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第234話

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岸元美晴きしもとみはる 視点◆

冬樹ふゆきくんが一時的にえっちをできなくなっていた時に、コスプレで雰囲気を変えたらどうかと考えてちょっとえっちなメイド服や露出が多いバニースーツやなんちゃってチャイナドレスにナース服などを買っていて、その時に『猫ちゃん変身セット』というものも目に付き、どういったものなのかを確認しないで見た目の可愛さに惹かれて購入していた。

頭に着けるネコ耳のカチューシャはありきたりの普通のもので、何ならテーマパークで園内を巡る時に気持ちを高揚させるために装着するものと大差がない。問題は尻尾で、これは本体の先に人体へ埋め込む先端があって、要はそれが入るところへ埋め込むことで尻尾を模した部分がきれいに外に出るという作りになっているものだった

これを買った時はそうとは知らず、持っているだけでも恥ずかしく思って冬樹くんにも知られないようにしまっておいた。


私が妊娠していることがわかってから冬樹くんは私の身体とお腹の赤ちゃんのことを気遣ってくれて、えっちなことはしないように言葉にすることすらしなくなったのだけど、気遣われる側の私が初体験まで全然興味がなかった性に触れたことの反動で急にえっちなことへの興味が増していたのにお預け状態になっていたことへのフラストレーションでえっちなことをして気持ちよくなりたいと思うようになり、赤ちゃんには影響ないところで普通じゃないえっちなことをする様になって、その流れで『猫ちゃん変身セット』の封印を解いた。

初めて見た時はとんでもないものだと思ったけれど、実際に着けてみると猫耳と尻尾が可愛いし、メイド服などのコスプレ衣装と合わせるとすごく可愛い見た目になるので気分が上がったし、冬樹くんも・・・尻尾の取り付け方にはノーコメントだったけど・・・猫ちゃん姿を可愛いと褒めてくれたので気に入っていた。


そして、先日実家から引き取った荷物を整理していたら高校の時に着ていた制服が出てきたので、今度は『猫ちゃん変身セット』とこの制服を組み合わせて見てもらおうと思ってた。

今日はずっと家に居て、冬樹くんがそろそろ返ってくるという時間になって手持ち無沙汰になっていたので、先日冬樹くんに見てもらおう考えた『猫ちゃん変身セット』と高校の制服の組み合わせ姿で出迎え驚かせようと着替えた。


帰宅してきた冬樹くんが玄関の鍵を解錠する音が聞こえたので猫ちゃん秀優しゅうゆう女子姿で玄関へ行くと冬樹くんだけでなく玲香れいかさん明良あきらさん美波みなみ春華はるかちゃんまでいて、恥ずかしさで混乱してすぐに部屋へ戻って普通の服へ着替えて冬樹くんが通してくれた来客のみんなの前へ姿を見せた。


聞くと玲香さんと明良さんとは明日だと思っていた約束が今日だったということで、美波は引き取った荷物の忘れ物を持ってきてくれたということだった・・・恥ずかしい姿を見られたけど、ちょっと間が悪かっただけだと思って応対しようと思ったら、明良さんから猫ちゃん尻尾について質問されて思考が凍った。

慌ててて尻尾を取るのを忘れていた・・・どうやって誤魔化そうかと考える間もなく美波がなんの気なしに私のスカートを捲って尻尾の付け根の部分を晒してしまい、みんなに見られてしまった。


ただただ恥ずかしくて顔から火が出る思いだったけど、美波と春華ちゃんが冬樹くんを誂って冬樹くんもそれに困った雰囲気を出しながらも笑顔で応じていて、去年の夏に再会してからは見たことがなかった冬樹くんと美波と春華ちゃんのじゃれ合いを見れたのは良かったと思う・・・私のお姉ちゃんとしての尊厳は地に落ちたような気がするけど。



津島つしま玲香 視点◆

アキラくんがみはるんとアタシに相談があるというので、みはるんの家で話をしようとアポを取っていた。

当日である今日の夕方、みはるんの家へ向かっていたら最寄り駅で冬樹君とその双子の妹ちゃんとみはるんの妹ちゃんに遭遇した。初対面だったアキラくんが自己紹介をしあってから、冬樹君に連れられて勝手知ったる神坂家へ着くと、玄関でとんでもない姿のみはるんに出迎えられてお腹をかかえて大笑いしてしまった。大学生が今更制服を着てても似合わないからではなく、似合いすぎていたからだ。

みはるんは表情や大学での話し方で雰囲気こそお姉さんという感じがするけど、見た目は身長が低いし顔の作りは童顔なのでネコ耳まで含めてよく似合っていて、今まで見掛けたどのコスプレ女子よりもキマっていたと思う。ただ本人としては恐らく冬樹君以外に見られるのは想定外だったようで逃げてしまったけど・・・


着替えてきたみはるんをよく見ると玄関の時は気付かなかったけど猫の尻尾が生えていて、アキラくんがそれについての疑問を口にし、みはるんの妹ちゃんがスカートを捲ってその付け根に注目するとバンドとかで留めているのではなくて直接生えているように見えた・・・見た瞬間には気付かなかったけど、直接差し込んでいてそこまでするのかと驚いた。

その後は妹ちゃん達が冬樹君を誂ってからすぐにアタシ達に気を遣って帰っていって、一旦落ち着かせてから本題のアキラくんの相談が始まった。


アキラくんの相談はいつもの佐々木ささき先輩との惚気のろけかと思いきや就職活動のことで、前にみはるんと話していた事とも関連するからみはるんと話したかったらしい。


相談が終わってから、先程のことをぶり返して誂ってみた。


「たしかに恥ずかしかったですし、見られたくなかったのは間違いないのですけど、結果的には悪くはなかったですよ」


「え?どうして?」


「冬樹くんと妹たちのやり取りを見てましたか?」


「うん、なんか『変態だ』って誂ってたよね」


「そうなんですけど、ちょっと前までだったらそんな事は言えなかったと思うんです。
 美波も春華ちゃんも冬樹くんに対して悪いことをしたって負い目を感じててそういう事を言える様な心境じゃなかったですから・・・」


「そっか、たしかにあの誂い方は負い目を感じてたらできない感じだったね。そういう意味ではみはるんの狙い通りだったわけか」


「狙ってないですし、不本意には違いないのですけどね。結果オーライというのでしょうか」


「まぁ、どっちにしても身内との関係が良くなったのなら良かったじゃない」


「そうですね・・・そうとでも思っていないと、やりきれないですね」


「あはは。たしかにね」


「あのっ、美晴さん。いいかな?」


相談が終わってアタシが誂い始めてから黙って見てたアキラくんが唐突に真剣な眼差しで切り出した。


って、すぐに入るのかな?」


「え!?」


「何言ってるの?アキラくん!?」


尋ねられたみはるんもアタシも唐突な質問に驚かされた。


雷斗らいとさんが持ってたにああいったネコ耳を付けた制服姿の女の子が表紙の本があったのを思い出して、その格好をしてあげたら喜ぶかなぁって・・・思って」


アキラくんは先輩と付き合い始める前までそんな気配を見せてなかったけど、頑張って尽くそうとする性格だったみたいだ。
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