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第9話 祝福
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私がフルスターリに来てから数日……仕事はやってません。処刑前日まで牢に入れられていた為、栄養不足に体力不足、魔力も落ちていました。
回復すれば、落ちた魔力も戻るので全力で回復に勤しみました。でなければ、仕事も任せないと陛下と宰相様と側近の方に言われてしまって……次いでに私の世話をしてくれました、侍女の猫獣人のリリィ様にも心配されました……
…王城で過ごすようになり、知ったのですが……王様の言った通り、皆さん私にとても優しくして下さいました。
侍女のリリィさんを始め、王城の料理人……蜥蜴族のバルドさんは、私の好きな食べ物をわざわざ聞きに来て下さり、(要らないと言ったのに付けられた)護衛は……鳥人族のファルドさんで、気さくに話しかけてくれました。
お陰で今はとても元気になりました……が、未だ私は仕事をさせて貰ってません。正確に言えば、倉庫や書庫で調べ物をしたり、各国へ交渉の為の手紙を書いたりはさせて貰いましたが…
前に言っていた、各国に行ったり重鎮との話し合いに参加したりと言うのはありません。
やはり、犯罪者の私に仕事をさせるのは問題があるという事なのでしょう……
私はそう思っていました。
ですが、後で聞いた話だと……私の元婚約者レゴル様が城に来ていたこと、街に滞在してる事が原因だったそうです。私と引き合わせないために、別の仕事を頼んだり部屋から出さないようにしたんだそう。
「お陰で仕事が減りません」とナファール様が愚痴を零していました。
ラファール様達が隠していたので、私はレゴル様が城にいた事には気付きませんでした。
後で聞かされ、驚いたのを覚えています。
それから更に数日、私は徐々にナファール様の補佐としての仕事を覚えていきました。レゴル様の補佐として、仕事をしていたのが役に立ちました……本当に。
竜人国は閉鎖的な国でしたので、私達のカテドラーラ国との国交が最初でした。当然、私がこの国に訪れ交渉をしました。従者も連れずたった1人で来ていたので、ラファール様達には驚かれましたね。
なので、この国の事情をある程度知り、カテドラーラの事情も知る私が各国との架け橋となりました。
花の都ラナンキュラスや、水の都アクアティナータ、魔の国イブリオース…等ですね。
花の国花の都ラナンキュラスは
春夏秋冬、あらゆる花を育てる環境を持つとされる名高い国です。
水の国水の都アクアティナータは
花の国と隣接していて、湖の上に街があります。国の大半が、湿地帯と川や湖で有名な国ですね。
魔の国イブリオースは
魔神グラムノート様を讃える国です。主に良い魔獣が住んでいます。良い魔獣と言うのは、人を襲わない魔獣の事です。
私が使者だと知った各国は、何故か直ぐに受け入れ態勢を取って下さいました。ナファール様達が打診した時は、難色を示されたと聞いたのですが……
竜人国の文官や従者、侍女を大勢連れて……そもそも、人を沢山連れて各国に行くのは初めてだったので、変に緊張してしまいました。
各国の皆さんは、私がカテドラーラの使者として行ってた時からの知り合いでしたので、話はとてもスムーズに進みました。意見の交換や交渉には、牽制や利害が絡み上手くいかない事が大半にも関わらず。
……お互いの弱みを、知ってるからですね…きっと。
花の都、水の都を訪れ、最後に魔の国を訪れた後、私達は竜人国に帰ってきました。豪華な馬車から降りれば、門の前でラファール陛下が待ち構えていました。
「何事も無かったか?」
「ええ、皆さんが守ってくれていましたから」
「そうか」
ラファール陛下は私の無事を確かめると、安心したように詰めていた息を吐き出し先を歩き始めます。私は遅れないように、後ろをついて行きました。
「交渉は無事にまとまったか?」
「そうですね……ある程度はですね。難航しそうな問題もいくつかありましたけど、でも皆さん友好的に受け取ってくれましたよ」
ラファールは思った。
それは、相手がラフィーリアだから……なのではないかと。自分やナファールが交渉した時は、会ってくれもしなかったと。
