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第248話
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◆神坂夏菜 視点◆
国立志望者としては試験まであと2週間という時期に差し掛かったものの、クラスで見れば一足先に進路が決まっている者も多くなってきて目前のバレンタインデーによる賑わいが起こってきている。
私はバレンタインにはあまり興味がなく、去年までなら春華や美波からねだられて冬樹が作ったチョコレートを使ったお菓子の御相伴に与るくらいしか縁がなかったし、今年も受験に勤しんで自発的には何もしないつもりだった。
どこからか冬樹の作るチョコが美味しいという話が一部の女子の間で広まり、それを知ったクラスメイト達から冬樹へチョコ作りを教えてもらえる様にという取り成しを願われてしまった。
同様に春華や美波も同じ様な取り成しを求められ、しかも同じ学年なだけあって私よりも規模が大きくなっていたらしい。
私は断っていたし、春華たちも最初は断っていたもののだんだんと感じる圧が強くなって、そういったやり取りを知った冬樹が『教えるくらいならいいよ』と応じたために、有志が参加する冬樹が講師のチョコレート作り教室を行うことになった。もちろん巻き込んだ私が知らぬ顔で不参加というわけにもいかず、そのチョコレート作り教室に参加することになった。
場所は私と春華で学校や調理部と掛け合って家庭科室を使わせてもらうこととし、調理部も合流して1クラス分くらいの生徒が参加する規模になり、私と春華と美波で補助役兼抑え役に回ったものの、元々過激な生徒もいないのでつつがなく終わった。
人数比で言えば、私や春華と学年が同じ3年や2年が多かったものの、1年からも生徒会執行部で春華たちと交流があったり、今回参加の上級生と縁がある者が混ざっていた。
教えることについては冬樹に任せきりではあったものの、楽しそうにチョコ作りをしている生徒たちを見ているのは良い気分転換になった。
◆栗山優希 視点◆
昨年末、藤堂佳さんが登壇した上映会のチケットを譲ってもらった事がきっかけで春華先輩とご縁ができて今学期からは生徒会の庶務としてお手伝いをさせてもらっている。
2月に入ってバレンタインの足音が大きくなってきたところで、春華先輩からチョコ作り教室を行うという話を聞いて参加させてもらった。
冬樹先輩が先生役で春華先輩や夏菜先輩や岸元先輩が補助という感じで進行し、冬樹先輩のわかりやすい説明と実演で初めての私でもすごく出来の良いチョコができたと思う。
実際に味見したものも口溶けが良くて自分で作ったというのが信じられないくらいだった。
去年までは買ってきたチョコを雷斗さんへ渡していたけど、今年はこの出来の良い手作りを渡すことができるのでワクワクする。
チョコ作りに関してはみんな問題なく終わって良かったと思うのだけど、だからこそ一学期に冬樹先輩が冤罪で学校中から疎外されるような状況だったことや、特に2年生の先輩方は同じ学年で冬樹先輩に辛く当たっていた原因だった人たちなのにそんな過去がなかったかのような振る舞いだった事を考えるとモヤモヤしてしまう。
中には成績がよく料理も上手で優しい冬樹先輩と付き合いたいと思った人もいるみたいで、そんな話をしている様子も伺えた・・・とは言え、冬樹先輩には素敵な恋人さんがいらっしゃるからそこへ入り込む余地はなさそうですけどね。
◆神坂春華 視点◆
バレンタインの話題になって、あたしと美波ちゃんが毎年フユにチョコを作ってもらっているという話が広がって、そんなに美味しく作れるのなら教えてもらいたいという要望をもらって、気が付いたらその要望が結構な数になっていた。
当然、フユの負担になるからできるだけ角が立たないように断ろうと思ってお姉に相談したら、お姉の方でもそういう話題があってやっぱり教えてほしいという要望が出ているとのことで益々どうしようという気持ちになってしまっていたのだけど、どこからかそういう話を聞きつけたフユがお姉もあたしも断りづらいだろうから協力するとすると言ってくれて教師役を引き受けてくれた。
フユが教師役を引き受けてくれたので、あとはあたしとお姉で学校の許可を取って場所の確保と参加希望者の日程調整をすれば良いだけなのでなんとかなった。
気持ちとしてはフユの冤罪事件の時に迫害する側にいたのに、その記憶が遠のいてきているからと手のひらを返しているみんなの態度に不快感もある。でもそれは自分も同じだと思うところもあって、フユが善意で協力してくれる状況を少しでも良い方向へ持っていくことを考えてネガティブな事は考えないようにと準備した。
1年生からも参加したいという要望もあったので、人数的な余裕はあったから参加OKとしたのだけど、どうしても1年生が少なくなるのでと最近仲良くなった優希ちゃんも誘ったら乗り気で参加してくれて1年生参加者を増やせて良かった。
事前には色々心配事もあったけど、終わってみればみんな満足そうだったし、何よりフユの評判が良くなったのが良かったと思う・・・中には恋愛対象にしたいという声も聞こえてきたけど、そこは美晴お姉が絶対に譲らないので諦めて欲しい・・・
