93 / 251
第93話
しおりを挟む
◆神坂冬樹 視点◆
美晴さんが、昨日実家へ行った際に美波の元へ来ていた二之宮凪沙に尾行されてしまった事を受け引っ越しをしようとなったので、不動産仲介業者の営業時間になってすぐに営業さんへ電話をしたら午後は空いているということで訪問の予約をいれてもらった。
既に今年購入2回と売却1回でお世話になっている営業さんなのもあり気心が知れてきた感じがする。
『もしかしてまたお引っ越しですか?』
「はい、それでまたお力添えをお願いしたいなと思いまして・・・」
『ホントにまたですか!?
私としては非常にありがたいですけど、賃貸でもそんなにポンポン引っ越す人なんかなかなかいないのに分譲マンションでこの頻度はうちの営業の話でも聞いたことがないですよ』
などという雑談も交わせるくらいになってきているので、こちらとしてもありがたい。
また、俺が予約の電話をしている間に美晴さんには美波へ連絡してもらって、二之宮が岸元家に居ることを確認している。さすがに、ここからまた尾行されてしまっては手に負えないので、これからは二之宮の動きに注意することで美晴さんと意見が一致した。
あと、最低でも転居するまでは高梨先生にも注意をしてもらうことでお願いをし、了承してもらっている。
こちらの落ち度でもあるので俺の費用負担で転居してもらっても良いのだけど、それはさすがにやり過ぎになるだろうと自重している。
アポの時間に余裕を持って到着した俺と美晴さん・・・と、ピアノ教室が休みで暇だからとついて来たみゆきさんを見た、顔なじみになっている営業補助の女性スタッフさんが挨拶代わりに一言。
「第二夫人ですか?」
「いやいや、第二夫人ってなんなんですか?
第一僕はまだ結婚できる年齢にすらなっていませんよ」
「そう言えばそうでしたよね。神坂さんはあまりにも大人っぽいから年齢を忘れてしまうのですよね」
ほどなくして、担当営業さんにバトンタッチして簡単にストーカーにマンションを特定されてしまったのでできるだけ早く転居したいという話をしたら、いくつかの物件を紹介してもらった。
今回も即金ですぐに取引できるのなら割り引いてでも手放したい売り主の居る物件を紹介してもらえ、みゆきさんがついて来た因果なのかセキュリティを重視した結果、ピアノを置いて演奏しても大丈夫な防音室付きの物件が筆頭候補になり、そのまま4人で内覧へ行って、その部屋に決めて手付金を払ってきた。
しかし、一番気に入ったのがみゆきさんなのはおかしくはないだろうか?
たしかに今のマンションよりもみゆきさんが勤めるピアノ教室への通勤はしやすくなるし、部屋にピアノも置ける・・・でも、みゆきさんは一時的に居候しているだけで、落ち着いたら出ていくという話になっているわけで、そんな気に入ったところであまり意味がないような気がするのだけれど何を考えているのだろう?
◆岸元美晴 視点◆
私の注意不足で二之宮さんにマンションの特定をされてしまった。注意を払わないといけないという意識は持っていたから、面と向かって話をする時には聞かせてはいけないことを言わないようにと言う注意はしていたけど、尾行については完全にそういう事があるという危機意識を持っていなかった。
今までそういう事を意識しなくてはならない事がなかったからと言えばそれまでなのだけど、だからと言って冬樹くんや高梨先生に迷惑をかけてしまったのは間違いない。
冬樹くんは私を責めるようなことをせず、むしろ落ち込んでしまっていた私をしょうがなかったという風に慰めてくれた。本当に優しいと思う。そして、有言実行で二之宮さんの裏をかいて引っ越しをしてしまうというのだ。つい1ヶ月前に引っ越したばかりだから、すぐに引っ越すとは思わないだろうというのが冬樹くんの見立てだ。
更に、引っ越しするまでは最寄り駅とは別方向で別路線になる駅を使う様にすることと、不動産仲介業者さんに口利きしてもらってマンションの管理会社に二之宮さんが来ていたら連絡して教えてもらえるようにもしてもらった。
電車は少し距離は遠くなるし乗り換えの便が悪化するけど、尾行されることだけでなく鉢合わせもしにくくするし、そもそも引っ越すまでの期間の暫定的な対応だから文句の言いようもない。管理会社にまで注意をしてもらえるようにしているし、本当に冬樹くんは行動力があって頼りがいがある。
新しいマンションも決まり、帰宅してきたところで夏菜ちゃんと春華ちゃんとメッセージをやり取りし、今夜美波には絶対に知られないようにしてビデオチャットを行うことになった。
美晴さんが、昨日実家へ行った際に美波の元へ来ていた二之宮凪沙に尾行されてしまった事を受け引っ越しをしようとなったので、不動産仲介業者の営業時間になってすぐに営業さんへ電話をしたら午後は空いているということで訪問の予約をいれてもらった。
既に今年購入2回と売却1回でお世話になっている営業さんなのもあり気心が知れてきた感じがする。
『もしかしてまたお引っ越しですか?』
「はい、それでまたお力添えをお願いしたいなと思いまして・・・」
『ホントにまたですか!?
