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第30話

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神坂冬樹かみさかふゆき 視点◆

自宅マンションに買った物を置いてから店へ戻る車中で赤堀あかほりさんは下の名前『みゆき』と呼ぶように言ってきて、しばしの応酬の果てに『みゆきさん』とお呼びすることに落ち着き、みゆきさんは俺のことを冬樹と呼ぶようになった。

俺と打ち解けてくれたのは嬉しいが、今までみゆきさんくらい年上の女性に砕けた絡まれ方をすることがなかったのでタジタジになってしまっている。


店へ戻りトラック返却の手続きを終えてから、美晴みはる姉さんと高梨たかなし先生と合流した。俺たちが往復している間に思い付いたのか大きめの袋でそれぞれが両手に持っていたのでふたりから1袋ずつ受け取った。


「さっすが冬樹。何も言われなくてもちゃんと自分から荷物を受け取るのね」


「ちょっとみゆき!なんで神坂君の事、下の名前で呼んでるの?」


「ん?いや、往復する間ふたりで話してたら冬樹のこと気に入ったからさ、もっと仲良くなろうってことでお互い下の名前で呼ぶことにしたの」


「え?神坂君!みゆきのこと、みゆきって呼ぶの!?」


「あ、はい。さすがに呼び捨てにはできないですけどみゆきさんとお呼びしないと怒られるそうなので・・・」


「みゆき!あなた、数時間前に会ったばかりよね!?
 あなた一体、何を考えてるの!」


百合恵ゆりえ、落ち着きなさいな。別に他意はないわよ。冬樹が良いやつだってわかったから仲良くなりたいって思っただけだって。
 第一、冬樹に手を出したら美晴ちゃんに怒られちゃうじゃない」


「え!赤堀さん、いきなり何を言うんですか!
 冬樹くんは今はまだ大変な時なんですから変なことしないでください!」


「今じゃなかったら変なことして良いの?」


「ダメです!」


「あはは、美晴ちゃんかわいいわね」


「もう!赤堀さんっ!先生もちゃんと言ってください!」


「そうよ、みゆき。からかうのもいい加減にしなさい」



などと戯れながら、4人で帰宅した。


「ねぇ、冬樹。今日は私も泊まっていって良い?」


「構いませんけど、布団が足りませんよ」


「いいわ。百合恵と美晴ちゃんの布団並べて3人で寝るから」


「みゆき!また何言っているの?
 わたしの布団で良いでしょ。どうせ夏なんだし」


「先生。私は赤堀さんと一緒でも良いですよ」


「よし、決まりね! そうと決まったら、夕食はピザを取りましょう。
 私がごちそうするから、後でここの住所教えて。ちょうど良いアプリのクーポンがあるのよ。
 あと、お酒が欲しいわね。美晴ちゃんは飲めるの?」


「え?一応は飲めますけど・・・」


「じゃあ、飲もう!」


「ちょっと、みゆきさん。未成年者おれが居るってわかってますよね?」


「いいじゃん。いい男はそんな細かいこと気にしちゃダメよ」


「わかりました。で、買いに行くのはみゆきさんだけですか?
 俺も荷物持ちでついていきますけど、先生と美晴姉さんはいかがされますか?」


「わたしもついていきますね。みゆきが暴走したら止めなきゃだし」


「私もついてきます。ひとりで留守番しててもつまらないですし、久し振りにこの辺りを歩きたいですし」




という流れで、お酒を大量に買い込むみゆきさんのお陰で凄く筋トレが充実した。すぐ近くにスーパーがあって良かった。
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