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第180話
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◆高梨百合恵 視点◆
春華さんから送られてきた動画を校長先生たちへ共有したら最悪の場合として退学させられる事も考えられるけど、できたらちゃんと更生してちゃんと卒業してもらいたいと思っている。
そう考えると内々で話をして纏めてしまいたい気持ちも湧いてきてしまうけど、それは春華さん達が訴え出ようとしたことを思いとどまらせた上でやってしまうと不義理になる。
そうなると、然るべき対応をした上でできるだけ穏当な処罰で済ませてもらえるように取り計らってもらうようにするしかないという結論に至った。
校長先生と教頭先生へ動画を見せたら、主要な先生方を招集して会議を行われ、今学期中の停学が決まってしまった。しかも停学によって期末テストを受けられなくなるのだけど、そのための救済措置は行わず留年が確定となるため実質的には退学を促している様なものだった。
また教職員の責任については塚田先生の指導不足とされ、校長先生と教頭先生が監督者としての責任を負うこととなった。
話は驚くほど早く進み、わたしは担任代行であるにも関わらず問題の生徒達は生徒指導担当の大塚先生や学年主任の田中先生の預かりとなって彼をふた目と見ることなく教室から姿を消し、今後もわたしが彼らと話す機会は失われてしまった。
悪いのは性的な被害を受けた岸元さんを揶揄する様な事を行った彼だけど、更生の機会もなく事実上の退学処分は重いのではないかと思って年齢の近いよく雑談をする先生方に話してみたら、夏の一件で炎上に過敏になっていて揉み消したとなると後でどんな問題に発展するかわからないから厳しく対応せざるを得ないという様な説明をされた。
わたしはSNSを家族や友人との連絡以外では使わないから良くわからないのだけど、一度の出来心での罰則が重いように思った。
放課後になり、恐らく撤去されることになるであろう空席に虚しさを感じながらSHRを終えると春華さんがわたしの元へやってきた。
「対応していただいて、ありがとうございました・・・もしかして、先生は気に病まれていませんか?」
「そうね・・・たしかに厳しかったのではないかという思いはあるし、気がかりですね・・・」
「でも、あたしは美波ちゃんとフユが大事なので感謝してます。
先生もあまり気にしないでもらえればと思います」
「そうですね・・・ありがとうございます」
◆二之宮凪沙 視点◆
絵画モデルの話をしてもらった次の日である昨日、夏菜さんから急だけど募集があるという連絡をもらっていた。元々予定していたモデルの方が病気になってしまい急遽穴が空いてしまったための代わりのモデルを探していたところだったと言うことで、渡りに舟と引き受けさせてもらった。
未成年のため同意書を書いてもらわないといけなかったのだけど、夏菜さんは那奈さんへの説明で夏菜さんが知り合いに頼まれたので自分から私へ頼んだ格好にして私からやりたいと言った事を伏せてくれたし、まだ髪が短いままの私のためにウィッグを手配して当日の朝に受け取れる様にしてくれもした。私に対して思うところがあるだろうに、面倒見が良い方だと思う。
デッサンのために体のラインが出るように薄い服を着るように指定されたもののヌードになるわけでもなく、薄い服とは言っても現地で着替えれば良かったので寒さに震えることもなかったけど、休憩を挟みつつとは言え同じ姿勢を長時間し続けることは話に聞いてイメージしていたよりも大変だった。
モデルの時間が終わり着替えて主催の方から報酬を受け取りお礼と挨拶をした際には良かったら今後もという話をしてもらい、連絡先の交換をさせてもらった。挨拶も終わり帰宅し始め、駅へ向かっている最中に声を掛けられた。
「凪沙ちゃん、いや『亜梨沙』ちゃんって言った方が良いかな?」
振り向くと、さっきの絵画モデルの現場で参加していた1人の男性だった。開始前の挨拶で二之宮という名字は名乗ったけど凪沙という名前は名乗っていないし、ましてや偽名の亜梨沙など呼ばれるまで忘れていた。
「何のことでしょうか?」
「大丈夫。しらばっくれててもわかってるから、さ」
「おっしゃっている事が理解できないのですが?」
「秀優高校2年、二之宮凪沙ちゃんでしょ?
ひと目見てわかったよ、ははっ。
君が輪●されてる動画は一瞬で削除されたけど、ちゃんとダウンロードしてたから最近では一番お世話になってるよ」
「なので、おっしゃっている・・・」
「だからわかってるって言ってるでしょ?
亜梨沙ちゃんさぁ。学校のお友達との動画だけじゃなくてエンコーオジサンに盗撮されてたのもあるから」
「何をおっしゃりたいのですか?」
「いやぁ、俺とも楽しまない?
あんなガキどもやオッサンよりも気持ちよくさせてあげられるよ」
「お断りします」
「意味わかってる?
凪沙ちゃん、またモデルやるんでしょ?
次来た時、皆の見る目が変わっちゃってるかもよ?」
「それがなにか?
お好きになさったら良いのでは?
私は急いでますので、これで失礼します!」
今の生活がやさしいもので居心地が良いので忘れかけていたけど、過去は消えないし時として牙を剥いてくる。私が撒いてきた種が萌芽し絡みついてくる・・・せっかく良いお話だったけれど、ご迷惑をおかけする可能性があるからには、これ以上お世話になることはできない。
春華さんから送られてきた動画を校長先生たちへ共有したら最悪の場合として退学させられる事も考えられるけど、できたらちゃんと更生してちゃんと卒業してもらいたいと思っている。
そう考えると内々で話をして纏めてしまいたい気持ちも湧いてきてしまうけど、それは春華さん達が訴え出ようとしたことを思いとどまらせた上でやってしまうと不義理になる。
そうなると、然るべき対応をした上でできるだけ穏当な処罰で済ませてもらえるように取り計らってもらうようにするしかないという結論に至った。
校長先生と教頭先生へ動画を見せたら、主要な先生方を招集して会議を行われ、今学期中の停学が決まってしまった。しかも停学によって期末テストを受けられなくなるのだけど、そのための救済措置は行わず留年が確定となるため実質的には退学を促している様なものだった。
また教職員の責任については塚田先生の指導不足とされ、校長先生と教頭先生が監督者としての責任を負うこととなった。
話は驚くほど早く進み、わたしは担任代行であるにも関わらず問題の生徒達は生徒指導担当の大塚先生や学年主任の田中先生の預かりとなって彼をふた目と見ることなく教室から姿を消し、今後もわたしが彼らと話す機会は失われてしまった。
悪いのは性的な被害を受けた岸元さんを揶揄する様な事を行った彼だけど、更生の機会もなく事実上の退学処分は重いのではないかと思って年齢の近いよく雑談をする先生方に話してみたら、夏の一件で炎上に過敏になっていて揉み消したとなると後でどんな問題に発展するかわからないから厳しく対応せざるを得ないという様な説明をされた。
わたしはSNSを家族や友人との連絡以外では使わないから良くわからないのだけど、一度の出来心での罰則が重いように思った。
放課後になり、恐らく撤去されることになるであろう空席に虚しさを感じながらSHRを終えると春華さんがわたしの元へやってきた。
「対応していただいて、ありがとうございました・・・もしかして、先生は気に病まれていませんか?」
「そうね・・・たしかに厳しかったのではないかという思いはあるし、気がかりですね・・・」
「でも、あたしは美波ちゃんとフユが大事なので感謝してます。
先生もあまり気にしないでもらえればと思います」
「そうですね・・・ありがとうございます」
◆二之宮凪沙 視点◆
絵画モデルの話をしてもらった次の日である昨日、夏菜さんから急だけど募集があるという連絡をもらっていた。元々予定していたモデルの方が病気になってしまい急遽穴が空いてしまったための代わりのモデルを探していたところだったと言うことで、渡りに舟と引き受けさせてもらった。
未成年のため同意書を書いてもらわないといけなかったのだけど、夏菜さんは那奈さんへの説明で夏菜さんが知り合いに頼まれたので自分から私へ頼んだ格好にして私からやりたいと言った事を伏せてくれたし、まだ髪が短いままの私のためにウィッグを手配して当日の朝に受け取れる様にしてくれもした。私に対して思うところがあるだろうに、面倒見が良い方だと思う。
デッサンのために体のラインが出るように薄い服を着るように指定されたもののヌードになるわけでもなく、薄い服とは言っても現地で着替えれば良かったので寒さに震えることもなかったけど、休憩を挟みつつとは言え同じ姿勢を長時間し続けることは話に聞いてイメージしていたよりも大変だった。
モデルの時間が終わり着替えて主催の方から報酬を受け取りお礼と挨拶をした際には良かったら今後もという話をしてもらい、連絡先の交換をさせてもらった。挨拶も終わり帰宅し始め、駅へ向かっている最中に声を掛けられた。
「凪沙ちゃん、いや『亜梨沙』ちゃんって言った方が良いかな?」
振り向くと、さっきの絵画モデルの現場で参加していた1人の男性だった。開始前の挨拶で二之宮という名字は名乗ったけど凪沙という名前は名乗っていないし、ましてや偽名の亜梨沙など呼ばれるまで忘れていた。
「何のことでしょうか?」
「大丈夫。しらばっくれててもわかってるから、さ」
「おっしゃっている事が理解できないのですが?」
「秀優高校2年、二之宮凪沙ちゃんでしょ?
ひと目見てわかったよ、ははっ。
君が輪●されてる動画は一瞬で削除されたけど、ちゃんとダウンロードしてたから最近では一番お世話になってるよ」
「なので、おっしゃっている・・・」
「だからわかってるって言ってるでしょ?
亜梨沙ちゃんさぁ。学校のお友達との動画だけじゃなくてエンコーオジサンに盗撮されてたのもあるから」
「何をおっしゃりたいのですか?」
「いやぁ、俺とも楽しまない?
あんなガキどもやオッサンよりも気持ちよくさせてあげられるよ」
「お断りします」
「意味わかってる?
凪沙ちゃん、またモデルやるんでしょ?
次来た時、皆の見る目が変わっちゃってるかもよ?」
「それがなにか?
お好きになさったら良いのでは?
私は急いでますので、これで失礼します!」
今の生活がやさしいもので居心地が良いので忘れかけていたけど、過去は消えないし時として牙を剥いてくる。私が撒いてきた種が萌芽し絡みついてくる・・・せっかく良いお話だったけれど、ご迷惑をおかけする可能性があるからには、これ以上お世話になることはできない。
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