53 / 252
第53話
しおりを挟む
◆神坂冬樹 視点◆
今日を含め3日の登校で夏休みに入るというのに、学校は騒ぎになっている。
まず、鷺ノ宮たちは再度取り調べを受けることとなった。少年事件であり目下の被害者である二之宮さんが最初の取り調べで最低限しか供述してなかったのもあって警察の対応が甘かった様で、昨夜裏サイトにアップされたの件で追加で調査されるとの事らしい。また昨日の時点では自主退学を勧告となっていたが、学校側が関わっていた生徒全員を退学処分とすると発表した。鷺ノ宮を含む多くの生徒が所属していたサッカー部は廃部、それ以外も関係した生徒がいる部活は当面活動停止となった。
実態は掴みきれないが主犯は鷺ノ宮だろうし、一番重い処分を課せられるだろう。当然、俺からの民事訴訟も上乗せするし、これからもっと大変になるだろう。
正直なところ鷺ノ宮のお仲間はどうでも良いのだけど、彼らもこれから大変なことになると思うが自業自得としか言いようがない。
芳川さんは元々不登校になってしまっていたけど、仲村先輩も今日は登校していないらしい。どんな好奇の目で見られるか考えたら来たくない気持ちは察せられる。
むしろ、美波も休むかと思ったが登校しているのが不気味だ。
一番わからないのは二之宮さんだ。何かに堪えている様な美波とは違い、とても良いことがあったかの様に満面の笑みを浮かべている。そのせいで想像と違う方向でクラスから浮いている。渦中のふたりが登校しているからか、教室内は異様な雰囲気になっている。
「神坂君、こんな状況になってしまったし、約束通り一緒に居て守って欲しいのだけど、良いわよね?」
「あ、ああ。そういう約束だったな」
「え?どういうことなの?」
二之宮さんと話をしていたら隣の席の大山さんが話に加わってきた。
「どうもこうも、私は鷺ノ宮達に脅されて尊厳を貶められていた様子の動画をバラ撒かれてしまったから周囲の目が怖いの。
それを神坂君が守ってくれると約束してくれていたからお願いをしたのよ」
「怖がっているようには見えないけど・・・」
「あら、大山さんだって内容くらいは知っているでしょ?
あなたはそんな事をされた動画がバラ撒かれて周囲の目が気にならないの?」
「それは気になるだろうし、たぶん学校には来れなくなると思うけど・・・」
「そうよ!そういう事だから、わたしのことも守ってね、冬樹!」
今度は美波も加わってきた。渦中のふたりが揃ったことでいよいよ教室中の注目を一点に集める状況になった。
「そ、そうよね。ごめんなさい、わたし用事を思い出したからちょっと席を外すね」
大山さんが逃げるように席から離れていった。できたら俺も一緒に何処かへ行きたい・・・
「ふたりとも、守るというのは良いんだけど、少なくとも夏休み前は学校へ来ない方が良かったんじゃないか?
なんだったら今からでも帰った方がいいだろう」
「それはそうなんだけど、学校へ来ないと冬樹に会えなくなるからさ」
「あら岸元さん、神坂君のお家を知らないの?
お姉さんは来たことがあるのに」
「誰のせいでこんな状況になったと思っているの。
・・・って、二之宮さんは冬樹の家を知っているの?」
「ええ。神坂君に招待されてお邪魔させてもらったこともあるわよ」
「ええ!?どういう事!冬樹!!」
「鷺ノ宮の件で話をするのに内容が内容だから、万が一にも他の誰かに聞かれない場所をと言うことで俺の家に来てもらっただけだよ」
「そんなのズルい!わたしだって冬樹の家に行きたい!」
「別に美波とはお前の家で話をしただろ?」
「そういう問題じゃない!
第一、お姉ちゃんは一緒に住みはじめたのに、わたしは家も知らないなんて薄情じゃない!」
「薄情ってなんだよ・・・」
「ちょっと待って、岸元さんのお姉さんは神坂君の家に住んでいるの?」
「そうよ!お姉ちゃんは今冬樹の家に住んでて、大学の近くのアパートだって解約するっていうんだから!」
美波の話を聞いてからか、二之宮さんの俺を見る目付きが一瞬鋭いものになった気がした
「なるほどね。ところで、神坂君。岸元さんのお姉さんの他にも一緒に住んでいる人がいるでしょう?」
「ああ、いるよ。美晴姉さんとふたりきりではまずいからね」
「そういうことにしてあるのね。わかったわ。
私もそういうことにしておいてあげる」
「そういうことって何だ?
