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第90話
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◆塚田智 視点◆
二学期が始まり丸2週が過ぎ来週には祝日絡みの3連休が連続するという状況の水曜日。
今日は一部教科の勉強会の影響で授業の入れ替わりがあり、4時限目と5時限目が空きその間の昼休みを含んで3時間ほど授業がないので外へ出ることにした。
もちろん用もなく学校を出るわけにはいかないのだけど、僕には岸元さんと二之宮さんのフォローをする特別な役割があるので、それを口実にする事ができる。
本来であれば事前にアポイントを取るのが自然で礼儀なのだが今日は急な授業時間変更が行われたな上に、そもそも僕が学校を出て息抜きをすることが目的なのでアポ無しで行くことにした。
会えなかったら『アポ無しだったのでやっぱりダメでした』で済むし、そもそもやっかいな役割を押し付けられた僕にこれくらいの役得があって然るべきだと思う。
どちらにしようか迷うこともなく岸元さんの家へ行くことにした。
理由は簡単で、二之宮さんのお母様は怖いから会わずに済むなら会いたくない。その上、岸元さんの家の方が最寄り駅から近いし、隣には神坂君の家もある。今は神坂君は家を出てしまっているし、共働きでご姉妹は秀優高校にいるので恐らく誰もいないだろうけど、名刺に一筆入れて訪問したアピールはできる。神坂君のご両親はあまりそういうテクニックで動く人ではなさそうだけど、刺さる人には刺さるテクニックなんだよね。
学年主任の田中先生に外出する旨を報告し、他の誰にも悟られないように学校を出て岸元さんの家に着いた。
「こんにちは、アポも取らずにすみません。
授業時間の変更で急に時間ができたものですから、様子を伺わせてもらいにきました」
「先生、お久しぶりです。わざわざ気に掛けてくださってありがとうございます」
「いえ、担任として当然のことですよ。
あれ?もしかして来客中でした?」
「来客は来客ですけど、先生も知っている人ですよ」
「え?」
「どうぞ、上がってください」
玄関先で少し話して済まそうと思っていたけど、中に知り合いがいるとまで言われて通されたら断ることもできないので、岸元さんに従って上がらせてもらった。
「二之宮さん、塚田先生が来てくれたよ」
「え?塚田先生がですか!?」
「はい、お久しぶりです、二之宮さん。
まさかここで会えるとは思っていませんでした」
「え、ええ。驚きました・・・」
「それじゃあ、先生にお茶を用意するから二之宮さん、先生のお相手よろしくね」
「は、はい」
岸元さんがキッチンへ行くために離れると同時に二之宮さんが寄ってきて耳元へ向かい小声で話しかけてきた。
「岸元さんは私について知らないことが多いので、くれぐれも余計な情報を口にしない様お願いします」
「は、はぁ」
二之宮さんが言いたいことはわかるのだけど、後々になって僕が知っていたのに知らんぷりをしていたとなるのも怖いんだよなぁ。
などと思っていたらすぐに岸元さんが戻ってきた。
「おまたせ!アイスティーしかなかったんだけどいいかな?」
「え、ええ、大丈夫です。ありがとうございます」
それにしても、岸元さんは異様にテンションが高い。
第一、玄関で言った『入って、どうぞ』もだけど、今のもネットで有名なネタだよね?
『岸元さん!?ちょっと、まずいですよ!』とでも言えば良いのだろうか?
気付いていない振りをしているけど、気付かれたかな?
◆岸元美波 視点◆
理由はわからないけど、担任の塚田先生が訪問してくれたので、中へ入ってもらった。
二之宮さんも先生と会うのは久しぶりだったみたいだ。
それにしても、二之宮さんと話してて冬樹との関係に光明が見えてきたのもあってテンションが高い自覚がある。
先生を相手にネットのネタを言ってしまうのは『岸元さん!?ちょっと、まずいですよ!』って感じよね。
春華ちゃんがふざけてよく言うネタだから言葉だけ知ってるものの『元ネタは知らない方が良いよ。知らない方が幸せなことってあるんだよ、美波ちゃん』って言われてて調べたことがないけど、先生の反応からして思っていたよりも言ってはいけないネタなのではないかと思った。
春華ちゃんってそういうネタを構わず使ってしまう思慮の浅さがあるのよね。そういうところは反面教師にしなきゃと思う。
「それで、先生はどうしてお越しになったのですか?」
「いえ、玄関で言った通りで、時間ができたから顔を見せてもらいに来ただけで、特に用件はないです。
そんな理由でしたので、二之宮さんもいてくれて捗りましたよ」
「そうでしたか、重ね重ねありがとうございます。
運良く二之宮さんと仲良くなれましたし、高卒認定の勉強も何とかなっています。
ね、二之宮さん?」
「ええ、そうですね。岸元さんが言ってくれた通り、同じ高卒認定という目標を持っている岸元さんと一緒で効率よくやれていると思います」
「そうでしたか、おふたりは同じ問題を抱えていたりもするので協力し合えているのなら担任としてほっとしますね」
高梨先生を尾行していたこともあるし、変な人かと思っていたけど意外にまともなのかな?
