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第157話

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神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆

いよいよクラスへ復帰する初日の朝が来た。

ここに至ってなお美晴みはるさんは行かないで欲しいと口にするけど、過保護ではないかと思う。

心配が高じて学校まで着いてきそうな勢いだったので美晴さんへ小まめに連絡することと何かあったらすぐに帰るという約束をして一応の納得をしてもらった。


復帰初日ということもあり事前に先生方と面談してからということになり通常よりも早い時間に登校した。


学校へ着くと既に美波みなみは着いていて職員室隣の来賓室でハルと待っていた。


「おはよう、美波。ハルも着いてきてたんだね」


「おはよう、冬樹ふゆき。2年は残り少ないけど、これまでの分を取り戻すつもりでよろしくね」


「あ、ああ。わかった、よろしくな」


「あたしもよろしくね」


「ああ、こちらこそ何かあったら生徒会長様に頼らせてもらうよ」


「なによ、その言い方。まぁ、フユに距離を置かれてもしょうがないんだけどね・・・」


「おいおい、冗談を真に受けるなよ。僕が悪かったから機嫌を直してくれないか」


「冗談なんだ・・・良かった。
 でも、同じ過ちは繰り返したくないと思っていたところだからさ・・・気になっちゃって・・・」


「わかったよ。ハルが重く考えていてくれていること、ちゃんと受け止めるから」


「わたしも重く考えてるよ!」


「美波もわかったよ」



ちょうどそのタイミングで担任の塚田つかだ教諭と副担任の鈴木すずき教諭と高梨たかなし先生が入室してきた。直前の説明を・・・何故かハルも一緒に・・・受けSHRの時間が近付いたのでそのまま塚田教諭と一緒に教室へ向かった。

ハルだけ先に教室へ入り、その直後に塚田教諭も教室へ入っていきSHRが始まった。僕と美波は廊下で待機して、塚田教諭からの呼び込みを受けてから教室へ入った。


「再び一緒のクラスで学ばせてもらうことになりました神坂かみさか冬樹です。よろしくお願いします。
 例の件が引っ掛かっている人もいるかと思いますが、僕自身は過ぎ去ったことだと思っていますので気にせずに接してもらえればと思います」


「また一緒に学ばせてもらうことになりました岸元きしもと美波です。よろしくお願いします。
 正直なところ触れて欲しくない話題もありますが、良い人間関係を築ければと思っています」


僕と美波は当たり障りがない挨拶をして自分の席へ着いた。

僕らの席は窓側の後ろの方に固まっていて一番窓側の一番後ろが美波、その隣が僕、美波の目の前が転校生の梅田うめださんとなっていて、その隣がハル、既に来る予定の転校生と留学生の分と思われる空席も僕とハルの隣となっている状態で、ハルから見て2つ隣の席が生徒会副会長の新谷しんたにくんの席になっていた。新谷くんの席の後ろも空席だけど、そこも転校生が来る席だろう。


SHRが終わって塚田教諭が教室を出て行くや否やのタイミングで梅田さんが振り向いて声を掛けてくれた。


「先週は迷っていたところを案内してくださってありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします」


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


「ところで、岸元さんが春華はるかさんと冬樹さんの幼馴染みの方ですよね?」


急に振られたからか美波は慌てて返答した。


「え、うん?そう、春華ちゃんと冬樹の幼馴染みの岸元美波です。改めてよろしくね」


「ええ、こちらこそ、ぜひよろしくお願いいたします」


「春華さんからお伺いしたのですけど、おふたりも法律研究部に所属していらっしゃるのですよね?」


「そうだね。一応・・・というか、ハル、まだ残ってたんだな、部活」


「うん。ほら、フユが関わっているから学校も黙認してくれてるみたいで何も言われてないよ」


「と言うことで、まだ所属してるみたいです」


「今後は活動されないのですか?
 よろしければわたくしも入部させていただければと思っていたのですが・・・」


「そもそもが隠れ蓑みたいな部活だったので、今となっては特に必要性はないのですよ。
 とは言え、存続しているなら何かやっても良いと思うけど、どうかな?ハル、美波?」


法律研究部あたし達みたいな存在になるのか・・・悪くないね」


「春華ちゃん、そのって言うのがわからないのだけど、何?」


「うーん、なんと説明すれば良いかな?香織かおりちゃん、パス」


「え?えぇっと、それはですね・・・10年以上昔の人気アニメに存在した架空の部活の名称で、特に目的もなく部室で駄弁っている存在・・・でしょうか?
 あと、に例えると生徒会長である春華さんのアイデンティティが崩壊してしまうのではないかと思います。」


「さっすが、香織ちゃん。説明ありがと!
 そんな感じ、特に目的はないけど放課後を学校で過ごすために部室を使うの!
 たしかに、生徒会長がにいたらおかしいよね・・・まぁ、そこは雰囲気だから目を瞑ってもらうとしよう」


「ふぅん、そうなんだ。でも、梅田さんもアニメに詳しいんだね。
 春華ちゃんと仲良くなったのもそれがきっかけ?」


「え、まぁ、そうですね。春華さんがアニメに詳しいことがきっかけではありますね」


「それは良かったね。春華ちゃんはアニメとかマンガとかにすごく詳しいから周りの人達が話について行けないことが多いのだけど、梅田さんも詳しいなら趣味の話ができそうだね」


「あのっ、その部活。僕も入部させてもらえないだろうか?」


いつの間にか僕らの席の側に来ていた新谷くんが声を掛けてきた。


「新谷くんも?今のあたし達の話を聞いてたならわかると思うけど、何もしないよ?」


「神坂さん達が楽しそうにしていたので仲間に加えてほしいなと思ったんだけど、ダメかな?」


「だって、どう?」


ハルは最小限の言葉と目線で僕へ振ってきた。


「ハルが良いなら良いんじゃない?
 新谷くんの為人ひととなりはハルの方がわかってるだろ?
 あとは姉さんか」


「あたしは新谷くんはいい人だと思うから賛成するよ」


「じゃあ、僕も異論はないよ。美波は?」


「わたしも春華ちゃんが良いなら・・・」


「じゃあ、新谷くんは入部ってことで・・・」


「神坂さん、皆さん、ありがとう!」


「ちょっと待ってください。わたくしも入部させてもらって良いのですよね?」


「それはもちろん良いよ。どうせ不定期活動になると思うし、予定が合う時だけ参加でも構わないし、あたしだって生徒会が忙しかったら参加できないかもしれないしさ」


「それでは、皆さん、よろしくお願いいたします」


気が付いたらクラスメイトの多くが僕らの方を見ていて『梅田さんとお近付きになれるなら部活に入りたい』という雰囲気を醸し出しているけど、僕へ遠慮してか見ているだけという状況になっていた。
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