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第243話
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◆岸元美波 視点◆
今日は冬樹と春華ちゃんの誕生日のお祝いをする。明日の土曜日に学校の友達と誕生日会を行うことになっているけど、それに先駆けて冬樹の誕生日当日の今日もお祝いをしたいと思って、お姉ちゃんと相談し冬樹や家族に話をしてもらい岸元と神坂の家族だけでお祝いをすることになった。
お姉ちゃんとふたりで準備をし終えたタイミングでうちの両親が帰ってきたので、春華ちゃん達を呼びに行ったら神坂の小父さん小母さんも帰ってきていて、更に冬樹も春華ちゃんや夏菜お姉ちゃんと一緒に待っていたので、すぐにうちへ招き入れて誕生日会が始まった。
「春華ちゃん、どうしたの?」
春華ちゃんが何か気掛かりな事があるような雰囲気でそわそわしていたので尋ねてみた。
「え?なにもないよ!」
「何もなさそうって感じではないのだけど、本当に大丈夫?
気掛かりな事があるの?」
「え?
いや、気掛かりと言えば気掛かりかもしれないけど、大丈夫!
せっかく用意してくれたのに落ち着いてなくてごめんね」
「春華ちゃんが問題ないならいいよ。気にしないで。
お料理が出来あいの物が中心で口に合わなかったかなぁって心配で・・・」
「それはないよ!
用意してくれたのはどれもみんな美味しいし、嬉しいよ!
でも、そうだね・・・相談したいことがあるから、あとでちょっと時間もらって良い?」
「それは構わないよ。片付けをしたらね」
「美波は片付けしないで良いわよ。
春華ちゃんの誕生日なんだし、春華ちゃんのために時間を使ってあげなさい」
「うん、私とお母さんで片付けるから美波は春華ちゃんのお話を聞いてあげて」
春華ちゃんが相談したいことがあると言うと、お母さんとお姉ちゃんが片付けは引き受けてくれると言ってくれたので、その言葉に甘えることにした。
食事を済ませデザートのケーキまで食べ終えると、お父さん達はお酒を飲み始めて、夏菜お姉ちゃんは勉強をするからと言って一足先に部屋へ戻っていき、冬樹は主役なのにお母さん達にもお酒を飲むように勧めてお姉ちゃんと二人で片付けを始め、冬樹は自分のことは気にせず春華ちゃんの相談に乗ってあげて欲しいと言ってわたしと春華ちゃんを送り出してくれた。
「それで、相談って何かな?」
「あのさ、美波ちゃん。あたしってモテるの?」
「ずいぶん唐突だね・・・でもそうだね、モテると思うよ。
実際、学校だってローラン君とか新谷君は春華ちゃんことが好きだと思うし、あと従兄弟のユッキー君だってそうだと思うよ」
「美波ちゃんにもそう見えるんだ・・・」
絶望した様な表情でつぶやく春華ちゃん・・・
「言いにくいんだけど、春華ちゃんの周りのみんなもそう思っていると思うよ・・・」
「そうなの?」
「うん。ところで、夏菜お姉ちゃんに言われたの?」
「ううん、さっき待っている時にフユに言われた」
「冬樹が?なんか意外だね」
「美晴お姉とのことについて聞いてて、その話の流れでね」
「そうなんだ」
「それでさ、あたしどうして良いのかわからなくなっちゃって・・・特にユッキーは高校進学に合わせてうちで同居することになるし・・・」
たしかに春華ちゃんの迷いはわかる気がする。
自分へ恋愛的な気持ちを向けている相手と同居なんていくら従兄弟でもハードルは高いと思う。
特にユッキー君のことは弟的な位置付けで見ていたのだろうし、どうして良いのかわからなくなってしまう気持ちが生じても不思議はない。
「別に特別意識しなくてもいいんじゃないのかな?」
「どうして?」
「だって、告白されているわけではないでしょ?」
「うん・・・」
「それなら少なくとも告白されるまでは春華ちゃんから何かする必要はないと思う。
もちろん春華ちゃんが好きになって付き合いたいって思うのなら別だけど」
「今のところ、そういった気持ちはないかな」
「だったら、今は春華ちゃんがどうしたいかと、もし告白されたらどうするかを考えれば良いと思うよ」
「うん、ありがとう。
まだユッキーがうちで暮らすまで時間があるし、ローラン君達のことも含めて考えてみるよ。
そう言えば、美波ちゃんは鷺ノ宮君と付き合い始めたじゃない。やっぱりカッコいいから?」
「え?
