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第四章 対座
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冷たい秋の風が窓の外で木々を揺らす中、千影は学長の厳しい視線を正面から受け止めていた。無駄にできない時間と緊張感が、部屋の空気を重くしている。
「千光君のこと――君からあまり語られることがなかった。しかし君はずっと背負っていたのだね」
学長の声は、まるで過去の傷にそっと触れるかのように優しかった。それでも、その言葉は鋭く千影の胸に突き刺さる。感情を押し殺し、冷静を装ったまま、うっすらと頷いた。
「もう……過去のことです」
短く答えたものの、その言葉には自分自身の感情がこもっていないことを千影は自覚していた。
「しかし、君の弟――千光君の存在は、今でも君にとって重い鎖となっているだろう。それが、君がここで生きる理由の一つじゃないかな?」
学長の言葉は、千影の表面に隠されていたものを見透かしているかのようだ。
千影は眉をひそめた。学長に対して敬意を抱いているが、この話題に踏み込むことは許したくなかった。過去は過去だと何度も自分に言い聞かせてきたが、千影にとって、千光の死は今も癒えない傷だった。
「この場所にいる理由は、プロファイラーとしての責務です。それ以上でもそれ以下でもありません」
千影の声は冷たく、感情のない響きだった。
「君は、自分を納得させようとしているようだね」
学長は目を細めた。
その言葉は、千影の心に重くのしかかる。学長の目は、まるで千影の内面を見透かすようで、その真剣さに心が揺れる。「本当にそうなのだろうか」と、自問自答が頭を巡る。常に冷静であるべきだと自分に言い聞かせてきたが、学長の言葉はその仮面を剥がそうとしているように感じられた。
「千影……君はただのプロファイラーじゃない。君の存在は、もっと多くの人々に影響を与えているんだ」
その言葉に、千影は一瞬だけ黙り込んだ。大学で教える理由は表向きには仕事だが、心の奥底では別の真意もまた、この場に縛りつけられている理由の一つであることを、学長に指摘された気がした。
「……学長、それで、お話とは何ですか?」
千影は強引に話題を変えようとするかのように、本題に戻る。
学長はその様子を見逃さなかったが、無理に追及することなく、次の話題へと移った。
「君にしか頼めない、特別な仕事があるんだ」
「仕事、ですか?」
千影は表情を変えないまま聞き返す。
「そうです。影山知紘君について、君が既に彼を知っているのは承知しています。過去に眠っていた記憶を、彼はいま断片的に思い出している……君が彼のそばにいるべきです」
影山と聞くたび、千影の心臓が僅かに高鳴る。学長はそれを気づいているかのように一瞬間を置き、千影の反応をうかがった。
「彼の見る過去――前世は……君にとっても、重要な意味を持つはずだ。だからこそ、君がその記憶を導き出す存在であってほしい」
千影は学長の言葉を静かに受け止めながら、心の奥底で何かが揺らいだ。影山との接触を増やすことで、自分自身が再び過去に縛られるのではないかという恐れが一瞬胸をよぎる。
「分かりました」
冷静な声で答えたが、その答えは自分自身への問いでもあった。
千影の心は波立っていた。
影山の名前が出た瞬間、千影の心の奥で何かがざわつくのを感じた。冷静さを保とうとする一方で、押し込めていた感情が微かに揺らぎ、心が一瞬、重くなる。自分にとって影山は、記憶の重圧を思い起こさせる存在なのだと、否応なく認識せざるを得なかった。
影山知紘。彼の名前はいまの千影にとって、単なる学生の一人という以上の意味を持っている。無邪気に笑う琥珀色の瞳、どこか影を秘めた表情。だが、千影がその存在に引き寄せられているのは、単なる外見や性格の問題ではない。自分自身と過去に向き合わなければならない宿命を影山に感じている。