あと、香織ちゃんが参加したがったのに仕事の都合で叶わなかったのは申し訳ないので、せめてフユが作った一番出来が良いチョコをあげようと思う。
国立志望者としては試験まであと2週間という時期に差し掛かったものの、クラスで見れば一足先に進路が決まっている者も多くなってきて目前のバレンタインデーによる賑わいが起こってきている。
私はバレンタインにはあまり興味がなく、去年までなら春華や美波からねだられて冬樹が作ったチョコレートを使ったお菓子の御相伴に与るくらいしか縁がなかったし、今年も受験に勤しんで自発的には何もしないつもりだった。
どこからか冬樹の作るチョコが美味しいという話が一部の女子の間で広まり、それを知ったクラスメイト達から冬樹へチョコ作りを教えてもらえる様にという取り成しを願われてしまった。
同様に春華や美波も同じ様な取り成しを求められ、しかも同じ学年なだけあって私よりも規模が大きくなっていたらしい。
私は断っていたし、春華たちも最初は断っていたもののだんだんと感じる圧が強くなって、そういったやり取りを知った冬樹が『教えるくらいならいいよ』と応じたために、有志が参加する冬樹が講師のチョコレート作り教室を行うことになった。もちろん巻き込んだ私が知らぬ顔で不参加というわけにもいかず、そのチョコレート作り教室に参加することになった。
場所は私と春華で学校や調理部と掛け合って家庭科室を使わせてもらうこととし、調理部も合流して1クラス分くらいの生徒が参加する規模になり、私と春華と美波で補助役兼抑え役に回ったものの、元々過激な生徒もいないのでつつがなく終わった。
人数比で言えば、私や春華と学年が同じ3年や2年が多かったものの、1年からも生徒会執行部で春華たちと交流があったり、今回参加の上級生と縁がある者が混ざっていた。
教えることについては冬樹に任せきりではあったものの、楽しそうにチョコ作りをしている生徒たちを見ているのは良い気分転換になった。
◆栗山優希 視点◆
昨年末、藤堂佳さんが登壇した上映会のチケットを譲ってもらった事がきっかけで春華先輩とご縁ができて今学期からは生徒会の庶務としてお手伝いをさせてもらっている。
2月に入ってバレンタインの足音が大きくなってきたところで、春華先輩からチョコ作り教室を行うという話を聞いて参加させてもらった。
冬樹先輩が先生役で春華先輩や夏菜先輩や岸元先輩が補助という感じで進行し、冬樹先輩のわかりやすい説明と実演で初めての私でもすごく出来の良いチョコができたと思う。
実際に味見したものも口溶けが良くて自分で作ったというのが信じられないくらいだった。
去年までは買ってきたチョコを雷斗さんへ渡していたけど、今年はこの出来の良い手作りを渡すことができるのでワクワクする。
チョコ作りに関してはみんな問題なく終わって良かったと思うのだけど、だからこそ一学期に冬樹先輩が冤罪で学校中から疎外されるような状況だったことや、特に2年生の先輩方は同じ学年で冬樹先輩に辛く当たっていた原因だった人たちなのにそんな過去がなかったかのような振る舞いだった事を考えるとモヤモヤしてしまう。
中には成績がよく料理も上手で優しい冬樹先輩と付き合いたいと思った人もいるみたいで、そんな話をしている様子も伺えた・・・とは言え、冬樹先輩には素敵な恋人さんがいらっしゃるからそこへ入り込む余地はなさそうですけどね。
◆神坂春華 視点◆
バレンタインの話題になって、あたしと美波ちゃんが毎年フユにチョコを作ってもらっているという話が広がって、そんなに美味しく作れるのなら教えてもらいたいという要望をもらって、気が付いたらその要望が結構な数になっていた。
当然、フユの負担になるからできるだけ角が立たないように断ろうと思ってお姉に相談したら、お姉の方でもそういう話題があってやっぱり教えてほしいという要望が出ているとのことで益々どうしようという気持ちになってしまっていたのだけど、どこからかそういう話を聞きつけたフユがお姉もあたしも断りづらいだろうから協力するとすると言ってくれて教師役を引き受けてくれた。
フユが教師役を引き受けてくれたので、あとはあたしとお姉で学校の許可を取って場所の確保と参加希望者の日程調整をすれば良いだけなのでなんとかなった。
気持ちとしてはフユの冤罪事件の時に迫害する側にいたのに、その記憶が遠のいてきているからと手のひらを返しているみんなの態度に不快感もある。でもそれは自分も同じだと思うところもあって、フユが善意で協力してくれる状況を少しでも良い方向へ持っていくことを考えてネガティブな事は考えないようにと準備した。
1年生からも参加したいという要望もあったので、人数的な余裕はあったから参加OKとしたのだけど、どうしても1年生が少なくなるのでと最近仲良くなった優希ちゃんも誘ったら乗り気で参加してくれて1年生参加者を増やせて良かった。
事前には色々心配事もあったけど、終わってみればみんな満足そうだったし、何よりフユの評判が良くなったのが良かったと思う・・・中には恋愛対象にしたいという声も聞こえてきたけど、そこは美晴お姉が絶対に譲らないので諦めて欲しい・・・
あと、香織ちゃんが参加したがったのに仕事の都合で叶わなかったのは申し訳ないので、せめてフユが作った一番出来が良いチョコをあげようと思う。
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