貧乏神今昔

みえかた

貧乏神今昔

「見える、見えるワ。アンタの後ろに、水も滴るイイ男が！！」
「ひいいいい！」まあいい声。いい反応。私は我輩氏の反応を楽しんだ。ここは我輩氏らの葬儀屋。客に頼まれた霊視依頼できてついでに見てたところだ。というか、ここの従業員（？）はみんな魂と今の姿が違う。
「冗談よ。」とりあえず、静かにしてみる。
　まあいい男に見えることはある。最初は、自分の目が腐ったのかと思ったけど。
「ねえ。我輩氏ってなんであの、残念な見た目なの？」ここの連中は、好きな見た目を選べたりする。
「ああ。それはね、なんか女難？だったらしいよ。」簡潔な説明ありがと。
　聞いても、私の我輩氏への目は変わんないんだけどね。

「ふう。」やっとでかい仕事が一つ区切りがついた。
人間の魂は皆『隙間』を抱えている。所謂、欲、というものだ。それが移動して食欲、性欲なんかになる。魂の、欠落を、埋めるという衝動になる。だが何らかのはずみで、魂が、一定以上衝撃を受ければ『穴』になってしまう。『穴』を持つ人間は面倒だ。『穴』を埋めるため桁違いの物を必要とし、奪ったりする。『穴』を埋めるため手段を選ばない。しかし、一番まずいのは、『穴』を埋めるために人間を使うやつだ。人柱だ。大量の人間が死んでも、完全に感情が切れている。虫が飛ぶほども動かない。なぜならあるべきところに、自分が、ないからだ。
　今日も今日とて私は、バックを開き、『穴』持ちに、欲の一環として吸い込まれる手前の人間を、遠ざける。なぜか無欲な人間には、『穴』持ちは反応が鈍い。
　この前もこんなことあったわーとか思い苦笑する。私は、生前男だった。生まれ変わるなら峰不二子みたいな美女がいいとか言ったら、やたらriskyなとこに飛ばされた。容姿が悪くなる分には、楽なとこになる。逆に、オプション付けると、大変なとこに行く。
　私は『穴』人間を捕捉し、隔離する。こいつらは、治療できない。周りが人の何倍もの愛情を、早い段階で注げばあるいは、と思ったが、本来の底冷えしたものは、あったまらない。なるほどと思う。
　そして私はガシャンと自販機の甘ったるいコーヒーをすすった。