弟の千光を思い出させる存在――。そんな考えが、心の片隅にいつも張り付いていた。影山と千光は異なる存在であると理解しているものの、どこかでその輪郭が重なり合う瞬間を感じた。千光を守れなかった後悔が、影山に対して異様なまでの保護欲を掻き立てる。だが、それはただの感情に過ぎない、と自分を戒める。
「影山に千光の記憶……」
千影は無意識に呟いた。影山に千光の記憶が蘇る。それがどういう意味を持つのか。単なる過去の断片が甦るだけなのか。影山自身が前世の記憶を受け入れ、どう向き合うのか。それは一つの試練であり、千影にとってもまた新たな試練となる。
千影の中で何かが動き出していた。先ほどまで受け入れがたい事実という名の道を歩む覚悟が、少しずつ芽生え始めているのを感じる。自分が影山に対して果たすべき役割――それはただ彼のそばにいるだけではない。彼を導き、彼の心の奥深くに触れる覚悟が必要だ。
だが、それは同時に、千影自身が過去と向き合う覚悟も求められる。
『自分の過去と向き合う覚悟がなければ、影山の記憶には共感できない……か』
学長の言葉が、千影の心に重く響く。これまで、千影は感情を封じ込め、プロファイラーとしての職務に専念することで、自分を守ってきた。だが、今度ばかりはそれでは通用しない。影山の覚醒が、千影にとっても決定的な変化をもたらすことを予感していた。
「分かりました」
再びそう答えたとき、千影の声には微かな決意が込められていた。影山のそばにいること、それは千影にとっても自身の過去に立ち向かう最後の機会かもしれない。千影はふと、デスクに置かれた古い写真が目に留まった。その写真は学長と千影の家族の記念撮影だった。写真の中の千光と共に笑顔を見せる自分が写っている。その笑顔は、もう長い間、千影の顔から消えていた。
過去と向き合う――それが千影にとってどれほど困難な道のりか、自分自身が一番理解していた。それでも、今は進むべき時が来たのだと感じていた。
「ただし、無理は禁物ですよ、千影。君自身の過去と向き合う覚悟がなければ、影山知紘君の記憶に共感することもできないでしょう」
その言葉は、千影にとって厳しい現実を突きつけるものであった。
千影はデスクに目を落とし、学長の言葉を受けて静かに心の中を探る。千光――彼の存在は、常に千影の心の奥底に重く沈んでいた。誰にも言えなかったが、弟の死を悔やむ気持ちは、今でも千影を締め付けていた。
弟を守れなかった自分への怒り。弟が生きていれば、違った未来があったのではないかという後悔。その思いが千影の中で絡み合い、いつしか無意識に避けてきた感情の一つとなっていた。
「……千光のことを考えない日は、一日たりともなかったんです」
千影は、ふと呟くように言葉を漏らした。
その瞬間、心に押し込めていた感情がふわりと浮かび上がってくる。学長の前で自分の弱さを見せるのは不本意だった。だが、今は何かに突き動かされるように、自分自身の言葉が止まらなかった。
「弟は、僕にとって……最も大切な存在でした。彼は、ただ純粋に生きていた。僕とは違って……何もかもが正直で、そして弱さを隠そうともしなかった。守るべき存在だったはずなのに……僕はそれを、最後までできなかった」
千影の胸の奥から、ゆっくりと滲み出るように言葉が溢れ出す。その声には、今まで抑え込んできた感情が込められていた。
「千光は、いつも僕を頼ってくれました。けれど、僕が彼を支えることができたのか、今でも自信がないんです。結局、僕がいながら……彼は――」
そこまで言いかけて、千影は言葉を止めた。喉に詰まる感情を必死に飲み込み、もう一度冷静さを取り戻そうとする。しかし、その無理な抑制が、余計に胸を締め付けた。
「千影君……」
学長は静かに千影の言葉を受け止めていた。その瞳は、心の痛みを理解しているかのようだった。
