236 / 251
第236話
しおりを挟む
◆岸元美波 視点◆
1月最後の土曜日、仲村先輩がわたしと話がしたいという話を夏菜お姉ちゃんを通じてされて、それに応じる形で会うことになり、その主な内容が隆史君のことなので、それを踏まえて芳川さんにも話を聞いてもらった方が良いだろうということで他の人に話を聞かれず、集まりやすい場所ということで冬樹とお姉ちゃんの家を借りることになった。
芳川さんはまだ知らない男の人が怖いみたいで芳川さんのお兄さんが車で送ってきてくれて、それも車がないのに駐車スペースはある冬樹とお姉ちゃんの家は都合が良かったというのもある。
冬樹たちの家へ着くと約束の時間に余裕を持っていたのにも関わらず芳川さんは到着していてお兄さんと思われる男の人とリビングで待っていた。
「こんにちは、芳川さん。お久しぶりですね。いま、気分は大丈夫ですか?」
「岸元先輩、お久しぶりです。お陰様で今は大丈夫です。
先程先輩のお姉様にご挨拶させていただきましたが、お綺麗な方ですね。
それに神坂先輩とお付き合いされているとか驚きました」
「あはは、ありがとう。自慢のお姉ちゃんなんだ。
そういう芳川さんのお隣にいらっしゃるのはお兄さん?」
「はい、わたしの兄です」
芳川さんに呼応してお兄さんは会釈をしてくれた。
「お外に駐めてあった車はお兄さんのものですか?」
「いや、あれは親の車で自分の車は持ってないんですよ。
今日は椎奈をここへ連れてくるのに借りてきました」
「そうなんですね。それにしても岸元の車よりも立派な車で、駐車場にすごい車が駐まってるって思いました」
「いや、あれは大きいだけでそんなに高い車ではないですよ」
「お兄ちゃん、謙遜しても岸元先輩がどう応じて良いか戸惑われてしまったじゃないですか」
芳川さんのお兄さんのへりくだりった言葉に対してどう応えれば良いのか迷ってしまって少し固まったら芳川さんがフォローをしてくれた。
「夏菜お姉ちゃんが駅まで仲村先輩を迎えに行ってくれてるんだけど、もうすぐ着くって連絡があったからもう少しだけ待ってて。
ところで今日はどんな話をするかは聞いてる?」
「それが何も聞いていないです。
ただ、仲村先輩がわたしにも関係することだから聞いて欲しいということは聞いています」
「そっか、芳川さんは聞かされていないんだね」
「ただ、岸元先輩と仲村先輩ということでなんとなく想像は付いています」
「そう、想像できてた?」
「え?仲村先輩!?」
わたしが芳川さんと話している間にいつの間にか仲村先輩と夏菜お姉ちゃんが到着していた。その後ろを見ると冬樹が玄関から戻ってきているので、夏菜お姉ちゃんがインターホンを鳴らさずにスマホで冬樹へ連絡して迎え入れてもらっていたみたい。
「岸元さんも芳川さんも今日は時間を作ってもらってありがとう」
「そんな気にしないでください。むしろ、わざわざお呼び立てするような事になってしまって申し訳ないです。
それと、第一志望の大学への合格おめでとうございます」
「お祝いの言葉、ありがとう。
それと話をしたいとお願いしたのも、できるだけ他の人に聞かれない場所が良いと希望したのも私だし、その条件に適う場所を用意してもらえてむしろ感謝だよ」
「それは、冬樹達にお願いしただけですので・・・」
「それだって他にこんな落ち着いて、話ができる場所をすぐに提供してもらえて助かったのは事実だよ」
「それだって夏菜お姉ちゃんが冬樹にお願いしてくれたのでわたしは何もしてないですし・・・」
「たしかにそれは神坂さんのおかげかもしれないけど、それでもだよ。
それと、芳川さんもまだ外出するのも嫌だろうに足を運んでくれてありがとう」
「いえ、わたしも仲村先輩が話したいという事が気になりますし、声を掛けていただいてありがたいです。
それに、神坂先輩がお家を使わせてくださったおかげで駐車場を気にせず兄が車を出してくれましたし助かりました」
今日の話し合いの参加者が全員揃ったところで、冬樹とお姉ちゃんがわたし達来客への飲み物を用意してからリビングを出ていき、残ったのは夏菜お姉ちゃんと仲村先輩と芳川さんとそのお兄さんとわたしだけになった。
芳川さんのお兄さんも気を遣って車で待機すると言ってリビングから出ていこうとしたのだけど、仲村先輩が芳川さんが話の途中で気分を悪くしたらフォローしてあげて欲しいと引き止めたので居心地悪そうにしつつも見守ってくれている。
「今日芳川さんにも来てもらって話したかったのは、岸元さんが隆史と付き合い始めたという事についてなんだ」
「ええ!?岸元先輩、鷺ノ宮先輩と付き合い始めたんですか!?」
「そう神坂さんから聞いたのだけど、本当のことなんだよね?」
夏菜お姉ちゃんから聞いていたので予想はしていたけど、やっぱり仲村先輩は隆史君とのことが聞きたかったみたいだった。
「はい、お正月休みの時に会ってその時から付き合い始めました」
「それは岸元先輩さんから告白したの?」
「結果的にはそうですね。
その場には凪沙さん・・・二之宮凪沙さんも居たのですけど」
「二之宮さんとっ!?」
凪沙さんの名前を出すと仲村先輩は憤って大きな声を上げた。
「はい、仲村先輩がおっしゃりたいことはわかると思いますが、凪沙さんも隆史君も深く反省していてやり直そうとしているのでわたしはいつまでも過去のことで憎めなくて・・・」
「声を荒らげて、ごめんなさい。神坂さんからも聞いてはいたけど岸元さんから聞いたら・・・それで、二之宮さんと交流があって二之宮さんを介して隆史と会って付き合った感じ?」
「だいたいはそうですが、凪沙さんが言うには元々隆史君はわたしの事が好きだったというので、それだったらというのもありました」
「そうだったのね。教えてくれてありがとう」
「ちょっと待ってください。
岸元先輩も、その・・・めちゃくちゃに乱暴なことをされたのですよね?」
仲村先輩が落ち着いて話を締めると、芳川さんが聞きづらそうに質問してきた。
「・・・うん。だけど、さっきも言った通り反省していたし心の底から申し訳なかったと思ってくれていることが伝わったから信じてもいいかなって思ったの」
「それは、その・・・すごいですね。わたしにはそう思うことができないです」
「すごいかどうかはわからないよ。
ただね、冬樹が冤罪で悪者にされていた時にちゃんと向き合わないで逃げちゃった事はずっと後悔してて、周りの目を気にしないで本人とちゃんと向き合わないとダメだと思ったの。だから隆史君とも向き合ってみてそれも良いかなと思ったんだ」
「ありがとうございます。岸元先輩には岸元先輩のお考えがあってのことだということは理解できました」
「あの、岸元さん。僕からもひとつお聞きしたいのですが良いですか?」
芳川さんが話をまとめたところで、今度は今まで言葉を発さずにわたし達を見守っていたお兄さんがわたしに質問があると声を上げた。
「もちろん良いですよ。なんでしょうか?」
「ありがとうございます。二之宮さん、というよりは鷺ノ宮君のお姉さんの那奈さんの引越し先をご存知なのですか?
わかるのなら教えてもらいたいののですが・・・」
「知っていますが、わたしからは教えることはできません。
少なくとも那奈さん本人から了承を得ないと・・・私は直接連絡先を知らないので・・・って、お姉ちゃんが知っているのでちょっと聞いてもらいますね」
その後お姉ちゃんに那奈さんへ確認の連絡をしてもらい、那奈さんからは教えないで欲しいという返答をもらってお兄さんにお伝えして、残念そうではあったけれどもわたしとお姉ちゃんにお礼を言って、この話題には触れないで終わった。
1月最後の土曜日、仲村先輩がわたしと話がしたいという話を夏菜お姉ちゃんを通じてされて、それに応じる形で会うことになり、その主な内容が隆史君のことなので、それを踏まえて芳川さんにも話を聞いてもらった方が良いだろうということで他の人に話を聞かれず、集まりやすい場所ということで冬樹とお姉ちゃんの家を借りることになった。
芳川さんはまだ知らない男の人が怖いみたいで芳川さんのお兄さんが車で送ってきてくれて、それも車がないのに駐車スペースはある冬樹とお姉ちゃんの家は都合が良かったというのもある。
冬樹たちの家へ着くと約束の時間に余裕を持っていたのにも関わらず芳川さんは到着していてお兄さんと思われる男の人とリビングで待っていた。
「こんにちは、芳川さん。お久しぶりですね。いま、気分は大丈夫ですか?」
「岸元先輩、お久しぶりです。お陰様で今は大丈夫です。
先程先輩のお姉様にご挨拶させていただきましたが、お綺麗な方ですね。
それに神坂先輩とお付き合いされているとか驚きました」
「あはは、ありがとう。自慢のお姉ちゃんなんだ。
そういう芳川さんのお隣にいらっしゃるのはお兄さん?」
「はい、わたしの兄です」
芳川さんに呼応してお兄さんは会釈をしてくれた。
「お外に駐めてあった車はお兄さんのものですか?」
「いや、あれは親の車で自分の車は持ってないんですよ。
今日は椎奈をここへ連れてくるのに借りてきました」
「そうなんですね。それにしても岸元の車よりも立派な車で、駐車場にすごい車が駐まってるって思いました」
「いや、あれは大きいだけでそんなに高い車ではないですよ」
「お兄ちゃん、謙遜しても岸元先輩がどう応じて良いか戸惑われてしまったじゃないですか」
芳川さんのお兄さんのへりくだりった言葉に対してどう応えれば良いのか迷ってしまって少し固まったら芳川さんがフォローをしてくれた。
「夏菜お姉ちゃんが駅まで仲村先輩を迎えに行ってくれてるんだけど、もうすぐ着くって連絡があったからもう少しだけ待ってて。
ところで今日はどんな話をするかは聞いてる?」
「それが何も聞いていないです。
ただ、仲村先輩がわたしにも関係することだから聞いて欲しいということは聞いています」
「そっか、芳川さんは聞かされていないんだね」
「ただ、岸元先輩と仲村先輩ということでなんとなく想像は付いています」
「そう、想像できてた?」
「え?仲村先輩!?」
わたしが芳川さんと話している間にいつの間にか仲村先輩と夏菜お姉ちゃんが到着していた。その後ろを見ると冬樹が玄関から戻ってきているので、夏菜お姉ちゃんがインターホンを鳴らさずにスマホで冬樹へ連絡して迎え入れてもらっていたみたい。
「岸元さんも芳川さんも今日は時間を作ってもらってありがとう」
「そんな気にしないでください。むしろ、わざわざお呼び立てするような事になってしまって申し訳ないです。
それと、第一志望の大学への合格おめでとうございます」
「お祝いの言葉、ありがとう。
それと話をしたいとお願いしたのも、できるだけ他の人に聞かれない場所が良いと希望したのも私だし、その条件に適う場所を用意してもらえてむしろ感謝だよ」
「それは、冬樹達にお願いしただけですので・・・」
「それだって他にこんな落ち着いて、話ができる場所をすぐに提供してもらえて助かったのは事実だよ」
「それだって夏菜お姉ちゃんが冬樹にお願いしてくれたのでわたしは何もしてないですし・・・」
「たしかにそれは神坂さんのおかげかもしれないけど、それでもだよ。
それと、芳川さんもまだ外出するのも嫌だろうに足を運んでくれてありがとう」
