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第8話 逃亡
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「あっははは、私は、聖女ぉ、聖女なのよぉ!皆私に跪きなさぁい!あはは……あは、は…あ"あ"あ"」
薄暗い闇の中……女は、何も無い黒い平原で蹲り奇声を上げていた。彼女の傍には何も無い、彼女に危害を加えるものも無い…本当に何も無い平原で、遠くを見つめ、叫び声を上げ続けている。
彼女は今、自分を焼く燃え盛る炎に、ただ為す術なく叫ぶだけ。
「なぜダメなのですかぁ?私ではぁ!美しさもぉ!体型もぉ!聖女に相応しいのはぁあ"あ"あ"?!」
彼女が何か発言する度に、炎は勢いを増していく。
燃え盛る炎の中、彼女は灰にならず熱さに悶えながらも聖女に相応しいのは自分だと主張を続けた。
美しく、理想的な体型をし人々を魅了する自分が、何故聖女に選ばれなかったのかと訴える。
「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"」
✾✾✾✾✾
『愚かじゃの……』
大鏡を覗いていたファサリスが小さく呟く。
聖女になるのに、外見的美しさも理想的な体型も……何の意味も無い。
必要なのは、
外見的美しさでは無い。
理想的な体型でも無い。
本当に必要なのは……
魔獣も獣人も人も、分け隔てなく接する優しき心。
外見的特徴で人を魅了するのではなく、優しき心で人々を癒し思いやりの心で人々を包み込む。
思いやりとは、優しさであり
思いやりとは、人の立場に立って考える心であり
思いやりとは、人を大事にする心である。
気が付けば、自然と人々が集まってくる……
そんな人間に、聖獣は心惹かれる。
それを、この娘は分かっていない。
『許すつもりは、ないのじゃろ?』
『……』
『あの娘には、隠しておくのかえ?』
『『……言えぬ』』
『辛い思いを、何年もしてきたのだから……』
『我らが、地上を離れた間に……』
ソルとレヴォネ、聖獣達はずっと地上にいる訳ではなかった。天上で神として、聖獣として仕事をしていた。気が付けば、ラフィーリアは人々に恨まれ処刑までされそうになっていたのだ。
『カテドラーラの方はどうじゃ?』
『……オレリーとリナリーが、率先し見張っている』
『王族が、早くも逃亡したらしい』
処刑の日からまだ数日……
けれど、獣神と聖獣を失った影響は直ぐに現れた。
天候が荒れ、作物の実りが悪くなり、ラフィーリアによって保たれていた各国との交流は、王太子レゴルに変わった事で悪化した。
『逃げ先は、ここかえ?』
『……あぁ』
『リアが、ここに居る事は内緒にしたい。王に話をつけておいてくれ』
『任せておけ、と言いたいところだが……ラファールならば、既にある程度の情報は掴んでおるであろう。心配はいるまい。まぁ、一応話はしておく』
『『すまんな、頼む』』
ソルとレヴォネ、ファサリスの間に風が通り抜け沈黙が訪れる。
『今更じゃ、馬鹿者め。……長かったのぉ……』
『『そうだな』』
『……』
ファサリスは小さく、本当に小さく『寂しかったのじゃ』と言った。ソルとレヴォネに聞こえたのかは分からないが……2人は小さく笑い『すまない』と言った。
✾✾✾✾✾
「ラフィーリア、どこだよっ!?助けてくれよ!」
「全く!お前が余計な事をするからだ!」
「父上だって、納得して協力してくれたじゃないか!」
「2人ともやめなさい!今は逃げることが大事よ!愚民共に殺されたくなければね!」
王族は、カテドラーラとフルスターリの国境付近まで来ていた。ラフィーリアの居場所は知られていないが、王族達は、ラフィーリアを聖獣達が助けたのなら、同じ聖獣を持つフルスターリにいる可能性を信じ向かっていた。
聖獣を失った影響が直ぐに現れ、国民の怒りを買い追われていたからだった。
薄暗い闇の中……女は、何も無い黒い平原で蹲り奇声を上げていた。彼女の傍には何も無い、彼女に危害を加えるものも無い…本当に何も無い平原で、遠くを見つめ、叫び声を上げ続けている。
彼女は今、自分を焼く燃え盛る炎に、ただ為す術なく叫ぶだけ。
「なぜダメなのですかぁ?私ではぁ!美しさもぉ!体型もぉ!聖女に相応しいのはぁあ"あ"あ"?!」
彼女が何か発言する度に、炎は勢いを増していく。
燃え盛る炎の中、彼女は灰にならず熱さに悶えながらも聖女に相応しいのは自分だと主張を続けた。
美しく、理想的な体型をし人々を魅了する自分が、何故聖女に選ばれなかったのかと訴える。
「あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"」
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『愚かじゃの……』
大鏡を覗いていたファサリスが小さく呟く。
聖女になるのに、外見的美しさも理想的な体型も……何の意味も無い。
必要なのは、
外見的美しさでは無い。
理想的な体型でも無い。
本当に必要なのは……
魔獣も獣人も人も、分け隔てなく接する優しき心。
外見的特徴で人を魅了するのではなく、優しき心で人々を癒し思いやりの心で人々を包み込む。
思いやりとは、優しさであり
思いやりとは、人の立場に立って考える心であり
思いやりとは、人を大事にする心である。
気が付けば、自然と人々が集まってくる……
そんな人間に、聖獣は心惹かれる。
それを、この娘は分かっていない。
『許すつもりは、ないのじゃろ?』
『……』
『あの娘には、隠しておくのかえ?』
『『……言えぬ』』
『辛い思いを、何年もしてきたのだから……』
『我らが、地上を離れた間に……』
ソルとレヴォネ、聖獣達はずっと地上にいる訳ではなかった。天上で神として、聖獣として仕事をしていた。気が付けば、ラフィーリアは人々に恨まれ処刑までされそうになっていたのだ。
『カテドラーラの方はどうじゃ?』
『……オレリーとリナリーが、率先し見張っている』
『王族が、早くも逃亡したらしい』
処刑の日からまだ数日……
けれど、獣神と聖獣を失った影響は直ぐに現れた。
天候が荒れ、作物の実りが悪くなり、ラフィーリアによって保たれていた各国との交流は、王太子レゴルに変わった事で悪化した。
『逃げ先は、ここかえ?』
『……あぁ』
『リアが、ここに居る事は内緒にしたい。王に話をつけておいてくれ』
『任せておけ、と言いたいところだが……ラファールならば、既にある程度の情報は掴んでおるであろう。心配はいるまい。まぁ、一応話はしておく』
『『すまんな、頼む』』
ソルとレヴォネ、ファサリスの間に風が通り抜け沈黙が訪れる。
『今更じゃ、馬鹿者め。……長かったのぉ……』
『『そうだな』』
『……』
ファサリスは小さく、本当に小さく『寂しかったのじゃ』と言った。ソルとレヴォネに聞こえたのかは分からないが……2人は小さく笑い『すまない』と言った。
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「ラフィーリア、どこだよっ!?助けてくれよ!」
「全く!お前が余計な事をするからだ!」
「父上だって、納得して協力してくれたじゃないか!」
「2人ともやめなさい!今は逃げることが大事よ!愚民共に殺されたくなければね!」
王族は、カテドラーラとフルスターリの国境付近まで来ていた。ラフィーリアの居場所は知られていないが、王族達は、ラフィーリアを聖獣達が助けたのなら、同じ聖獣を持つフルスターリにいる可能性を信じ向かっていた。
聖獣を失った影響が直ぐに現れ、国民の怒りを買い追われていたからだった。
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