千影は再び言葉を押し殺し、ふっと息を吐き出した。感情をさらけ出すことが、これほど辛いものだとは思っていなかった。しかし、それと同時に、学長の言葉に触発されて、過去に向き合うべき時が来たのだという覚悟が静かに心の中に確実に芽生えていくのを感じた。
「千光君のこと――君からあまり語られることがなかった。しかし君はずっと背負っていたのだね」
学長の声は、まるで過去の傷にそっと触れるかのように優しかった。それでも、その言葉は鋭く千影の胸に突き刺さる。感情を押し殺し、冷静を装ったまま、うっすらと頷いた。
「もう……過去のことです」
短く答えたものの、その言葉には自分自身の感情がこもっていないことを千影は自覚していた。
「しかし、君の弟――千光君の存在は、今でも君にとって重い鎖となっているだろう。それが、君がここで生きる理由の一つじゃないかな?」
学長の言葉は、千影の表面に隠されていたものを見透かしているかのようだ。
千影は眉をひそめた。学長に対して敬意を抱いているが、この話題に踏み込むことは許したくなかった。過去は過去だと何度も自分に言い聞かせてきたが、千影にとって、千光の死は今も癒えない傷だった。
「この場所にいる理由は、プロファイラーとしての責務です。それ以上でもそれ以下でもありません」
千影の声は冷たく、感情のない響きだった。
「君は、自分を納得させようとしているようだね」
学長は目を細めた。
その言葉は、千影の心に重くのしかかる。学長の目は、まるで千影の内面を見透かすようで、その真剣さに心が揺れる。「本当にそうなのだろうか」と、自問自答が頭を巡る。常に冷静であるべきだと自分に言い聞かせてきたが、学長の言葉はその仮面を剥がそうとしているように感じられた。
「千影……君はただのプロファイラーじゃない。君の存在は、もっと多くの人々に影響を与えているんだ」
その言葉に、千影は一瞬だけ黙り込んだ。大学で教える理由は表向きには仕事だが、心の奥底では別の真意もまた、この場に縛りつけられている理由の一つであることを、学長に指摘された気がした。
「……学長、それで、お話とは何ですか?」
千影は強引に話題を変えようとするかのように、本題に戻る。
学長はその様子を見逃さなかったが、無理に追及することなく、次の話題へと移った。
「君にしか頼めない、特別な仕事があるんだ」
「仕事、ですか?」
千影は表情を変えないまま聞き返す。
「そうです。影山知紘君について、君が既に彼を知っているのは承知しています。過去に眠っていた記憶を、彼はいま断片的に思い出している……君が彼のそばにいるべきです」
影山と聞くたび、千影の心臓が僅かに高鳴る。学長はそれを気づいているかのように一瞬間を置き、千影の反応をうかがった。
「彼の見る過去――前世は……君にとっても、重要な意味を持つはずだ。だからこそ、君がその記憶を導き出す存在であってほしい」
千影は学長の言葉を静かに受け止めながら、心の奥底で何かが揺らいだ。影山との接触を増やすことで、自分自身が再び過去に縛られるのではないかという恐れが一瞬胸をよぎる。
「分かりました」
冷静な声で答えたが、その答えは自分自身への問いでもあった。
千影の心は波立っていた。
影山の名前が出た瞬間、千影の心の奥で何かがざわつくのを感じた。冷静さを保とうとする一方で、押し込めていた感情が微かに揺らぎ、心が一瞬、重くなる。自分にとって影山は、記憶の重圧を思い起こさせる存在なのだと、否応なく認識せざるを得なかった。
影山知紘。彼の名前はいまの千影にとって、単なる学生の一人という以上の意味を持っている。無邪気に笑う琥珀色の瞳、どこか影を秘めた表情。だが、千影がその存在に引き寄せられているのは、単なる外見や性格の問題ではない。自分自身と過去に向き合わなければならない宿命を影山に感じている。
弟の千光を思い出させる存在――。そんな考えが、心の片隅にいつも張り付いていた。影山と千光は異なる存在であると理解しているものの、どこかでその輪郭が重なり合う瞬間を感じた。千光を守れなかった後悔が、影山に対して異様なまでの保護欲を掻き立てる。だが、それはただの感情に過ぎない、と自分を戒める。
