
 出番のないドラゴンは暇を持て余して、大抵は飯を食ったり、若者に講義をしたり、書物を読んだりして過ごしている。定年退職後の老人みたいに。

 そして俺はここ数日、その暇を持て余している年上連中が開催する講義でこの世界の事を学んでいた。スキルや魔法、人間達の築く文化の事、この世界の成り立ちとか。
 学ぶべき事は多かったが、それでも人間と比べてドラゴンというのは知能が高い。数日もあればほとんどを学びきってしまって、今はやる事が無くなってしまっているのだ。

 頼みの綱の『天業合成』も、スキルを習得できないこの状況だとほとんど使い物にならない。
 講義の後にここの長、オーラとかいう老いたドラゴンが『天業支配』とかいう自由にスキルを与えられるトンデモスキルで、授けられたスキルを一度合成したきりだ。
 
 授けられた2つを合成して得られたのは『剣技』という剣の形をした武器の鋭さを上げ、剣を持った時に身体能力を向上させるというスキルだった。
 しかしこの『剣技』、いかんせんドラゴンの体では手がないので剣を扱いづらい。形を変えて人間になる竜魔術も使えるけど、『剣技』の身体能力補正を入れてもこのドラゴンの体よりもパワーが落ちてしまう。
 人間の体で『剣技』を使うよりも、ドラゴンの体で爪を振るった方がよく切れるし力も強いのだ。
 そんな訳で、俺は『剣技』の活かし方をいまいち見つけられずにいた。

「よお、そんな所で何やってんだ? 落ちこぼれさんよ」

 ちっ、嫌な奴が来た。
 丁度いい感じの岩に乗っけていた顎を持ち上げ、視線を上げると岩のような鱗のデカい竜がいた。
 ヴィデンタスだ。この前の講義で人の話を遮ってステータスが見たいと言い出していた奴が、同年代の取り巻き達を連れて俺に絡みに来たようだ。

「自分の才能のなさを嘆いていたのか? 気にすることはないぜ、俺と比べれば同年代のドラゴンなんて皆才能がないようなもんだからな」

 ヴィデンタスは俺の前で鼻息荒くしている。
 俺はこいつが好きじゃない。うるさいし、傲慢だし、横暴だし、何より俺にこうやった絡んでくる。

 ただ、こいつの言ってる事は事実だ。
 持っているユニークスキルは『天業模倣』。一度見たスキルをコピーして自分の物にできる。
 コピーしたスキルは劣化するし、ユニークスキルはコピーできないという欠点はあるが、十分強力なスキルで、そのスキルでこの里のドラゴンの大半のスキルを既に得ている。
 こいつは俺の『天業合成』と自分のスキルを比べて何かとマウントを取りたがる。若くてそういう年ごろなのだろうが、それでも腹立たしい。

「その通り! ヴィデンタス様は五龍王の1人になるお方! 産まれてわずか5年で進化もしたし、お前とは違うのだ!」

 ヴィデンタスの後ろについていたドラゴン達が、何やらわめいている。
 進化。それは生命が通常長い時と経験を得ると、上位の存在へと種族を変化させる事を言う。
 ヴィデンタスは俺が産まれる少し前に【ロックドラゴン】から【メタルドラゴン】へと進化をしたらしい。若いドラゴンが進化をするのは珍しいそうで、この里でもヴィデンタスは優秀なドラゴンとして期待されているようだ。
 
 そしてそんな期待されているドラゴンの元に、取り巻き達が集まってくる、と。
 俺がこいつを嫌う理由の一番がこれだ。このヴィデンタスはこんな取り巻き達をいつも連れている。
 ああ、本当にうるさい。

「君達何を騒いでいるんだ!」

 ああ、騒ぎを聞きつけて委員長までやってきた。
 青の鱗を持ったドラゴンが上から羽ばたき降りてくる。

「げ、ルルドピーンか。うるさい奴が来たな」
 
 ヴィデンタスが顔をしかめた。
 委員長は俺がつけたあだ名で、あいつはルルドピーンという。規則を守れとか風紀がどうとか伝統がとか、あまりにも委員長みたいな事ばかりを言うので勝手に心の中でそう呼んでいる。
 そしてドラゴンだから全く分からなかったけど、あれはメスらしい。

「げ、とはなんだ! お前は少し騒ぎすぎる! もう少しドラゴンとしての矜持をだな……」

「それはお前もだろ! バーカ! そもそもドラゴンは強さと威厳が必要なんだ。人間の姿を取りたがるヒトゥリや俺より弱いお前に指図されたくねえよ」

「なんだと……!」

 うーん。子供の喧嘩だな。精神年齢25歳の俺にはちょっとついていけそうにない。黙って空でも眺めておこう。
 
 そうそう、ヴィデンタスがルルドピーンを「弱い」と言ったが、別にそんな事はない。
 ルルドピーンは『天業創造』というスキルを作り出せる、かなりヤバいスキルと場や相手の行動原理や信念、癖を読み取れる『規範把握』というスキルの2つのユニークスキルを持っている。
 正直俺はルルドピーンの方が強いと思っているんだが、若いドラゴンは進化を経験しているヴィデンタスの方が強いと思っているらしい。

 そろそろ、うっとうしくなってきたし他の場所で『剣技』の有効的な使い方でも考えるか。
 翼を広げてどこかへ飛んでいこうとした時巨大な影が俺達、幼竜達を覆った。

「何を争っている。我が子達よ」

 白銀の鱗を持った巨大なドラゴンが俺達を見下ろしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...