いきなりだね」
「いいからいいから、参考に聞かせてよ」
「うーん、もちろん前から見た目はカッコいいと思っていたし、今だってカッコいいと思うけど、わたしや仲村先輩や芳川さんにした事を深く反省しているのが感じられる事が一番かな」
「あたしはその鷺ノ宮君を見てないから言葉にするのは難しいけど、反省しているからって良いのかな?」
「反省してたら良くないかな?」
「美波ちゃんが言う鷺ノ宮君が反省しているということを真実とした上で言わせてもらうけど、鷺ノ宮君からしたら美波ちゃんに負い目がある状態なわけじゃない?
それって鷺ノ宮君は美波ちゃんに対して何も言えなくなっちゃって、不満とかできても話し合いもしないで溜め込んじゃって、どうしようもなくなってから爆発して関係が拗れちゃうかなって思うんだ」
「そ、それはあるかもしれないね」
春華ちゃんの指摘は今まで考えなかったけど言われてみればその通りで、今の隆史君はわたしに不満があっても何も言わないで溜め込みそうだし、我慢に我慢を重ねてどうしようもなくなってから不満を爆発させてしまうというのはありそうに思える。
「だからって別れろとか反対とか言うつもりはないけど、普通のカップルよりもバランスを保つのは難しいと思うよ」
「うん、春華ちゃんが言いたいことはわかっていると思うよ。
気を付けて爆発させないように頑張るね」
春華ちゃんの相談を受けていたはずなのに、気が付いたらわたしのこれからのことについて考えさせられることになった。
今日は冬樹と春華ちゃんの誕生日のお祝いをする。明日の土曜日に学校の友達と誕生日会を行うことになっているけど、それに先駆けて冬樹の誕生日当日の今日もお祝いをしたいと思って、お姉ちゃんと相談し冬樹や家族に話をしてもらい岸元と神坂の家族だけでお祝いをすることになった。
お姉ちゃんとふたりで準備をし終えたタイミングでうちの両親が帰ってきたので、春華ちゃん達を呼びに行ったら神坂の小父さん小母さんも帰ってきていて、更に冬樹も春華ちゃんや夏菜お姉ちゃんと一緒に待っていたので、すぐにうちへ招き入れて誕生日会が始まった。
「春華ちゃん、どうしたの?」
春華ちゃんが何か気掛かりな事があるような雰囲気でそわそわしていたので尋ねてみた。
「え?なにもないよ!」
「何もなさそうって感じではないのだけど、本当に大丈夫?
気掛かりな事があるの?」
「え?
いや、気掛かりと言えば気掛かりかもしれないけど、大丈夫!
せっかく用意してくれたのに落ち着いてなくてごめんね」
「春華ちゃんが問題ないならいいよ。気にしないで。
お料理が出来あいの物が中心で口に合わなかったかなぁって心配で・・・」
「それはないよ!
用意してくれたのはどれもみんな美味しいし、嬉しいよ!