「影山に千光の記憶……」
千影は無意識に呟いた。影山に千光の記憶が蘇る。それがどういう意味を持つのか。単なる過去の断片が甦るだけなのか。影山自身が前世の記憶を受け入れ、どう向き合うのか。それは一つの試練であり、千影にとってもまた新たな試練となる。
千影の中で何かが動き出していた。先ほどまで受け入れがたい事実という名の道を歩む覚悟が、少しずつ芽生え始めているのを感じる。自分が影山に対して果たすべき役割――それはただ彼のそばにいるだけではない。彼を導き、彼の心の奥深くに触れる覚悟が必要だ。
だが、それは同時に、千影自身が過去と向き合う覚悟も求められる。
『自分の過去と向き合う覚悟がなければ、影山の記憶には共感できない……か』
学長の言葉が、千影の心に重く響く。これまで、千影は感情を封じ込め、プロファイラーとしての職務に専念することで、自分を守ってきた。だが、今度ばかりはそれでは通用しない。影山の覚醒が、千影にとっても決定的な変化をもたらすことを予感していた。
「分かりました」
再びそう答えたとき、千影の声には微かな決意が込められていた。影山のそばにいること、それは千影にとっても自身の過去に立ち向かう最後の機会かもしれない。千影はふと、デスクに置かれた古い写真が目に留まった。その写真は学長と千影の家族の記念撮影だった。写真の中の千光と共に笑顔を見せる自分が写っている。その笑顔は、もう長い間、千影の顔から消えていた。
過去と向き合う――それが千影にとってどれほど困難な道のりか、自分自身が一番理解していた。それでも、今は進むべき時が来たのだと感じていた。
「ただし、無理は禁物ですよ、千影。君自身の過去と向き合う覚悟がなければ、影山知紘君の記憶に共感することもできないでしょう」
その言葉は、千影にとって厳しい現実を突きつけるものであった。
千影はデスクに目を落とし、学長の言葉を受けて静かに心の中を探る。千光――彼の存在は、常に千影の心の奥底に重く沈んでいた。誰にも言えなかったが、弟の死を悔やむ気持ちは、今でも千影を締め付けていた。
弟を守れなかった自分への怒り。弟が生きていれば、違った未来があったのではないかという後悔。その思いが千影の中で絡み合い、いつしか無意識に避けてきた感情の一つとなっていた。
「……千光のことを考えない日は、一日たりともなかったんです」
千影は、ふと呟くように言葉を漏らした。
その瞬間、心に押し込めていた感情がふわりと浮かび上がってくる。学長の前で自分の弱さを見せるのは不本意だった。だが、今は何かに突き動かされるように、自分自身の言葉が止まらなかった。
「弟は、僕にとって……最も大切な存在でした。彼は、ただ純粋に生きていた。僕とは違って……何もかもが正直で、そして弱さを隠そうともしなかった。守るべき存在だったはずなのに……僕はそれを、最後までできなかった」
千影の胸の奥から、ゆっくりと滲み出るように言葉が溢れ出す。その声には、今まで抑え込んできた感情が込められていた。
「千光は、いつも僕を頼ってくれました。けれど、僕が彼を支えることができたのか、今でも自信がないんです。結局、僕がいながら……彼は――」
そこまで言いかけて、千影は言葉を止めた。喉に詰まる感情を必死に飲み込み、もう一度冷静さを取り戻そうとする。しかし、その無理な抑制が、余計に胸を締め付けた。
「千影君……」
学長は静かに千影の言葉を受け止めていた。その瞳は、心の痛みを理解しているかのようだった。
千影は再び言葉を押し殺し、ふっと息を吐き出した。感情をさらけ出すことが、これほど辛いものだとは思っていなかった。しかし、それと同時に、学長の言葉に触発されて、過去に向き合うべき時が来たのだという覚悟が静かに心の中に確実に芽生えていくのを感じた。
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