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第223話

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神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆

クリスマスが過ぎ、僕らの引っ越しも鷺ノ宮那奈さぎのみやななさん達の引っ越しも予定通り問題なく行われた。

僕らの引っ越しの翌日にハル達が顔を出してくれて、その時一緒に来ていた幸博ゆきひろ君と美晴みはるさんとを互いに紹介した。美晴さんもすぐに幸博君がハルへ対して思慕の情を持っていることを見抜いて微笑ましく思ったらしく、やはりわかりやすいのだなと思った。

その際に話題にあがったアニメの上映会のチケットを幸博君が2枚持っていて1枚余るという話をし、それに対して美晴さんが行きたいと言ったので譲ってもらうことになり美晴さんも行くことになった。妊婦である美晴さんが人の多いところへ行く事は少し不安もあったけど、いくらなんでも気にし過ぎだと思い直した。



また、引っ越しと同時に防犯カメラの見た目だけの偽物モックアップが届いたので部活を装って入れ替えてきて、余った分は適当な教室へ設置してきた。これで学校で公になっても深く追求されないだろう。



そうして今年もいよいよ終わりだと思っていたら、高梨たかなし先生の元旦那さんである春日かすがさんからメッセージの連絡があって高梨先生に取り次いで欲しいというお願いをされた。



岸元きしもと美晴 視点◆

無事引っ越しが終わり、荷物が多くなかったことも有り1日ちょっとでほとんど片付いて実家から美波みなみ春華はるかちゃん達が新居の様子を見にやってきて、神坂姉弟妹きょうだいの従兄弟の幸博君を紹介してもらった。

ひと目見て春華ちゃんの事が好きなのがわかるくらいにわかりやすい男の子で微笑ましく思い、冬樹くんに聞いてもやっぱりわかっているようで昔からずっと春華ちゃんの事を好きでいるみたいだ。春華ちゃんは最近色々な男子からモテているみたいだからライバルが多くて大変だろうけど、頑張って欲しいと思う。

また、話の流れで今度冬樹くんも行くアニメの上映会のチケットが1枚余っているという話になって、余っているなら欲しいとお願いしたら快く譲ってもらえた。

たぶん、来年になったらお腹が大きくなってみんなで遊びに行くことも難しくなるだろうし、出産したらそれこそこどもが第一でゆっくり遊びに行くなんてできやしないだろうからと思い冬樹くんのクラスメイトの集まりだとわかっていても混ぜてもらうことにした。

他に友達がいるとしても冬樹くんとデートができるのは貴重な機会なのでそういう意味でも譲ってもらえて良かったと思う。



◆高梨百合恵ゆりえ 視点◆

クリスマスから何度か悠一ゆういちさんから会って話をしたいという要望の連絡を何度かもらっていて『今更話すことなどない』と断り続けていたけど、悠一さんが冬樹君へ取り次ぎをお願いしたという連絡を冬樹君からもらい、流石に冬樹君を巻き込まれてしまっては無視できないと渋々会うことにした。

冬樹君は気にしないで欲しいと言ってくれていたけど、言葉通りに気にしないわけにはないかないし、二度と同じ事をさせないようにしないといけない。


「百合恵さん、私が悪かったわ、この通り」


悠一さんについてきたお義姉ねえさんが深く頭を下げ謝罪の言葉を口にしている。

これまでの付き合いで他人へ謝る印象のなかった人がその様な事をしているので内心では驚いている。

話をまとめると、お義姉ねえさんが悠一さんの後妻に推した後輩は悠一さんの再婚の前から付き合っていた男の人がいて再婚後もずっと付き合い続けていたらしく、更には悠一さんがこどもを作りにくい体質であったこともあり、私のせいでこどもができないなどと言っていたことも悪かったと思ってくれているらしい。

悠一さんもその事を深く反省していると言い、お義姉ねえさんと同様に私への謝罪をしてくれている・・・悠一さんのこの様な神妙な表情は初めて見たかもしれない・・・しかし、今更言われてもという気持ちがある。

悠一さんも私の気持ちがわかっているのか謝罪をするだけでりを戻したいとは口にしないし、お義姉ねえさんが口にした時もたしなめるほどだった。ただただ本当に今までの非礼を詫たいという思いだけで会いたがっていたように思える。



「百合恵は今後どうしていくんだ?
 誰かい人でもいるのか?」


「私には天職の音楽教師がありますから・・・幸い、みゆきと一緒に暮らすことになりましたし、今は充実していますよ」


「・・・そうか。百合恵が充実しているなら良かった・・・」


正直なところ、当て擦りの意図もあって言ったことだけれどそう言った含んだ意味は意に介さず言葉の通りに受け止めた様で、逆に意地悪く言った自分が居た堪れなくなる。


義姉ねえさんも交え悠一さんと私の3人で世間話をして別れることとなった。



もう、話したくもないと思っていたけど、自分の非を認めしおらしい態度の悠一さんと対していたらりを戻しても良いのではないかと思ってしまった。



梅田香織うめだかおり 視点◆

「ねぇねぇうたちゃん。明後日の上映会の後なんだけどさ、お友達ちゃんに控室に来てもらって会えないかな?」


学校が冬休みに入り、アフレコも年内最後となった今日の収録が終わったところで、雑談の流れで朱乃あけのさんからお話をされました。


「お友達と仰るのは上映会に来る予定ののことを見破った方のことですよね?」


「うん、そう。ダメかな?」


「ダメということはないと思いますが、他に同行される方が何人もいらっしゃるので、それほど長い時間は難しいと思いますがよろしいでしょうか?」


「うん、いいよ」


「承知しました。少し時間を割いてもらえないか聞いておきますね」


「よろしくね!
 唄ちゃんのお友達ちゃん、楽しみだなぁ」
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