でも、そうだね・・・相談したいことがあるから、あとでちょっと時間もらって良い?」
「それは構わないよ。片付けをしたらね」
「美波は片付けしないで良いわよ。
春華ちゃんの誕生日なんだし、春華ちゃんのために時間を使ってあげなさい」
「うん、私とお母さんで片付けるから美波は春華ちゃんのお話を聞いてあげて」
春華ちゃんが相談したいことがあると言うと、お母さんとお姉ちゃんが片付けは引き受けてくれると言ってくれたので、その言葉に甘えることにした。
食事を済ませデザートのケーキまで食べ終えると、お父さん達はお酒を飲み始めて、夏菜お姉ちゃんは勉強をするからと言って一足先に部屋へ戻っていき、冬樹は主役なのにお母さん達にもお酒を飲むように勧めてお姉ちゃんと二人で片付けを始め、冬樹は自分のことは気にせず春華ちゃんの相談に乗ってあげて欲しいと言ってわたしと春華ちゃんを送り出してくれた。
「それで、相談って何かな?」
「あのさ、美波ちゃん。あたしってモテるの?」
「ずいぶん唐突だね・・・でもそうだね、モテると思うよ。
実際、学校だってローラン君とか新谷君は春華ちゃんことが好きだと思うし、あと従兄弟のユッキー君だってそうだと思うよ」
「美波ちゃんにもそう見えるんだ・・・」
絶望した様な表情でつぶやく春華ちゃん・・・
「言いにくいんだけど、春華ちゃんの周りのみんなもそう思っていると思うよ・・・」
「そうなの?」
「うん。ところで、夏菜お姉ちゃんに言われたの?」
「ううん、さっき待っている時にフユに言われた」
「冬樹が?なんか意外だね」
「美晴お姉とのことについて聞いてて、その話の流れでね」
「そうなんだ」
「それでさ、あたしどうして良いのかわからなくなっちゃって・・・特にユッキーは高校進学に合わせてうちで同居することになるし・・・」
たしかに春華ちゃんの迷いはわかる気がする。
自分へ恋愛的な気持ちを向けている相手と同居なんていくら従兄弟でもハードルは高いと思う。
特にユッキー君のことは弟的な位置付けで見ていたのだろうし、どうして良いのかわからなくなってしまう気持ちが生じても不思議はない。
「別に特別意識しなくてもいいんじゃないのかな?」
「どうして?」
「だって、告白されているわけではないでしょ?」
「うん・・・」
「それなら少なくとも告白されるまでは春華ちゃんから何かする必要はないと思う。
もちろん春華ちゃんが好きになって付き合いたいって思うのなら別だけど」
「今のところ、そういった気持ちはないかな」
「だったら、今は春華ちゃんがどうしたいかと、もし告白されたらどうするかを考えれば良いと思うよ」
「うん、ありがとう。
まだユッキーがうちで暮らすまで時間があるし、ローラン君達のことも含めて考えてみるよ。
そう言えば、美波ちゃんは鷺ノ宮君と付き合い始めたじゃない。やっぱりカッコいいから?」
「え?
いきなりだね」
「いいからいいから、参考に聞かせてよ」
「うーん、もちろん前から見た目はカッコいいと思っていたし、今だってカッコいいと思うけど、わたしや仲村先輩や芳川さんにした事を深く反省しているのが感じられる事が一番かな」
「あたしはその鷺ノ宮君を見てないから言葉にするのは難しいけど、反省しているからって良いのかな?」
「反省してたら良くないかな?」
「美波ちゃんが言う鷺ノ宮君が反省しているということを真実とした上で言わせてもらうけど、鷺ノ宮君からしたら美波ちゃんに負い目がある状態なわけじゃない?
それって鷺ノ宮君は美波ちゃんに対して何も言えなくなっちゃって、不満とかできても話し合いもしないで溜め込んじゃって、どうしようもなくなってから爆発して関係が拗れちゃうかなって思うんだ」
「そ、それはあるかもしれないね」
春華ちゃんの指摘は今まで考えなかったけど言われてみればその通りで、今の隆史君はわたしに不満があっても何も言わないで溜め込みそうだし、我慢に我慢を重ねてどうしようもなくなってから不満を爆発させてしまうというのはありそうに思える。
「だからって別れろとか反対とか言うつもりはないけど、普通のカップルよりもバランスを保つのは難しいと思うよ」
「うん、春華ちゃんが言いたいことはわかっていると思うよ。
気を付けて爆発させないように頑張るね」
春華ちゃんの相談を受けていたはずなのに、気が付いたらわたしのこれからのことについて考えさせられることになった。
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