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山頂
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皇琥に横抱きされたまま、緩やかな山道をゆっくりと進んだ。山頂へ到着すると、平らな草原の上に降ろしてくれた。
「足の具合はどうだ?」
「さっきよりいいけど、まだ痛い……やっぱ神社へ戻った方が……」
怪我をしている足首は、さっき助けられた場所で、皇琥が応急処置として固定してくれていた。それでも患部はズキズキして痛い。
「すぐに医者に見せたほうがいいな……西辻へ位置情報を送って、ヘリコプターを寄越してもらう」
「ヘリ!?」
さすがはお金持ち。ヘリを呼ぶ、といった発想が出てくるのが羨ましい。山頂へ来たのは、暴漢から逃れるためだけじゃなかったらしいと、優里はいまごろになって気がついた。
皇琥が腕時計を操作していた。どうやら位置情報を腕時計から送っているらしい。
「ん? どうした?」
じっと見つめていたせいか、視線に気づいた皇琥が、首を傾げながら聞いてきた。
「あ、いや、スマホからじゃなくて、腕時計から連絡なんて、珍しいなぁって思って……」
「ああ、これか。腕時計から送ると緊急だと西辻には判別がつく。例えば、誰かにスマホを取り上げられても連絡手段があるということだ」
「…あぁ、なるほど……」
さながらスパイ映画でも観ている気分になってきた。それに住む世界が違うんだなとも。
そういえば、どうして皇琥はここへ来たのだろう。聖吏の計画通りと言ってしまえば、そうなんだが。急に気になってきた。
「なぁ、皇琥はどうしてここへ来てくれたんだ?」
「!?」
「うっ……」
(めちゃくちゃ怪訝な顔をしている。なにか変なことでも言ったかな……)
「上着のポケット……」
「え?」
「携帯電話が入ってる」
「あっ、そうなんだ」
左右のポケットを探ると、皇琥のスマートフォンは左のポケットに入っていた。スマホを取り出し皇琥へ渡す。画面を何度かスライドし、優里のほうへスマホをかざした。
「げっ……」
それはトレッターの画面で、優里の神子舞姿がアップされた写真や動画だった。たくさんのコメント、そして投稿がリシェアされている。
「ここへ来た理由だ」
「……」
どうやら聖吏の計画は成功したようだ。ただ皇琥を見ると怒っているのか、怖い顔をしている。
「優里は……過去から何も学ばんタイプらしいな」
「っ! なんだよ、それ!」
「……三年前のことを忘れたのか?」
「っ!……」
それは優里も心配したことでもある。だから警備を増やしたのに、またしても暴漢を呼び寄せることになってしまった。
「ごめん…こうなるつもりじゃなくて…」
「つもりじゃなくても、リスクが高いことは考えなかったのか?」
「だって……」
それにしても三年前? どうしてそのことを皇琥は知ってるんだ。あの時、まだ知り合ってもいないはず。
「でもどうして皇琥はーー」
ちょうどその時、上空からバババババ……という爆音が会話を遮った。見上げるとヘリコプターが真上を飛んでいる。
「ヘリ?」
「どうやら来たようだ」
山頂にヘリが到着すると、皇琥は優里を横抱きにし、ヘリへ乗り込んだ。そして二人を乗せたヘリは、病院へと飛び立った。
フライト中は、エンジンやプロペラ音が大きく会話はできない。それに皇琥はヘッドホンを付け、パイロットと会話をしていた。優里もヘッドホンを付けていたが、会話は流れてこなかった。
(そうだ、ヘリを降りたら、三年前のことや、皇琥に伝えたいことを言わなくちゃ……)
皇琥の肩にもたれかかっていた優里の瞼が重くなりかけた。それに優里の手をしっかりと握りしめてくれている。だから安心していつの間にか、優里は眠ってしまっていた。
「足の具合はどうだ?」
「さっきよりいいけど、まだ痛い……やっぱ神社へ戻った方が……」
怪我をしている足首は、さっき助けられた場所で、皇琥が応急処置として固定してくれていた。それでも患部はズキズキして痛い。
「すぐに医者に見せたほうがいいな……西辻へ位置情報を送って、ヘリコプターを寄越してもらう」
「ヘリ!?」
さすがはお金持ち。ヘリを呼ぶ、といった発想が出てくるのが羨ましい。山頂へ来たのは、暴漢から逃れるためだけじゃなかったらしいと、優里はいまごろになって気がついた。
皇琥が腕時計を操作していた。どうやら位置情報を腕時計から送っているらしい。
「ん? どうした?」
じっと見つめていたせいか、視線に気づいた皇琥が、首を傾げながら聞いてきた。
「あ、いや、スマホからじゃなくて、腕時計から連絡なんて、珍しいなぁって思って……」
「ああ、これか。腕時計から送ると緊急だと西辻には判別がつく。例えば、誰かにスマホを取り上げられても連絡手段があるということだ」
「…あぁ、なるほど……」
さながらスパイ映画でも観ている気分になってきた。それに住む世界が違うんだなとも。
そういえば、どうして皇琥はここへ来たのだろう。聖吏の計画通りと言ってしまえば、そうなんだが。急に気になってきた。
「なぁ、皇琥はどうしてここへ来てくれたんだ?」
「!?」
「うっ……」
(めちゃくちゃ怪訝な顔をしている。なにか変なことでも言ったかな……)
「上着のポケット……」
「え?」
「携帯電話が入ってる」
「あっ、そうなんだ」
左右のポケットを探ると、皇琥のスマートフォンは左のポケットに入っていた。スマホを取り出し皇琥へ渡す。画面を何度かスライドし、優里のほうへスマホをかざした。
「げっ……」
それはトレッターの画面で、優里の神子舞姿がアップされた写真や動画だった。たくさんのコメント、そして投稿がリシェアされている。
「ここへ来た理由だ」
「……」
どうやら聖吏の計画は成功したようだ。ただ皇琥を見ると怒っているのか、怖い顔をしている。
「優里は……過去から何も学ばんタイプらしいな」
「っ! なんだよ、それ!」
「……三年前のことを忘れたのか?」
「っ!……」
それは優里も心配したことでもある。だから警備を増やしたのに、またしても暴漢を呼び寄せることになってしまった。
「ごめん…こうなるつもりじゃなくて…」
「つもりじゃなくても、リスクが高いことは考えなかったのか?」
「だって……」
それにしても三年前? どうしてそのことを皇琥は知ってるんだ。あの時、まだ知り合ってもいないはず。
「でもどうして皇琥はーー」
ちょうどその時、上空からバババババ……という爆音が会話を遮った。見上げるとヘリコプターが真上を飛んでいる。
「ヘリ?」
「どうやら来たようだ」
山頂にヘリが到着すると、皇琥は優里を横抱きにし、ヘリへ乗り込んだ。そして二人を乗せたヘリは、病院へと飛び立った。
フライト中は、エンジンやプロペラ音が大きく会話はできない。それに皇琥はヘッドホンを付け、パイロットと会話をしていた。優里もヘッドホンを付けていたが、会話は流れてこなかった。
(そうだ、ヘリを降りたら、三年前のことや、皇琥に伝えたいことを言わなくちゃ……)
皇琥の肩にもたれかかっていた優里の瞼が重くなりかけた。それに優里の手をしっかりと握りしめてくれている。だから安心していつの間にか、優里は眠ってしまっていた。
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