「そうか、ありがとうな」
「……お役に立てたなら嬉しいです」
「……?」
言い淀んでしまったせいか、陛下が訝しげな視線を私に向けてきました。
……本心なのです、先程の言葉は…
ただ、仕事をして感謝されることが初めてだったから……少し戸惑ってしまっただけで……
……悪女と言われ、嫌われ続けた私でも、皆さんのお役に立てた事が……本当に嬉しかった。
だから私は、ラファール陛下に微笑み「本当に嬉しいのです」ともう一度伝えました。陛下は「そうか」と一言告げ、それ以上何も言って来ませんでした。
そして……突然ファサリス様が自分の祝福を私に与えると言い出しました。
謁見室でナファール様を含め、改めて陛下に今回の各国の視察及び交流の報告をしていた時にです。
『妾の祝福じゃぞ!嬉しかろう?』
それを聞いたソル様とレヴォネ様が、自分達の加護があるから必要無いと訴えて……
「受け取ればいい、加護も祝福もあって困るもんじゃない」
『そうだけどさぁ』
『そうだけど……』
ラファールの言葉に『僕達の愛し子なのに』と、2人は愚痴をこぼした。
加護と祝福は似ているようで、全く違うものです。
加護は、聖獣様や神様が護り力を与える事をいいます。
そして祝福は、神様がその力の一部を貸し与える事をいいます。
加護が聖獣様の力を全て使えるとすると、祝福は神様の力をほんの少しだけ貸してもらえるという事です。
「ファサリス様、ありがとうございます」
『うむ!ラフィーリアは、こやつらと違い素直でいい子じゃのぉ!妾の国の民では無い其方に、加護は与えられぬからの』
「真龍神の祝福は、身体強化だが……」
『うむ!ラフィーリアには、目と耳に祝福をあげるのじゃ♡』
『遠眼と』
『遠聞……?』
「おや、それはいいですね。嫌な奴から逃げるには最高の能力ですよ」
ナファール様の言う嫌な奴と言うのは……
「ふふ」
吹き出すように笑ったナファール様の目が、眼鏡の奥で鋭く光った様な気がしますが……気にしない事にします。ナファール様は、怒らせてはいけないタイプの人間だと思いますので…
「どうした?ラフィーリア」
「いえ、なんでもないですわ」
「そうか」
これで、ラフィーリアは聖獣と獣神の加護に加え真龍神の祝福まで与えられる事となった。
回復すれば、落ちた魔力も戻るので全力で回復に勤しみました。でなければ、仕事も任せないと陛下と宰相様と側近の方に言われてしまって……次いでに私の世話をしてくれました、侍女の猫獣人のリリィ様にも心配されました……
…王城で過ごすようになり、知ったのですが……王様の言った通り、皆さん私にとても優しくして下さいました。
侍女のリリィさんを始め、王城の料理人……蜥蜴族のバルドさんは、私の好きな食べ物をわざわざ聞きに来て下さり、(要らないと言ったのに付けられた)護衛は……鳥人族のファルドさんで、気さくに話しかけてくれました。
お陰で今はとても元気になりました……が、未だ私は仕事をさせて貰ってません。正確に言えば、倉庫や書庫で調べ物をしたり、各国へ交渉の為の手紙を書いたりはさせて貰いましたが…
前に言っていた、各国に行ったり重鎮との話し合いに参加したりと言うのはありません。
やはり、犯罪者の私に仕事をさせるのは問題があるという事なのでしょう……
私はそう思っていました。
ですが、後で聞いた話だと……私の元婚約者レゴル様が城に来ていたこと、街に滞在してる事が原因だったそうです。私と引き合わせないために、別の仕事を頼んだり部屋から出さないようにしたんだそう。
「お陰で仕事が減りません」とナファール様が愚痴を零していました。
ラファール様達が隠していたので、私はレゴル様が城にいた事には気付きませんでした。
後で聞かされ、驚いたのを覚えています。
それから更に数日、私は徐々にナファール様の補佐としての仕事を覚えていきました。レゴル様の補佐として、仕事をしていたのが役に立ちました……本当に。
竜人国は閉鎖的な国でしたので、私達のカテドラーラ国との国交が最初でした。当然、私がこの国に訪れ交渉をしました。従者も連れずたった1人で来ていたので、ラファール様達には驚かれましたね。
なので、この国の事情をある程度知り、カテドラーラの事情も知る私が各国との架け橋となりました。