私としては非常にありがたいですけど、賃貸でもそんなにポンポン引っ越す人なんかなかなかいないのに分譲マンションでこの頻度はうちの営業の話でも聞いたことがないですよ』
などという雑談も交わせるくらいになってきているので、こちらとしてもありがたい。
また、俺が予約の電話をしている間に美晴さんには美波へ連絡してもらって、二之宮が岸元家に居ることを確認している。さすがに、ここからまた尾行されてしまっては手に負えないので、これからは二之宮の動きに注意することで美晴さんと意見が一致した。
あと、最低でも転居するまでは高梨先生にも注意をしてもらうことでお願いをし、了承してもらっている。
こちらの落ち度でもあるので俺の費用負担で転居してもらっても良いのだけど、それはさすがにやり過ぎになるだろうと自重している。
アポの時間に余裕を持って到着した俺と美晴さん・・・と、ピアノ教室が休みで暇だからとついて来たみゆきさんを見た、顔なじみになっている営業補助の女性スタッフさんが挨拶代わりに一言。
「第二夫人ですか?」
「いやいや、第二夫人ってなんなんですか?
第一僕はまだ結婚できる年齢にすらなっていませんよ」
「そう言えばそうでしたよね。神坂さんはあまりにも大人っぽいから年齢を忘れてしまうのですよね」
ほどなくして、担当営業さんにバトンタッチして簡単にストーカーにマンションを特定されてしまったのでできるだけ早く転居したいという話をしたら、いくつかの物件を紹介してもらった。
今回も即金ですぐに取引できるのなら割り引いてでも手放したい売り主の居る物件を紹介してもらえ、みゆきさんがついて来た因果なのかセキュリティを重視した結果、ピアノを置いて演奏しても大丈夫な防音室付きの物件が筆頭候補になり、そのまま4人で内覧へ行って、その部屋に決めて手付金を払ってきた。
しかし、一番気に入ったのがみゆきさんなのはおかしくはないだろうか?
たしかに今のマンションよりもみゆきさんが勤めるピアノ教室への通勤はしやすくなるし、部屋にピアノも置ける・・・でも、みゆきさんは一時的に居候しているだけで、落ち着いたら出ていくという話になっているわけで、そんな気に入ったところであまり意味がないような気がするのだけれど何を考えているのだろう?
◆岸元美晴 視点◆
私の注意不足で二之宮さんにマンションの特定をされてしまった。注意を払わないといけないという意識は持っていたから、面と向かって話をする時には聞かせてはいけないことを言わないようにと言う注意はしていたけど、尾行については完全にそういう事があるという危機意識を持っていなかった。
今までそういう事を意識しなくてはならない事がなかったからと言えばそれまでなのだけど、だからと言って冬樹くんや高梨先生に迷惑をかけてしまったのは間違いない。
冬樹くんは私を責めるようなことをせず、むしろ落ち込んでしまっていた私をしょうがなかったという風に慰めてくれた。本当に優しいと思う。そして、有言実行で二之宮さんの裏をかいて引っ越しをしてしまうというのだ。つい1ヶ月前に引っ越したばかりだから、すぐに引っ越すとは思わないだろうというのが冬樹くんの見立てだ。
更に、引っ越しするまでは最寄り駅とは別方向で別路線になる駅を使う様にすることと、不動産仲介業者さんに口利きしてもらってマンションの管理会社に二之宮さんが来ていたら連絡して教えてもらえるようにもしてもらった。
電車は少し距離は遠くなるし乗り換えの便が悪化するけど、尾行されることだけでなく鉢合わせもしにくくするし、そもそも引っ越すまでの期間の暫定的な対応だから文句の言いようもない。管理会社にまで注意をしてもらえるようにしているし、本当に冬樹くんは行動力があって頼りがいがある。
新しいマンションも決まり、帰宅してきたところで夏菜ちゃんと春華ちゃんとメッセージをやり取りし、今夜美波には絶対に知られないようにしてビデオチャットを行うことになった。
0
お気に入りに追加
173
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる