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第177話
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◆高梨百合恵 視点◆
あっという間に週末が過ぎ去り迎えた週明けの朝、土曜日に春華さんから月曜日のSHRの前に話をしたいことがあるというメッセージを受けていたので早めに登校していた。
美晴さんが妊娠検査薬の結果が陽性だったことを知った直後に関係の深い春華さんから美波さん夏菜さんの3人で話があるというので驚いたものの、美晴さん自身が病院の検査結果が出るまでは口外しないと言っていたので別件だと判断できたけれど、それでも動揺してしまっていた。
登校後のルーチンワークを終えたタイミングで春華さん達がわたしを尋ねて職員室へやってきたので場を第二音楽室の準備室へ移し話を始めた。
内容は金曜日にクラスの生徒で梅田さん達の歓迎会を行っていて、解散した後に冬樹君が行方不明になるというトラブルが起きていたことで、その原因はクラスメイトによる美波さんや春華さんへの悪意ある言動を直視して精神的に疲れさせてしまった事だろうと推測しているとのことだった。一昨日お家へ訪問した時は風邪を引いたとしか聞いていなかったけど、電車で眠ってしまい終点で起こされるまで起きなかったことで、一夜を屋外で過ごしたことが原因だったのだと知った。
一時期よりは安定していて先週登校をし始めてからも普通にしていたので失念していたけど、意識を失うほど強い精神的なストレスを抱え込んで通院していたので何かキッカケがあれば一気に問題が表面化する可能性は考えられたのに見落としていたことに気付かされてショックを受けたけど、わたし以上にショックを受けているはずの春華さん達の手前それを表へ出さないように気を付けつつ話を続けた。
美波さんは自分が復帰したことが原因だと思ってしまっている様で退学することも考えたようだけど、それは安易に過ぎるし美波さんが嫌じゃないのだったら思い留まるように話した。
どちらにしても一度は冬樹君と話をするべきだし、その冬樹君は発熱したので念のため明日までは登校しないのでそれまでは保留ということで今のところは納得してくれたと思う。
◆神坂春華 視点◆
週末のフユの行方不明の一件があり、その後屋外で一夜を過ごしたこともあり発熱してしまったと言う。美晴お姉が看てくれているし、解熱剤を飲んで昨日の朝には平熱まで下がったと言うので過度に心配はしていないけど、その発端についてはどうしても引っかかる。
そんなモヤモヤを抱えて高梨先生に朝イチで相談をしたら、更にもっと根底にあるあたし達の良くなかった点を指摘された思いだった。
何か困った事があるとお姉や美波ちゃんと相談して判断してしまいがちで、フユのことであってもお姉や美波ちゃんとだけ話して考え、今回のことも実際にフユ抜きで判断しようとしていた。フユを信頼していないわけではないけど、性差を意識するようになってから男の子に知られたら恥ずかしいという気持ちが湧く悩みが多くなり、無意識に相談相手からフユを外すようになっていて、それはあたしだけでなくお姉や美波ちゃんもそうだし、今回のこともまさにフユのことなのにフユには一言も聞かずにあたし達3人で決めようとしてしまっていた。
お姉だって長年培った習慣だからかその事への違和感がなかったようだし・・・そう考えると、フユが二之宮さんを襲ったと第一報を受けた時もあたしと美波ちゃんで話をしてしまってフユとちゃんと話をしようとしなかったし、お姉も一旦はあたしの言うことを重く取っていた。
そういう意味では先生と話ができたのは良かったと思う。今は時間がないから後で思ったことをふたりにも共有しようと思う。
SHRの始まるギリギリに教室へ戻ったところローラン君から声を掛けられた。
「おはよう!ハルカ!」
「お、おはよ」
「これを見てください!」
そう言うとローラン君はスマホをあたしへ見せてきた。
「ウタリンが出演するアニメの先行上映会があって、ウタリンも登壇するんだよ!」
「そ、そうなんだ」
「これ、一緒に行きませんか?
もちろん、ウタリンファンの同士カオリも一緒に!」
あたしに問い掛けつつ香織ちゃんの方へ振り向き香織ちゃんへも誘った。
「ええと、先のことなので予て・・・」
香織ちゃんはそのウタリンこと愛島唄ちゃんなので当然応じられるわけがないけど、下手に予定が合わないなどと言うと『では次の機会に』となっていき、ずっと予定が合わないということになりかねないのであたしが割って入った。
「香織ちゃんはお家の人からそういうイベントへ行くのがダメって言われてるんだって。
あたしが付き合うからさ、それで我慢して」
「そうですか・・・カオリが行けないなのは残念です。
でも、ハルカが一緒に行ってくれるのは嬉しいです!
ふたりでデートですね!」
「ええぇぇ!」
デートという言葉に頭が真っ白になって助けを求めるように美波ちゃんを見ると『しょうがないなぁ』と言う表情になって、
「春華ちゃんは奥手だし、デートというのは刺激が強いからわたしも一緒に『友達と遊びに行く』というのじゃダメかな?」
「良いですよ!ウタリンの素晴らしさをミナミにも感じてもらいます!」
「僕も興味があります!
参加して良いですか!?」
「ケンゴもですか?
もちろん歓迎です!」
心のなかで『美波ちゃんありがとう!』と思いながら、ふたりきりのデートになる事を回避できたことにほっとしつつ香織ちゃんを見ると『助かりました。ありがとうございます』という感じの視線を送ってくれてるから『結果的には良かったかな?』と思うことにしようと思う。
あっという間に週末が過ぎ去り迎えた週明けの朝、土曜日に春華さんから月曜日のSHRの前に話をしたいことがあるというメッセージを受けていたので早めに登校していた。
美晴さんが妊娠検査薬の結果が陽性だったことを知った直後に関係の深い春華さんから美波さん夏菜さんの3人で話があるというので驚いたものの、美晴さん自身が病院の検査結果が出るまでは口外しないと言っていたので別件だと判断できたけれど、それでも動揺してしまっていた。
登校後のルーチンワークを終えたタイミングで春華さん達がわたしを尋ねて職員室へやってきたので場を第二音楽室の準備室へ移し話を始めた。
内容は金曜日にクラスの生徒で梅田さん達の歓迎会を行っていて、解散した後に冬樹君が行方不明になるというトラブルが起きていたことで、その原因はクラスメイトによる美波さんや春華さんへの悪意ある言動を直視して精神的に疲れさせてしまった事だろうと推測しているとのことだった。一昨日お家へ訪問した時は風邪を引いたとしか聞いていなかったけど、電車で眠ってしまい終点で起こされるまで起きなかったことで、一夜を屋外で過ごしたことが原因だったのだと知った。
一時期よりは安定していて先週登校をし始めてからも普通にしていたので失念していたけど、意識を失うほど強い精神的なストレスを抱え込んで通院していたので何かキッカケがあれば一気に問題が表面化する可能性は考えられたのに見落としていたことに気付かされてショックを受けたけど、わたし以上にショックを受けているはずの春華さん達の手前それを表へ出さないように気を付けつつ話を続けた。
美波さんは自分が復帰したことが原因だと思ってしまっている様で退学することも考えたようだけど、それは安易に過ぎるし美波さんが嫌じゃないのだったら思い留まるように話した。
どちらにしても一度は冬樹君と話をするべきだし、その冬樹君は発熱したので念のため明日までは登校しないのでそれまでは保留ということで今のところは納得してくれたと思う。
◆神坂春華 視点◆
週末のフユの行方不明の一件があり、その後屋外で一夜を過ごしたこともあり発熱してしまったと言う。美晴お姉が看てくれているし、解熱剤を飲んで昨日の朝には平熱まで下がったと言うので過度に心配はしていないけど、その発端についてはどうしても引っかかる。
そんなモヤモヤを抱えて高梨先生に朝イチで相談をしたら、更にもっと根底にあるあたし達の良くなかった点を指摘された思いだった。
何か困った事があるとお姉や美波ちゃんと相談して判断してしまいがちで、フユのことであってもお姉や美波ちゃんとだけ話して考え、今回のことも実際にフユ抜きで判断しようとしていた。フユを信頼していないわけではないけど、性差を意識するようになってから男の子に知られたら恥ずかしいという気持ちが湧く悩みが多くなり、無意識に相談相手からフユを外すようになっていて、それはあたしだけでなくお姉や美波ちゃんもそうだし、今回のこともまさにフユのことなのにフユには一言も聞かずにあたし達3人で決めようとしてしまっていた。
お姉だって長年培った習慣だからかその事への違和感がなかったようだし・・・そう考えると、フユが二之宮さんを襲ったと第一報を受けた時もあたしと美波ちゃんで話をしてしまってフユとちゃんと話をしようとしなかったし、お姉も一旦はあたしの言うことを重く取っていた。
そういう意味では先生と話ができたのは良かったと思う。今は時間がないから後で思ったことをふたりにも共有しようと思う。
SHRの始まるギリギリに教室へ戻ったところローラン君から声を掛けられた。
「おはよう!ハルカ!」
「お、おはよ」
「これを見てください!」
そう言うとローラン君はスマホをあたしへ見せてきた。
「ウタリンが出演するアニメの先行上映会があって、ウタリンも登壇するんだよ!」
「そ、そうなんだ」
「これ、一緒に行きませんか?
もちろん、ウタリンファンの同士カオリも一緒に!」
あたしに問い掛けつつ香織ちゃんの方へ振り向き香織ちゃんへも誘った。
「ええと、先のことなので予て・・・」
香織ちゃんはそのウタリンこと愛島唄ちゃんなので当然応じられるわけがないけど、下手に予定が合わないなどと言うと『では次の機会に』となっていき、ずっと予定が合わないということになりかねないのであたしが割って入った。
「香織ちゃんはお家の人からそういうイベントへ行くのがダメって言われてるんだって。
あたしが付き合うからさ、それで我慢して」
「そうですか・・・カオリが行けないなのは残念です。
でも、ハルカが一緒に行ってくれるのは嬉しいです!
ふたりでデートですね!」
「ええぇぇ!」
デートという言葉に頭が真っ白になって助けを求めるように美波ちゃんを見ると『しょうがないなぁ』と言う表情になって、
「春華ちゃんは奥手だし、デートというのは刺激が強いからわたしも一緒に『友達と遊びに行く』というのじゃダメかな?」
「良いですよ!ウタリンの素晴らしさをミナミにも感じてもらいます!」
「僕も興味があります!
参加して良いですか!?」
「ケンゴもですか?
もちろん歓迎です!」
心のなかで『美波ちゃんありがとう!』と思いながら、ふたりきりのデートになる事を回避できたことにほっとしつつ香織ちゃんを見ると『助かりました。ありがとうございます』という感じの視線を送ってくれてるから『結果的には良かったかな?』と思うことにしようと思う。
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