花の都ラナンキュラスや、水の都アクアティナータ、魔の国イブリオース…等ですね。
花の国花の都ラナンキュラスは
春夏秋冬、あらゆる花を育てる環境を持つとされる名高い国です。
水の国水の都アクアティナータは
花の国と隣接していて、湖の上に街があります。国の大半が、湿地帯と川や湖で有名な国ですね。
魔の国イブリオースは
魔神グラムノート様を讃える国です。主に良い魔獣が住んでいます。良い魔獣と言うのは、人を襲わない魔獣の事です。
私が使者だと知った各国は、何故か直ぐに受け入れ態勢を取って下さいました。ナファール様達が打診した時は、難色を示されたと聞いたのですが……
竜人国の文官や従者、侍女を大勢連れて……そもそも、人を沢山連れて各国に行くのは初めてだったので、変に緊張してしまいました。
各国の皆さんは、私がカテドラーラの使者として行ってた時からの知り合いでしたので、話はとてもスムーズに進みました。意見の交換や交渉には、牽制や利害が絡み上手くいかない事が大半にも関わらず。
……お互いの弱みを、知ってるからですね…きっと。
花の都、水の都を訪れ、最後に魔の国を訪れた後、私達は竜人国に帰ってきました。豪華な馬車から降りれば、門の前でラファール陛下が待ち構えていました。
「何事も無かったか?」
「ええ、皆さんが守ってくれていましたから」
「そうか」
ラファール陛下は私の無事を確かめると、安心したように詰めていた息を吐き出し先を歩き始めます。私は遅れないように、後ろをついて行きました。
「交渉は無事にまとまったか?」
「そうですね……ある程度はですね。難航しそうな問題もいくつかありましたけど、でも皆さん友好的に受け取ってくれましたよ」
ラファールは思った。
それは、相手がラフィーリアだから……なのではないかと。自分やナファールが交渉した時は、会ってくれもしなかったと。
「そうか、ありがとうな」
「……お役に立てたなら嬉しいです」
「……?」
言い淀んでしまったせいか、陛下が訝しげな視線を私に向けてきました。
……本心なのです、先程の言葉は…
ただ、仕事をして感謝されることが初めてだったから……少し戸惑ってしまっただけで……
……悪女と言われ、嫌われ続けた私でも、皆さんのお役に立てた事が……本当に嬉しかった。
だから私は、ラファール陛下に微笑み「本当に嬉しいのです」ともう一度伝えました。陛下は「そうか」と一言告げ、それ以上何も言って来ませんでした。
そして……突然ファサリス様が自分の祝福を私に与えると言い出しました。
謁見室でナファール様を含め、改めて陛下に今回の各国の視察及び交流の報告をしていた時にです。
『妾の祝福じゃぞ!嬉しかろう?』
それを聞いたソル様とレヴォネ様が、自分達の加護があるから必要無いと訴えて……
「受け取ればいい、加護も祝福もあって困るもんじゃない」
『そうだけどさぁ』
『そうだけど……』
ラファールの言葉に『僕達の愛し子なのに』と、2人は愚痴をこぼした。
加護と祝福は似ているようで、全く違うものです。
加護は、聖獣様や神様が護り力を与える事をいいます。
そして祝福は、神様がその力の一部を貸し与える事をいいます。
加護が聖獣様の力を全て使えるとすると、祝福は神様の力をほんの少しだけ貸してもらえるという事です。
「ファサリス様、ありがとうございます」
『うむ!ラフィーリアは、こやつらと違い素直でいい子じゃのぉ!妾の国の民では無い其方に、加護は与えられぬからの』
「真龍神の祝福は、身体強化だが……」
『うむ!ラフィーリアには、目と耳に祝福をあげるのじゃ♡』
『遠眼と』
『遠聞……?』
「おや、それはいいですね。嫌な奴から逃げるには最高の能力ですよ」
ナファール様の言う嫌な奴と言うのは……
「ふふ」
吹き出すように笑ったナファール様の目が、眼鏡の奥で鋭く光った様な気がしますが……気にしない事にします。ナファール様は、怒らせてはいけないタイプの人間だと思いますので…
「どうした?ラフィーリア」
「いえ、なんでもないですわ」
「そうか」
これで、ラフィーリアは聖獣と獣神の加護に加え真龍神の祝福まで与えられる事となった。
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