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本編

ざまぁなんて、おかしいですわ!!

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「レナレイナ・アグレシア、貴様との婚約だが、今日限りを持って破棄するものとする!」

「そして、アリアシア・レグナスを新たに婚約者と宣言する!」

会場が、わぁっと沸いた。





「お断りします」







だが、そこに『待った』の声がかかった。
声を発したのは、レナレイナ侯爵令嬢では無かった。
声を発したのは、アリアシア子爵令嬢で、リガート第2王子殿下が懸想けそうしている女性だった。

「……は?」

王子が、ポカンとしている。
当たり前だろう、婚約者にと望んでる女性から断られたのだから。

「え?」

「ですから、お断りします。と言っているのです」

まだ、状況が呑み込めないらしい。

(全く、馬鹿丸出しでしてよ?)












断罪が起きたひと月ほど前。


サロンに一人の女性が訪れた。

リガート第2王子殿下の婚約者レナレイナ様が、伯爵令嬢のマイナ様と同じ伯爵令嬢のカルディナ様、侯爵令嬢のセティーナ様と仲良くお茶をしていた。

その席に、静かに近寄るのは、リガート第2王子殿下と仲の良いアリアシア子爵令嬢で、
レナレイナ以外の令嬢は顔には出さないが嫌悪を感じていた。

……なんの用だろうと……

近くまで来て、頭を下げる。
彼女は、声をかけて来ない。
頭を下げたまま、相手が口を開くのを待っていた。

貴族の令嬢としては、正しい判断だが、あまり関わりたくなかった。
仕方なさそうに、レナレイナがアリアシアに声をかける。

「貴方は、アリアシア様でしたか?」

「はい、アリアシア・レグナスにございます」

「そう。それで、わたくし達に何か御用ですか?」

「はい、レナレイナ様達にご相談があるのです」

相談?

と、レナレイナが怪訝けげんとしたが、何時までも立たせておくのも可哀想だと思い席に座るよう促す。

ありがとうございます。と頭を下げ席に着いた彼女は重々しく口を開く。

「実はリガート第2王子殿下の事で、お話したい事があります。他に側近候補方の事も……」

その言葉を聞いて、驚き顔を見合わせる令嬢達。
レナレイナ達は、アリアシアが王子に接触して誘惑したと正直思っていた。
勿論、側近候補達にも。

でも、彼女の話を聞く限りだと……

『初めて、パーティに参加した時の事です。私は子爵令嬢ですが、養女です。パーティは本当に初めてで、言葉も立ち居振る舞いも全然ダメで恥ずかしくて壁際に立ってたのです。そしたら、殿下が声を掛けて下さったんです。嬉しかったのは事実ですが、私には他に好きな殿方がいますので…』

だそうだ。

「それからは何故か、ずっと傍に付いてくるようになりました。殿下がフラランド様やジュダイ様、イディス様を紹介して下さいましたが、正直雲の上の方達なので粗相そそうしないか毎日不安です。気付いて下さいませんが…

先程も申したように私には、お慕いしている男性がいます。殿下が離れて下さらないので、その方に誤解されないか心配です。それに、私に王妃など務まるはずがありません」

彼女は、はっきりと、王妃は務まらないと仰った。
当然ですわね、わたくしは幼い頃より王妃教育を施されておりましたが、彼女は平民から貴族になったばかり。

ちゃんと理解されてるわね。

なら、理解出来ていないのは……


「レナレイナ様が、10年の歳月をかけて王妃教育をしてきたのを、貴族になったばかりとはいえ、知っております。それなのに、殿下は『レナレイナが出来たんだ、お前なら楽勝だろう』と…私には、殿下のお心が分かりません…………」

「そして、遂に先日、殿下から聞いたのです。レナレイナ様に婚約破棄を告げる……と」

!!

なんですって?

「レナレイナ様に冤罪をなすり付け着実に計画を実行に移す準備を整えてます」

「最低ですわ!」
「何を考えてますの?!」

「止めたのですが、私の言葉を聞き入れては下さいませんでした。『お前は優しいな』とか『あんな奴にまで、心砕くことは無いんだぞ』とか言って、話を一切聞いてくれませんでした。申し訳ありません」

…………

「私は子爵令嬢です。しかも養女で力なんて、あって無いようなもの…何も……、出来なくて…申し訳ありません」

「泣かないで…、貴方の気持ちは分かりました。こうして、事前に分かっただけでも僥倖ぎょうこうなのだから」

レナレイナ様が、優しく微笑み、私の目元に溜まった涙を拭ってくれる。

「レナレイナ様…、リガート様は卒業パーティの日に婚約破棄を宣言なさるそうです……私も、出来る範囲で止めます、から……。陛下にも、キチンとご報告申し上げに行きます」

そう言って、アリアシアは立ち上がりもう一度頭を下げ謝罪した。

「良いのよ、貴方の気持ちは分かったから。でも、そうね、あなたの想い人は、どなたなのかしら?」

優しげな瞳で、微笑みで……、怒っても良いはずなのに、穏やかに語りかけてくれるレナレイナ様が尊くて、勝手に涙が出てしまった。
 

「……内緒ですよ?…………グレイル様です」

「まあ!確かにあの方は、想い人が居ると聞いたことがありましたが……貴方のことでしたの?」

「……(コク)」

真っ赤になって俯く彼女が、小さく頷く。

「卒業する迄はと、待って下さってるんです…」

凄く可愛らしく笑う彼女が、とても魅力的だった。
そして、一礼してサロンを出ていった。


「レナレイナ様……、流石に看過かんか出来ませんわ」

「私達の婚約者達にも困ったものですわね…」

「もし事実なら、私達も考えなければいけませんわね」

「ええ、そうですわね。折角色々話して下さったのですから、無下に出来ませんわ」

「アリアシア様が、キチンと理解できた方で良かったですわね」
「ええ、本当に。私達は誤解をしてしまいましたわね…後日お詫びをしなければ」
「「「ええ」」」



その数日後、王城にてアリアシアは針のむしろの中、国王と相対していた。
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