「そう言えば、先生って、夏休みに入る直前くらいに高梨先生を尾行していたことがありましたよね?」
二学期が始まり丸2週が過ぎ来週には祝日絡みの3連休が連続するという状況の水曜日。
今日は一部教科の勉強会の影響で授業の入れ替わりがあり、4時限目と5時限目が空きその間の昼休みを含んで3時間ほど授業がないので外へ出ることにした。
もちろん用もなく学校を出るわけにはいかないのだけど、僕には岸元さんと二之宮さんのフォローをする特別な役割があるので、それを口実にする事ができる。
本来であれば事前にアポイントを取るのが自然で礼儀なのだが今日は急な授業時間変更が行われたな上に、そもそも僕が学校を出て息抜きをすることが目的なのでアポ無しで行くことにした。
会えなかったら『アポ無しだったのでやっぱりダメでした』で済むし、そもそもやっかいな役割を押し付けられた僕にこれくらいの役得があって然るべきだと思う。
どちらにしようか迷うこともなく岸元さんの家へ行くことにした。
理由は簡単で、二之宮さんのお母様は怖いから会わずに済むなら会いたくない。その上、岸元さんの家の方が最寄り駅から近いし、隣には神坂君の家もある。今は神坂君は家を出てしまっているし、共働きでご姉妹は秀優高校にいるので恐らく誰もいないだろうけど、名刺に一筆入れて訪問したアピールはできる。神坂君のご両親はあまりそういうテクニックで動く人ではなさそうだけど、刺さる人には刺さるテクニックなんだよね。
学年主任の田中先生に外出する旨を報告し、他の誰にも悟られないように学校を出て岸元さんの家に着いた。
「こんにちは、アポも取らずにすみません。
授業時間の変更で急に時間ができたものですから、様子を伺わせてもらいにきました」
「先生、お久しぶりです。わざわざ気に掛けてくださってありがとうございます」
「いえ、担任として当然のことですよ。
あれ?もしかして来客中でした?」
「来客は来客ですけど、先生も知っている人ですよ」
「え?」
「どうぞ、上がってください」
玄関先で少し話して済まそうと思っていたけど、中に知り合いがいるとまで言われて通されたら断ることもできないので、岸元さんに従って上がらせてもらった。
「二之宮さん、塚田先生が来てくれたよ」
「え?塚田先生がですか!?」
「はい、お久しぶりです、二之宮さん。
まさかここで会えるとは思っていませんでした」
「え、ええ。驚きました・・・」
「それじゃあ、先生にお茶を用意するから二之宮さん、先生のお相手よろしくね」
「は、はい」
岸元さんがキッチンへ行くために離れると同時に二之宮さんが寄ってきて耳元へ向かい小声で話しかけてきた。
「岸元さんは私について知らないことが多いので、くれぐれも余計な情報を口にしない様お願いします」
「は、はぁ」
二之宮さんが言いたいことはわかるのだけど、後々になって僕が知っていたのに知らんぷりをしていたとなるのも怖いんだよなぁ。
などと思っていたらすぐに岸元さんが戻ってきた。
「おまたせ!アイスティーしかなかったんだけどいいかな?」
「え、ええ、大丈夫です。ありがとうございます」
それにしても、岸元さんは異様にテンションが高い。
第一、玄関で言った『入って、どうぞ』もだけど、今のもネットで有名なネタだよね?
『岸元さん!?ちょっと、まずいですよ!』とでも言えば良いのだろうか?
気付いていない振りをしているけど、気付かれたかな?
◆岸元美波 視点◆
理由はわからないけど、担任の塚田先生が訪問してくれたので、中へ入ってもらった。
二之宮さんも先生と会うのは久しぶりだったみたいだ。
それにしても、二之宮さんと話してて冬樹との関係に光明が見えてきたのもあってテンションが高い自覚がある。
先生を相手にネットのネタを言ってしまうのは『岸元さん!?ちょっと、まずいですよ!』って感じよね。
春華ちゃんがふざけてよく言うネタだから言葉だけ知ってるものの『元ネタは知らない方が良いよ。知らない方が幸せなことってあるんだよ、美波ちゃん』って言われてて調べたことがないけど、先生の反応からして思っていたよりも言ってはいけないネタなのではないかと思った。
春華ちゃんってそういうネタを構わず使ってしまう思慮の浅さがあるのよね。そういうところは反面教師にしなきゃと思う。
「それで、先生はどうしてお越しになったのですか?」
「いえ、玄関で言った通りで、時間ができたから顔を見せてもらいに来ただけで、特に用件はないです。
そんな理由でしたので、二之宮さんもいてくれて捗りましたよ」
「そうでしたか、重ね重ねありがとうございます。
運良く二之宮さんと仲良くなれましたし、高卒認定の勉強も何とかなっています。
ね、二之宮さん?」
「ええ、そうですね。岸元さんが言ってくれた通り、同じ高卒認定という目標を持っている岸元さんと一緒で効率よくやれていると思います」
「そうでしたか、おふたりは同じ問題を抱えていたりもするので協力し合えているのなら担任としてほっとしますね」
高梨先生を尾行していたこともあるし、変な人かと思っていたけど意外にまともなのかな?
「そう言えば、先生って、夏休みに入る直前くらいに高梨先生を尾行していたことがありましたよね?」
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