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第241話

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神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆

2月に入り、早くも3日の僕の誕生日当日になった。
今日は学校の友人たちからはお祝いの言葉をもらって、僕とハルの誕生日会は土曜日でハルの誕生日当日である明日行われる事になっている。
参加者の都合を調整したところ明日なら全員が参加できる状況だったのでそうなったけど、美波みなみ大山おおやまさんは僕の誕生日が過ぎてしまうことを気にして申し訳なさそうだったので、僕からしたらお祝いをしてもらえるだけで嬉しいので気にしないで欲しいとお願いをさせてもらっていた。
そして、美波がどうしても当日に祝いたいと言い出して、美晴みはるさんと協力して僕の誕生日当日は神坂家と岸元きしもと家だけの内輪の誕生日会を行う予定になっている。

また、誕生日会には出席しないけれど高梨たかなし先生とみゆきさんのおふたりがおしゃれな掛け時計を贈ってくれた。
気を使わないで欲しいとお願いしたのだけど、那奈ななさんに貸している部屋に居候していることもあってお礼も兼ねてと懇願されてありがたくいただくことにした。
要望を聞かれ美晴さんが新しい家のリビングに飾る掛け時計を探している話をし、それならと贈ってくださった。
誕生日当日はバタバタするだろうと受け取りやすいように前倒しで調整してくれていたので、既に受け取らせてもらっている。
芸術家であるおふたりからの贈り物なので期待していたけれど、それを上回るものをいただけて逆に恐縮してしまっている。
さすがに他の生徒の手前おおっぴらに言葉をかけてくることはなかったけど、昼休みに高梨先生専用の部屋とも言える第2音楽室用の準備室へハルとふたりで呼ばれて、そこでお祝いの言葉をいただいた。


帰宅をすると美晴みはるさんの姿はなく、岸元家へ行って僕らの誕生日会の準備をしている事と呼ばれるまでは自宅か神坂の家で待機しているようにと書かれたメモ紙がリビングのテーブルの上に置かれていた。
スマホアプリのメッセージでくれれば良いものをわざわざ紙に書いて置いていくのは美晴さんにしては珍しいけど、きっとギリギリまで僕に悟られないようにと思っていたのだろうと思う。
張り切ってくれるのは嬉しいけど、今は美晴さんひとりの身体ではないのだし無茶はして欲しくない。

ひとりで家で待っていても手持ち無沙汰なので、実家のハルの部屋へ移動した。

「フユ、どうしたの?
 まだ時間に早いよ」

「そうなんだけど、一人で家に居ても落ち着かなくて勉強に集中もできなかったし、かと言ってひとりでやることもないのでハルに相手してもらおうと思って来ちゃったよ」

「フユもなんだね。
 あたしも美波ちゃんが気合を入れて準備してくれてるみたいだし気になって落ち着かなかったんだ」

「ハルもか。
 やっぱり双子ぼくらはこういったところは気が合うんだね」

「・・・」

ハルは急に黙ってうつむいた。

「ハル?どうかした?」

声をかけると急に僕に抱き着いてきて、顔を胸に埋めてきた。

「本当に良かった・・・こうやって誕生日を一緒にお祝いできて・・・
 あたしが悪かったんだけど、去年の夏にはもう一緒に居ちゃダメなんだと思ってたから・・・
 ずっとフユに甘えてた・・・甘えてたから考えが杜撰になってたし、フユの話を聞こうともしないで一方的に責めた・・・
 それなのに許してくれて・・・本当に嬉しい」

「美晴さんのおかげだよ。あの時は僕も絶望したし、何も信じられないと思ったけど美晴さんが献身的に僕を支えてくれたから家族ハルたちとも関係を戻すことができた」

「そうだね美晴お姉のおかげだね。恩返ししなきゃ」

「美晴さんは恩返しなんてものは望んでないと思うけど、これから出産と育児があるから手伝ってもらえるとありがたいかな」

「そうだね。なんでも協力するよ」

「その時はお願いするね・・・僕が言うのも変かもしれないけど」

「ありがと。
 ところでさ・・・フユは美晴お姉と赤ちゃんができることをしたわけじゃない?」

「言い方!」

「しかも、尻尾まで生やすようなことまでしててさ」

「だから言い方!」

「どういう気持ちでそういう関係になったの?」

おちょくる様な言い回しで言い返しながら話をするのは久し振りで、ハルが僕への負い目の感情が和らいできたことの現れだと思うので、それは良かったと思いつつも触れて欲しくない話題にはたじろいでしまう。

「うーん、最初はけっこう成り行きだったんだよね。
 ほら、僕って精神的に不安定だったじゃない?」

「・・・うん、そうだったね」

「そういう背景があった中で別のトラブルとかち合って、美晴さんが僕に気持ちをぶつけてきてくれたからそれに応えた感じかな・・・受け身だったのは情けないけど、後悔もなければこれからはしっかり美晴さんと支え合って行きたいと思っているよ」

「その気持ちは疑うつもりはないけどさ、でも・・・その、ずいぶんアブノーマルな普通じゃないこともしてるんだよね?」

「まぁ、アレを見られてしまったら何も言い訳できないよね・・・美晴さんの名誉にも関わるから僕からはあまり言えないけど、僕は美晴さんが嫌がることはしてないよ」

「それって・・・察しちゃうよ」

「そこは大人の判断を頼む」

美晴さんは僕との初体験まで性的な事に全然縁がなかった反動があったようで、初体験がきっかけになって性的な欲求が爆発してしまって妊娠が発覚する前から割りと過激なことを求めてきていた。
妊娠がわかってからはお腹の赤ちゃんに影響がないようにと配慮しつつも、その過激なことを求める姿勢は変わらないどころかむしろ増進する勢いで、なんというかずいぶん色々なことをしている。僕も嫌ではないし、美晴さんが悦んでくれることは嬉しいので求めにはできるかぎり応じていた。そのせいか感覚が麻痺してしまったようで、尻尾を生やしても本来あるべき違和感を忘れるくらいにはなってしまっていたのだよね・・・
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