そういう事もどういう事も何もないんだけど」
始業のベルが鳴り始めたため、まだ何か言いたげな様子の美波と二之宮さんが自分の席へ戻っていき、隣の大山さんも自席へ戻ってきた。
二之宮さんの追及に惚けてみたけど、これは高梨先生も住んでいると思っているだろうな・・・事実だけど。
このまま二之宮さんの疑念を放っておいて何が起こるかわからないし、美波も二之宮さんが俺の家に来たことがあるという事実で思うところがあるみたいだし、どうにかしないといけないなと思いながらSHRの塚田教諭の話を聞いていた。
今日を含め3日の登校で夏休みに入るというのに、学校は騒ぎになっている。
まず、鷺ノ宮たちは再度取り調べを受けることとなった。少年事件であり目下の被害者である二之宮さんが最初の取り調べで最低限しか供述してなかったのもあって警察の対応が甘かった様で、昨夜裏サイトにアップされたの件で追加で調査されるとの事らしい。また昨日の時点では自主退学を勧告となっていたが、学校側が関わっていた生徒全員を退学処分とすると発表した。鷺ノ宮を含む多くの生徒が所属していたサッカー部は廃部、それ以外も関係した生徒がいる部活は当面活動停止となった。
実態は掴みきれないが主犯は鷺ノ宮だろうし、一番重い処分を課せられるだろう。当然、俺からの民事訴訟も上乗せするし、これからもっと大変になるだろう。
正直なところ鷺ノ宮のお仲間はどうでも良いのだけど、彼らもこれから大変なことになると思うが自業自得としか言いようがない。
芳川さんは元々不登校になってしまっていたけど、仲村先輩も今日は登校していないらしい。どんな好奇の目で見られるか考えたら来たくない気持ちは察せられる。
むしろ、美波も休むかと思ったが登校しているのが不気味だ。
一番わからないのは二之宮さんだ。何かに堪えている様な美波とは違い、とても良いことがあったかの様に満面の笑みを浮かべている。そのせいで想像と違う方向でクラスから浮いている。渦中のふたりが登校しているからか、教室内は異様な雰囲気になっている。
「神坂君、こんな状況になってしまったし、約束通り一緒に居て守って欲しいのだけど、良いわよね?」
「あ、ああ。そういう約束だったな」
「え?どういうことなの?」
二之宮さんと話をしていたら隣の席の大山さんが話に加わってきた。
「どうもこうも、私は鷺ノ宮達に脅されて尊厳を貶められていた様子の動画をバラ撒かれてしまったから周囲の目が怖いの。
それを神坂君が守ってくれると約束してくれていたからお願いをしたのよ」
「怖がっているようには見えないけど・・・」
「あら、大山さんだって内容くらいは知っているでしょ?
あなたはそんな事をされた動画がバラ撒かれて周囲の目が気にならないの?」
「それは気になるだろうし、たぶん学校には来れなくなると思うけど・・・」
「そうよ!そういう事だから、わたしのことも守ってね、冬樹!」
今度は美波も加わってきた。渦中のふたりが揃ったことでいよいよ教室中の注目を一点に集める状況になった。
「そ、そうよね。ごめんなさい、わたし用事を思い出したからちょっと席を外すね」
大山さんが逃げるように席から離れていった。できたら俺も一緒に何処かへ行きたい・・・
「ふたりとも、守るというのは良いんだけど、少なくとも夏休み前は学校へ来ない方が良かったんじゃないか?
なんだったら今からでも帰った方がいいだろう」
「それはそうなんだけど、学校へ来ないと冬樹に会えなくなるからさ」
「あら岸元さん、神坂君のお家を知らないの?
お姉さんは来たことがあるのに」
「誰のせいでこんな状況になったと思っているの。
・・・って、二之宮さんは冬樹の家を知っているの?」
「ええ。神坂君に招待されてお邪魔させてもらったこともあるわよ」
「ええ!?どういう事!冬樹!!」
「鷺ノ宮の件で話をするのに内容が内容だから、万が一にも他の誰かに聞かれない場所をと言うことで俺の家に来てもらっただけだよ」
「そんなのズルい!わたしだって冬樹の家に行きたい!」
「別に美波とはお前の家で話をしただろ?」
「そういう問題じゃない!
第一、お姉ちゃんは一緒に住みはじめたのに、わたしは家も知らないなんて薄情じゃない!」
「薄情ってなんだよ・・・」
「ちょっと待って、岸元さんのお姉さんは神坂君の家に住んでいるの?」
「そうよ!お姉ちゃんは今冬樹の家に住んでて、大学の近くのアパートだって解約するっていうんだから!」
美波の話を聞いてからか、二之宮さんの俺を見る目付きが一瞬鋭いものになった気がした
「なるほどね。ところで、神坂君。岸元さんのお姉さんの他にも一緒に住んでいる人がいるでしょう?」
「ああ、いるよ。美晴姉さんとふたりきりではまずいからね」
「そういうことにしてあるのね。わかったわ。
私もそういうことにしておいてあげる」
「そういうことって何だ?
そういう事もどういう事も何もないんだけど」
始業のベルが鳴り始めたため、まだ何か言いたげな様子の美波と二之宮さんが自分の席へ戻っていき、隣の大山さんも自席へ戻ってきた。
二之宮さんの追及に惚けてみたけど、これは高梨先生も住んでいると思っているだろうな・・・事実だけど。
このまま二之宮さんの疑念を放っておいて何が起こるかわからないし、美波も二之宮さんが俺の家に来たことがあるという事実で思うところがあるみたいだし、どうにかしないといけないなと思いながらSHRの塚田教諭の話を聞いていた。
0
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる