国を守護する聖獣は、聖女と呼ばれた少女より嫌われ者の悪女を望む

紫宛

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第5話 真龍神と獣神と魔神

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何故なにゆえ?!人間などを庇護するのじゃ!ソルレヴォネよ!』
『人間は弱い、弱いから他者を傷つける。だが同時に強くもある。優しい心も持ち合わせている…何度間違えようと、立ち上がり反省し次に活かす。見捨てる事は出来ぬ』
『我らと仲違いしてもか?』
『真龍神ファサリスよ、魔神グラムノートよ、我は人間につく…金龍神の名は捨て、獣神ソルレヴォネと名乗る』

金龍神は眩い光に包まれて、2匹の獣に姿を変えた。白い鱗が生えた鹿の様な姿と、黒い鱗が生えた鹿の様な姿をした2匹の獣だ。

『我はソルと名乗り』
『我はレヴォネと名乗る』

2匹の獣は、真龍神と魔神に別れを告げ人間の国に旅立って行った。

何故なにゆえじゃ、大馬鹿者め……謝ったとて許さぬぞ…』
『……我らを捨ててまで人間を取るなど愚かだぞ……ソルレヴォネ』

後に残されたのは……涙を大量に流す銀色の龍と、苦々しい顔をしながらも金龍神を心配する褐色の肌をした巨人だった。






この世界が生まれた時、3人の神様も同じように生まれた。

真龍神 ファサリス
銀色の鱗を持つ龍神。美と愛情を司る。

魔神 グラムノート
褐色の肌をした巨人。強さと快楽を司る。

金龍神 ソルレヴォネ
金色の鱗を持つ龍神。信と忠誠を司る。

3人の神様は、それぞれ落ち着く場所に神域を作った。地上に力を注ぎ、見守りながら、たまに3人でお茶をしながら談話し数千年……

地上は様々な動植物が生まれ、同時に魔獣も生まれ始めた。魔獣は地上に注がれた魔神の力と、動植物の負の感情が合わさると生まれる。

そして、最初の二足歩行をする生き物が生まれた。
動物の頭に人間の様な手と足、尻尾と現在の獣人の様な姿をした生物だ。

彼らは次第に交尾し数を増やし、そして……突然変異で両親の特性をひとつも持たず、顔も動物ではなく尻尾も持たない最初の人間が生まれた。
しかし、受け止められなかった両親により最初の人間は生まれた瞬間に殺された。

その後も、幾度と突然変異で親の特性を持たない人間が生まれたが、両親により殺されるか捨てられ続けたが…突然変異が起こり始めてから数十年、親の特性を持たない子供でも愛する親が出始める。

人間が生まれ始めてから数百年、数は獣人達より人間の方が多くなった。

地上が賑やかになり、3人の神様も嬉しそうに地上を眺めたり遊びに行ったりと過ごしていた。

だが次第に、人間は獣人を乱獲し奴隷にするようになり、神様の間でも問題視するようになった。

『またじゃ!あの人間めっ』
『人間の発する負の感情は強い、魔獣達も攻撃的な性格になってしまう……もはや、人間を滅ぼすしかあるまい?』
『それは、やり過ぎでは?人間達も全てが悪人ではない。優しい心は、獣も獣人も魔獣すら癒す』
『ならぬ!其方の守護する人間は、妾の愛する子達を奴隷では飽き足らず殺しまくっておるのだぞ?!』

人間の存在は、3人の神様の仲に亀裂を走らせた。

年月が経つほどに口論は激しくなり、神様達の仲は修復出来ないほど悪化していった。
そして……金龍神ソルレヴォネは、真龍神と魔神を敵に回しても人間の側に立ち護る事を選択した。

金龍神ソルレヴォネは自身の姿を、白麒麟、黒麒麟という聖獣に変え、名もソルとレヴォネと改名した。しかし、人の前に姿を現す時は金龍の姿を取りながらも獣神ソルレヴォネと名乗った。

後々、獣神ソルレヴォネはオレリーという人間に出会い、聖国カテドラーラの建国に力を貸した。更に……魔獣だったラヴァ、クヴェレ、ヴァン、聖獣ローシュを仲間に加え、聖国カテドラーラは発展を遂げていった。

オレリーが亡くなった後も、獣神ソルレヴォネと聖獣達は人々を守り導いた。

それから更に数百年の時が経ったが、真龍神ファサリスと魔神グラムノートとの間にあいた溝は……塞がることは無かった。

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