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本編

ざまぁなんて、おかしいですわ!! 2

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王宮 謁見室


本当は、とても恐ろしい……


謁見室の中には、玉座に国王陛下と王妃、第1王子殿下が座り、かたわらに宰相様、左右に近衛騎士が護衛として立っていた。


でも!っと、足に力を入れて踏ん張る。
ピリピリとした空気感の中、国王陛下の御座おわす前まで歩みを進め……
ドレスの裾を持ち、足を引き腰を下げ頭を下げた。

このまま、流されるままにリガート様の計画を実行に移させるわけにはいかないから……

「国王陛下に、申し上げたい事があります!リガート第2王子殿下の事です。

既にご存知の事かも知れませんが、お聞き下さいますようお願い申し上げます」

国王達が厳しい眼差しで見つめる中、お声がかかるまで姿勢を維持する。


国王は、宰相と顔を合わせ令嬢を見やる。
限界まで腰を下げ、服従の意を示す彼女は想像をしてた人物では無かった。
国王に対する礼儀をわきまえ、社交のマナーもしっかりしていた。

(ふむ、影の報告では、性格までは把握しきれておらなんだが……これは…)


「顔を上げよ」


国王陛下の、おごそかで静かな声が響く。
下げていた腰と顔を上げ、両の手を前で合わせ、もう一度頭を下げる。

「ありがとう存じます」
「ふむ、して、リガートについて話があるそうだが?」
「はい……ですが、まずは、此方の書類をお受け取り下さいませ」

そう言って差し出された書類を、宰相が受け取り、パラパラと軽く目を通し国王陛下に渡した。国王が書類に目を通し、王妃、第1王子に渡っていく。

第1王子殿下が読み終え顔を上げる頃、宰相様が口を開いた。

「ここに書かれてる内容は、確証があるのですか?」
「既に、証人と証拠は抑えてあります」
「おや、早いですね……」
「レナレイナ様に迷惑は、かけられませんので…」

「アリアシアよ、其方そなたの言い分は分かった。だが、其方そなたがレナレイナ嬢を庇う理由が分からぬ。何故なにゆえだ?」

わたくしが、レナレイナ様をかばう理由は……)

『他の令嬢からめられたくないのであれば、立ち居振る舞いには気を付けなさい。一瞬でも隙を見せれば、食われましてよ?』


学園で……
リガート殿下が離れた際に、クラスの令嬢達から嫌味や冷笑を受けた。言われても仕方ない事とはいえ辛くて、教室から逃げようかと悩んだ時レナレイナ様が、私を庇って下さった。
そして、レナレイナ様は、私に助言をして下さいました。

(とても、嬉しかったのです)

「返しきれぬ恩が、レナレイナ様にあるのです」

国王陛下の目を真っ直ぐに見つめ返す。

「……っ、そうか」

「陛下。誠に申し訳ありませんが、1つお願いしたいが御座います」 

「なんだ?申してみよ」

「レナレイナ様の婚約破棄ですが、受理されては如何でしょうか?」
「なに?」
「今回用意した書類にも書かれている事ですが…リガート殿下は、人としてやってはいけない事をしています。いずれ、知れ渡る事でしょう」

今回の婚約破棄をする上で、リガート殿下はならず者を雇い私を襲ったり、階段から突き落としたりしていた。
しかも、その場にレナレイナ様を呼び出し、あたかも犯人に仕立てあげようと画策かくさくした。冤罪を作り上げようとしたのだ。
勿論、冤罪の証拠と証人を探し出しましたが。

妃殿下が両手を顔に当て俯いた。
第1王子殿下が立ち上がり、妃殿下の傍に行き支える。
国王陛下も、宰相様も苦い顔をしてため息をついていた。

「……申し訳ありません、妃殿下。あのパーティーの時、いえ、それ以外の時でも、毅然きぜんとした態度で接していれば、こんな事にはならなかったかも知れません」

「……い、いいえ、あの子は、昔から惚れっぽい性格でしたから、貴方ではなくとも、こうなっていたでしょう。むしろ貴方には感謝しますよ。事前に分かり対処が出来るのですから」

目から大粒の涙を流しながらも、背筋を伸ばし接する態度は王妃の鑑だろう。



「陛下。レオナルド様は、レナレイナ様を慕っていると聞いております。新たに婚約してみては如何でしょうか」

……!!!

「誰から聞いたんですか!?」
「……ふふ、内緒…です」

先日、グレイル様が教えてくれたんですよね。顔には出ないけど、すっごく嬉しそうに話して下さいました。

「レオナルド、まことか?」
「…あ、いや、あの、はい」
「そうか、其方そなたは、レナレイナ嬢を慕っていたのか…」
「どおりで……、見合い写真にも、見向きしない訳ですわ」
「レオナルドとレナレイナ嬢の件は、此方で預かろう」

「卒業パーティの日、時間を稼ぎますので、レナレイナ様をお助け下さいませね」
「アリアシア嬢、すまなかったな。其方そなたには、居心地が悪かったであろう?」

その言葉の意味が、最初の時の刺すような視線の事だと直ぐに気が付いた。

「いえ、予想しておりましたので」 
「予想していても、辛いものは辛いですのよ」
「君は、意外としたたかだね。勿論、いい意味で、だよ。でも、私の恋い慕う相手を勝手に告げないで欲しかったな」
「それは…、申し訳ありません。レナレイナ様に幸せになって欲しかったので、ついですわ」

伝えたかった事は、全て伝えた。
宰相様のご子息の事も、騎士団長のご子息の事も伝えた。彼らは、まだ罪を侵してはいない。ただ、殿下の間違いを正すことが出来なかっただけ。
その内の御二方は
まったく、うちのバカ息子が申し訳ありません。私がキチンと言って聞かせ罰も与えますので御容赦を……』
『陛下、申し訳ありませんでした。私の息子がご迷惑をお掛けしました。かくなる上は、私も責任を取って……『いやいやいや、お前は取らんで良い。騎士団が混乱するだろ』』

と、騎士団長様は陛下に突っ込まれていた。
フラランド様に関しては、陛下から神官長様に伝えて下さるそうだ。

これで、ここでの用件は済んだ。
陛下方に退出の礼をし、扉に向かって歩き出す。もう既に、足はガクガクだが、震えない様に気を付けながら踏ん張って歩く。
扉の前に立っていた騎士に退出の合図を出す。
そして、謁見室を出る直前に

「アリアシア嬢よ、ぞ」
「……!!」

バッと振り返れば、ニコニコ顔の陛下と目が合った。王妃と第1王子殿下に目線を流せば、2人は驚き固まっていた。

(何故、知っているのですか!!陛下?!いや、グレイル様が話した?!?!)

勿論、私も固まっている、と言うか混乱している。騎士が声を掛けてくれるが、反応出来ないでいると、謁見室から陛下の笑い声が響く。

顔に熱が集まり、恥ずかしくなり、失礼にならないよう気を付けながら一礼し、足早にその場を離れた。






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