「いえ、わたしも仲村先輩が話したいという事が気になりますし、声を掛けていただいてありがたいです。
それに、神坂先輩がお家を使わせてくださったおかげで駐車場を気にせず兄が車を出してくれましたし助かりました」
今日の話し合いの参加者が全員揃ったところで、冬樹とお姉ちゃんがわたし達来客への飲み物を用意してからリビングを出ていき、残ったのは夏菜お姉ちゃんと仲村先輩と芳川さんとそのお兄さんとわたしだけになった。
芳川さんのお兄さんも気を遣って車で待機すると言ってリビングから出ていこうとしたのだけど、仲村先輩が芳川さんが話の途中で気分を悪くしたらフォローしてあげて欲しいと引き止めたので居心地悪そうにしつつも見守ってくれている。
「今日芳川さんにも来てもらって話したかったのは、岸元さんが隆史と付き合い始めたという事についてなんだ」
「ええ!?岸元先輩、鷺ノ宮先輩と付き合い始めたんですか!?」
「そう神坂さんから聞いたのだけど、本当のことなんだよね?」
夏菜お姉ちゃんから聞いていたので予想はしていたけど、やっぱり仲村先輩は隆史君とのことが聞きたかったみたいだった。
「はい、お正月休みの時に会ってその時から付き合い始めました」
「それは岸元先輩さんから告白したの?」
「結果的にはそうですね。
その場には凪沙さん・・・二之宮凪沙さんも居たのですけど」
「二之宮さんとっ!?」
凪沙さんの名前を出すと仲村先輩は憤って大きな声を上げた。
「はい、仲村先輩がおっしゃりたいことはわかると思いますが、凪沙さんも隆史君も深く反省していてやり直そうとしているのでわたしはいつまでも過去のことで憎めなくて・・・」
「声を荒らげて、ごめんなさい。神坂さんからも聞いてはいたけど岸元さんから聞いたら・・・それで、二之宮さんと交流があって二之宮さんを介して隆史と会って付き合った感じ?」
「だいたいはそうですが、凪沙さんが言うには元々隆史君はわたしの事が好きだったというので、それだったらというのもありました」
「そうだったのね。教えてくれてありがとう」
「ちょっと待ってください。
岸元先輩も、その・・・めちゃくちゃに乱暴なことをされたのですよね?」
仲村先輩が落ち着いて話を締めると、芳川さんが聞きづらそうに質問してきた。
「・・・うん。だけど、さっきも言った通り反省していたし心の底から申し訳なかったと思ってくれていることが伝わったから信じてもいいかなって思ったの」
「それは、その・・・すごいですね。わたしにはそう思うことができないです」
「すごいかどうかはわからないよ。
ただね、冬樹が冤罪で悪者にされていた時にちゃんと向き合わないで逃げちゃった事はずっと後悔してて、周りの目を気にしないで本人とちゃんと向き合わないとダメだと思ったの。だから隆史君とも向き合ってみてそれも良いかなと思ったんだ」
「ありがとうございます。岸元先輩には岸元先輩のお考えがあってのことだということは理解できました」
「あの、岸元さん。僕からもひとつお聞きしたいのですが良いですか?」
芳川さんが話をまとめたところで、今度は今まで言葉を発さずにわたし達を見守っていたお兄さんがわたしに質問があると声を上げた。
「もちろん良いですよ。なんでしょうか?」
「ありがとうございます。二之宮さん、というよりは鷺ノ宮君のお姉さんの那奈さんの引越し先をご存知なのですか?
わかるのなら教えてもらいたいののですが・・・」
「知っていますが、わたしからは教えることはできません。
少なくとも那奈さん本人から了承を得ないと・・・私は直接連絡先を知らないので・・・って、お姉ちゃんが知っているのでちょっと聞いてもらいますね」
その後お姉ちゃんに那奈さんへ確認の連絡をしてもらい、那奈さんからは教えないで欲しいという返答をもらってお兄さんにお伝えして、残念そうではあったけれどもわたしとお姉ちゃんにお礼を言って、この話題には触れないで終わった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
166
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる