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第161話

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岸元美晴きしもとみはる 視点◆

昨日、冬樹ふゆきくんが元のクラスへ復帰して、すごく心配だったけど約束した通り小まめに連絡をくれて、帰ってきてから聞いた話でも精神的に問題があったりトラブルに遭ったりすることがなかったというので、その点は安心した。

春華はるかちゃんや美波みなみと同じクラスで心安くいられると言い、転校生や一部のクラスメイトとも新しい良い関係を築けていけそうと話す冬樹くんの表情はすごく穏やかで安心できる反面、美波のことをまた好きになってしまう、あるいはクラスの女の子の事を好きになってしまうのではないかという畏れる気持ちも湧いてしまう。

また、転校生の女の子が相当な美少女の様で、夏菜かなちゃんや春華ちゃん、それに手前味噌ながら美波もかなり可愛い部類に入ると思うけれどそれらの女の子達に囲まれてきていた冬樹くんがわざわざ容姿が優れていると言ったくらいで、その転校生と親しくなって私が見劣りしてしまい捨てられてしまうのではないかという不安な気持ちを掻き立てられてしまう。

もちろん冬樹くんがそんな事をするはずはないという信頼はしているのだけど、信頼とは別のところで恐怖が付き纏ってしまう。

そんな気持ちが顔に出てしまっていたのか玲香れいかさんにその事に触れられた。


「みはるん、なんか表情が暗いけど悩みでもあるの?
 アタシで良かったら話を聞くよ?」


「気遣ってくれてありがとうございます。無いと言ったら嘘になりますけど、私の中でも整理ができていないのです」


「それでもさ、五月雨でも口にして行けばアタシも何かアドバイスできるかもしれないし、みはるんの中で整理できるかもしれないよ?」



津島つしま玲香 視点◆

アキラくんのイタズラが原因でトラブルになって、みはるん達への謝罪の気持ちを込め髪を黒く染め直し、服も落ち着いたものを着るようになったものの、数日でみはるんから『気持ちは十分すぎるほど伝わったから本当に着たい服を着て欲しい』と言われ、その場でみはるんのカレシである冬樹君にも電話で繋がれ同じ事を言われたために少し明るめに染め直して、服も前ほどではないもののアタシが好きな系統のものへ変えるようになった。

アタシはその短期間のイメチェンの繰り返しで過去イチ注目される様になっていて、前の派手な服を着ていた時よりも落ち着いた物を着ていた時、そして落ち着いた服を着ていた時よりも今といった感じで声を掛けられる頻度が増え、実質失恋状態のアタシにはとても鬱陶しくもある。


でも、そんなアタシ達を見て微笑んでくれるみはるんを見ていると、良かったと思っている。


そして、同じくガーリーな服を着るようになっていたアキラくんへもみはるん達はアタシへと同じ様なことを言い、説得されたアキラくんもガーリーな服をやめて落ち着いた服を着るようになっていた。



先週辺りからみはるんの様子が芳しくなく、気になっていたものの触れられたくないかもしれないと様子を見ていたのだけど、日に日に悪くなっていたので今日は見かねてその事に触れて尋ねてみた。


すると、みはるんは冬樹君のことが色々と心配なのだという。そこで背景をザッと聞いたけど、半年くらい前に高校で女子生徒を暴行しようとしたという冤罪をかけられてしまい、以降は特殊な状況にあったというのでそんな悲惨な状態だったのかと驚かされた。

そんな背景もあってまだ精神的に不安定なところもあるというのに元のクラスへ戻っていったことが心配でならないというのがみはるんの悩みらしく、事情をよく知らない外野のアタシからしたら過保護にも思えるけど、それほど過保護になってしまうくらいひどい状況があったのだろうと思うと軽々しく気にし過ぎとは言えない。

アタシとしても冬樹君には不幸であって欲しくないので陰ながら心配しようと思うし、みはるんや冬樹君から求められるならできる限りの協力をしたいと思う。

そしてもうひとつ、冬樹君がクラスへ戻ってみはるんの妹ちゃんやクラスメイトと良好な関係を築いていくことで自分が捨てられてしまうのではないかという不安をいだいているというのだから、みはるんには悪いけど微笑ましくも思う。

ほとんど交流していないアタシだって理解できるくらいに冬樹君はみはるんのことを大事に思っていて、それが一挙手一投足から嫌というほど感じられる。ただ、乙女心としては自分が不利な要素の年齢差とか一緒に居られる時間の長さとか考えると不安になるのもよくわかる。

そういう乙女っぽいところを出しているのは可愛いく、ただでさえ見た目がチビッコで可愛いみはるんの可愛さを何倍にも増幅させていると思う。何ならお持ち帰りをしたいくらい。


そんな感じでアタシも冬樹君の事を心配しているしいつでも協力するという事と、付き合いがほとんどないアタシから見ても冬樹君がみはるんを大事にしていて他の女の子が入り込む余地なんかないと思うと言ってあげたら少しは気が紛れたのか表情が少し明るくなったので良かったと思うことにした。
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