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第205話

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岸元美波きしもとみなみ 視点◆

午後一の授業が終わってスマホを確認すると、鷺ノ宮さぎのみや君のお姉さんから通話着信とメッセージ、岸元うちのお姉ちゃんからもメッセージが入っていたので、確認すると凪沙なぎささんが病院から姿を消してしまったという内容で、慌てて鷺ノ宮君のお姉さんへ掛け直したけど出てくれなかった。

とりあえず、メッセージを見たこととその件で放課後になったらもう一度電話するという内容のメッセージを送って、他のクラスメイトには聞こえないように小声で冬樹ふゆきや春華《はるか》ちゃんにも伝えたら、冬樹にはお姉ちゃんからメッセージが届いていたようで、ほぼ同時に知っていたみたいだったので反応が薄かったけど、春華ちゃんは思わず声を出してしまうくらい驚いた。


「しー!春華ちゃん、しーだよ!」


「ごめん、でも恐れていたことが起きたって感じじゃない?」


「そうなんだよね。お姉さんもあんなに心配してたのに・・・」


「でも、居なくなったのは事実なんだよね?」


「そうみたい」


「じゃあ、どうするか、どうしたいかを考えないとダメだよ」


「そうだよね・・・そう言えば、このこと高梨たかなし先生も知ってるかな?」


「連絡が行ってそうだとは思うけど・・・美波ちゃんメッセージを送ってみたら?」


「うん、そうだね。送ってみる。
 とは言え、どちらにしてもあと1時間授業があるし、SHRの時には先生が来るだろうし、放課後にまた時間もらえるかな?」


「ハルカ、ミナミ、どうしました?
 なにか良くないことがあったみたいですよ?」


春華ちゃんと小声で話をしていたらローラン君が声を掛けてきた。


「うん、昼休みに高梨先生に相談していたことの件で問題が起きちゃって・・・」


「オー、それは大変ですね。
 ボクにできることは何でもしますから言ってくださいね!」


「ん?今なんでもするって言ったよね?」


「は、はい?もちろんハルカ達のために何でもしますよ?」


「春華ちゃん、ローラン君にそういうネタ振らないの!」


「ごめん、場を和ませたくて・・・」


説明したわたしへローラン君が返してくれた言葉に悪ノリする春華ちゃんを諌めたけど、内心ではチンプンカンプンなローラン君の表情と相まってちょっと面白かった。


「それはどういうネタなんですか?」


「うんとね、日本で有名な宅配業者と受取人のやり取りのコントみたいなものの冒頭のセリフと言えば良いかな?」


「ハルカが楽しんでいるものならボクも見てみたいです」


「うーん、日本に詳しくならないと楽しめないと思うんだよね・・・だからローラン君が日本に詳しくなってから見た方がいいと思うよ」


春華ちゃん・・・つい口にしちゃったけど、さすがにダメだったって気付いたみたいで誤魔化そうとしている。


「そんな話より、ローラン君。もしかすると人探しをしないといけなくなるかもしれないから、その時は協力してもらえると嬉しいかな?」


「わかりました、ミナミ。その人探しの時は協力しますね」


「うん、ありがとう」


変な話を有耶無耶にできたからか春華ちゃんから両手を合わせた『ありがとう』の意味のジェスチャーを送ってきた・・・そんなことなら最初から言わなければいいのに・・・



◆鷺ノ宮那奈なな 視点◆

病院へたどり着き、看護師さんから話を聞いて、病院の所在地を含む地域の警察署へ電話をし捜索願の出し方を説明されてから、美波さんと高梨先生と美晴みはるさんに電話をし、出てくれた美晴さんには口頭で説明し、美波さんと高梨先生へはメッセージを送り終えてから、警察署への移動を開始した。


とにかく気が気ではなく警察へ行っている時間があったら探しに行った方が良いのではないかとも考えてしまい、とにかく思考が上手くまとまらないけど、警察署へたどり着いて所定の手続きを行った。

最近の経緯を説明すると事情を勘案して特異行方不明者という扱いで探してくださるということで、警察の用語はよくわからないけど積極的に探してもらえそうと少し安堵した。


警察を出てスマホを確認すると美波さんと高梨先生から不在着信とメッセージが届いていて、高梨先生へ電話したら丁度美波さんも一緒に居て凪沙なぎさのことを探そうと友人にも協力をしてもらえる話になっているらしく心配してくれる人がいる事を改めて嬉しく思った。


もう一度病院へ戻って状況が変わっていないかと、病室ももう一度確認してみようと思う。



◆二之宮凪沙 視点◆

「・・・お嬢さん、こんなところで寝てちゃダメだよ」


病院のスタッフと思われる中年女性に揺すり起こされた。


「すみませんでした」


「それは良いんだけど、なんでこんなところで寝てたの?」


「看護師さんに検査するからこの待合室で待っているようにって言われてて」


「なるほどね・・・たしかにこの部屋はあったかいから寝ちゃうわね。
 しかしここは今は使われていない待合室で、見ての通り毛布なんかの予備を置いてる部屋になってるよ」


たしかにスタッフの女性が言うようにこの待合室の三分の一くらいは毛布やシーツなどが畳んでおいてあった。


「すみません、間違えてしまって」


「良いよ良いよ。それより、お嬢ちゃん検査なんだろ?行かなくて大丈夫かい?」


「そうですね。今の時間を教えていただいてよろしいですか?」


「ああ、5時ちょっと前くらいだね」


「ええ?5時ですか?」
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